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ダンジョン・ライフ 転生したらスケルトンだったので、相棒のスライムと一緒にダンジョンを守ります  作者: 春夏かなた


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第7話 ろくでなしどもの巣窟

「よぉ、よく来たな、お前ら」


俺たちを出迎えたのは、見るからに武骨な骸骨騎士だった。


分厚い鎧に身を包み、いかにも歴戦の強者といった風格を漂わせている。


……いいな、その鎧。


同じ骨ボディだっていうのに、なんで俺は骨丸出しなんだよ。


この世界、もうちょっと装備品の格差社会を是正してくれてもいいんじゃないか。


「どうも」


そんな内心をおくびにも出さず、俺はにこやかに手を差し出した。


カタカタと鳴る俺の骨の手が、骸骨騎士のごつい籠手と握手を交わす。


ここは、フランギル地方の端に位置する第百二十四番ダンジョン。


この地方が別名――冒険者の墓場と呼ばれている理由の一つが、とにかくダンジョンの数が多いことだ。


百二十四番。


番号だけ聞けば、いかにもやり込み要素っぽくて、ゲーマー心がくすぐられるかもしれない。


だが実際には、百個以上のダンジョンがひしめく地帯まで、わざわざ足を運ぶ物好きなどそうそういない。


いや、いないことはないか。


少なくとも、俺は来た。


そして俺の隣で、ぶよぶよと揺れているスライム――ヤマザキもまた、その数少ない物好きの一人だった。


「俺はキムラ。こいつはヤマザキだ」


「どうも」


ヤマザキが、身体の一部をにゅっと持ち上げる。


たぶん、手を上げたつもりなんだろう。


「エドワードだ。よろしくな」


エドワード。


……エドワード?


「へぇ、全然エドワードっぽくないっすねぇ」


おいバカ。


初対面でその距離感はおかしいだろ。


いや、俺も今ちょっと思ったけど。


でも口に出すな。そういうのは心の中にしまっておくのが大人のマナーだ。


「そういうお前も、ヤマザキって面じゃねぇよ」


そう言うなり、エドワードは豪快にカタカタと顎を鳴らして笑った。


……許してくれるんだ。


いい人だな。


いや、人じゃないか。


いいモンスターだな。


「面なんてねぇっすけどねぇ」


ヤマザキも嬉しそうに、ぷるぷると身体を震わせる。


なんだ、このほのぼのモンスター交流会は。


まあ、よかったな。


お前ら、意外と気が合いそうで。


「ところで、お前ら。なにやらかして、ここに来たんだ?」


エドワードが、遠慮の欠片もなくズケズケと聞いてきた。


……あんたもなかなか馴れ馴れしいな。


そりゃヤマザキと気が合うわけだ。


「こいつが、人間どもの味方ばっかりするから、前のとこを追い出されたんすよ」


「何言ってんだ、お前」


いや、確かに。


アルバリクの爺さんに言われて、そういう動きはしていた。


していたけどさ。


でも、それをここで言うか?


「お前、事情わかってんだろ」


俺はエドワードに聞こえないよう、ヤマザキにだけ小声で詰め寄った。


「お前のやり方、上にはバレバレだったんだよ」


返ってきたのは、呆れたような声だった。


「……そりゃ、ちょっとわざとらしかったかもしれないけどさ」


俺だって一生懸命やってたんだぞ。


バレないように。


こっちはこっちで、骨身を削る思いだったんだ。


いや、もう骨しかないんだけど。


「もっと上手くやれ、バカ」


「バカは余計だ、バカ」


「そいつは確かに、ろくでもねぇな」


再び、エドワードがカタカタと顎を鳴らした。


人間の味方をするモンスター。


そりゃ、モンスター側からすれば、ろくでもない存在だろう。


肩身が狭いどころか、骨身に染みる評価である。


「だけどな」


エドワードが、ニヤリと笑った。


……さすが、長年骨をやっているだけある。


表情筋なんて一つもないくせに、顎の動かし方ひとつで笑っているように見せてくる。


今度、教えてもらおう。


「ここは、ろくでもねぇ連中ばかりだからな。安心しな」


「……えっ?」


俺は思わず、怪訝そうに顔をしかめた。


「人間に味方する奴が多いってことか?」


「そうじゃねぇよ」


エドワードは、首の骨をカタカタ鳴らしながら横に振った。


「魔王様のやり方が気に入らねぇ連中が、ここに集まってるだけさ」


「……なるほど」


そういう設定か。


このエリアのモンスターは、とにかく強かった。


下手をすれば、魔王より強いんじゃないかと思わせるような奴らが、平然と出てくる。


当時ゲームをやっていた俺も、何度コントローラーを握りしめたことか。


つまり、魔王の意に沿わない連中。


けれど、強すぎて処分もできず、手に余った結果、この地に追放された――というわけだ。


……メモリーが余ったから、おまけで強敵を詰め込みました。


そういう雑な理由では、どうやらなさそうである。


「あんたも、そうなのかい?」


「さあな」


エドワードは鼻で笑った。


いや、絶対そうだろ、こいつ。


その笑い方で違いますは無理がある。


「ついてこいよ。ボスに会わせてやる」


そう言って、エドワードはくるりと踵を返した。


鎧の隙間で骨を鳴らしながら歩き出すその背中を、俺とヤマザキは顔を見合わせ――


いや、ヤマザキに顔はないんだけど。


とにかく、俺たちはエドワードの後に続いた。












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