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豪華な朝食と突然の再会



目の前には、朝から豪華すぎる朝食が並んでいる。


数種類のパンに、いくつものサラダ。

スープは二種類、ソーセージも三種類。


生ハムに、デザートのプリン、ゼリー、杏仁豆腐。


……どう考えても、一度で食べきれる量ではない。


飲み物も、紅茶にオレンジジュース、ミックスジュース、牛乳、コーヒーと種類が豊富だ。

なぜこんなにあるのだろう。


私とローレル殿下、二人分の朝食のはずなのに。


そして、私の向かいには麗しいローレル殿下。

しかも、どこか上機嫌そうだ。


昨夜見えた目の下の隈も、少し薄らいでいるように見える。

そのことに、私は少しだけ安堵した。


今日は天気も良く、涼しいとのことで、バルコニーにテーブルが用意されている。


見晴らしも最高だ。

朝からこんな贅沢をして、罰が当たらないだろうかと心配になる。


生まれてこの方、ここまで豪華な朝食(ロケーション込み)は経験したことがない。


昨日からずっと、現実ではないような不思議な感覚が続いている。


「メリッサ嬢の好みはある程度把握しているつもりだけど、やっぱり直接知っていきたいからね」


朗らかにローレル殿下が言う。


「これから長く一緒に過ごすのだし、とりあえず色々揃えてみたんだ」


「お気遣いありがとうございます」


私は笑顔を浮かべるだけで精一杯だった。

今、好みを把握していると聞こえた気がした。


どうしてローレル殿下はそんなことをご存知なのだろうか?

とても不思議である。


それにしても、王宮の朝食。

どれも美味しそうだ。

……いや、王宮の料理なのだから、美味しくないはずがない。


見た目も香りも、すでに完成されている。

昨夜、夕食を食べ損ねてしまったことが悔やまれる。


王宮のディナーを逃すなんて、なんてもったいないことをしてしまったのだろう。

寝ぼけながらでも食べたかった……。


そして、今着ているドレス。


上質な生地で仕立てられているのに、コルセットもなく、ゆったりと着られるデイドレスだ。

スタイルもよく見える。

サイズもぴったりで驚いてしまった。


形は、バウム領で着ていたものとよく似ている。

色も柄も、どこまでも私の好みに近い。


……偶然だろうか?


王族は常に華やかなドレスを着るものだと思っていたのに。


「メリッサ嬢は、まず王宮での生活に慣れるのが一番だからね」


ローレル殿下は穏やかに言った。


「王太子宮殿から出ない時は、無理に気を張らなくていい。ずっと気を張っていては、心が疲れてしまうからね」


「あ、ありがとうございます」


私は思わず視線を落とした。

そして、意を決して顔を上げる。


ローレル殿下は、そんな私を見て少し驚いたように瞬きをした。

私が何を言うのか、待っているようだった。


「この場合……私も殿下の好みを知ることは、重要ではないでしょうか」


こうなった以上、私にできることはしなくてはいけない。

ローレル殿下にばかり負担をかけるのは、よくない。


たとえ私にできることが少なくても、何もしないよりは良いはずだ。

私の言葉を聞いて、ローレル殿下は目を細める。


怒っているわけではなさそうで安堵する。


「私のことまで気にかけてくれてありがとう」


穏やかなローレル殿下の声。

とても落ち着くと感じる。


「でも一番大事なのは、メリッサ嬢が無理をしないこと。それが最優先だ」


「……そう、ですか」


少しだけ拍子抜けする。

ローレル殿下だって、多少は生活が変わるはずなのに。


私はサラダの中のアスパラを一口食べた。

――美味しい。


このドレッシング、すごく美味しい。

いつも食べているアスパラの良さを、ここまで引き出すなんて。


……と、そこで気づく。

このアスパラ。


私が魔法で改良した、緑の薔薇の茎部分だ。間違いない。


形も、普通のアスパラより少し歪だし。

なんでバウム領の緑の薔薇が王宮にあるのだろうか?

思わず首を傾げてしまう。


「殿下、これ……」


顔を上げて尋ねる。


「うん。バウム領の緑の薔薇を取り寄せてみたんだ」


ローレル殿下は嬉しそうに頷いた。


「普通のアスパラより栄養価も高いし、旨味もある。メリッサ嬢は本当に素晴らしいものを作ったね」


満面の笑み。


私は思わず頬を押さえた。

顔が熱い。


そこまで考えて作ったわけではないけど、褒められるのはやっぱり嬉しい。


「赤い薔薇のジャムも評判がいいよ。城のパティシエたちが、色々試しているみたいだ」


……それは、良いことなのだろうか。

あの赤い薔薇、香りは薔薇なのになぜかイチゴ味になるのだ。


きっとパティシエの方たち、混乱しているよね。

申し訳ない。


自分で作っておいてなんなんだけど、どうしてイチゴ味になってしまったのか自分でも分からない。

長兄のレーモンお兄様と修整を試みたけど、できなかったんだよね。


……確かにイチゴが食べたいなーなんて思いながら作ったけど。

バウム領では、なかなかイチゴを食べることなんて出来ないから。

やっぱり、私が悪いのかな?


「朝と夜は、できるだけ一緒に食事をしよう」


ローレル殿下は自然に言った。


忙しい中でも、私との時間を作ってくれるつもりなのだろう。

優しい人だと思う。


「あ、そうだ。忘れていた」


朝食を終え、ローレル殿下が執務室へ向かおうとしたところで、ふと思い出したように振り返った。

その顔には、少しいたずらっぽい笑み。


「?」


私は首を傾げる。


「ローレル殿下、アンジェリカ・パトーキをお連れしました」


今朝、ドレスを着るのを手伝ってくれた侍女の声だった。


「え?」


思わず声が出る。

まさかここでその名前を聞くとは思わなかった。


「入れ」


ローレル殿下が許可を出す。

扉が開き、年配の侍女に続いて、侍女服姿のアンジェリカが入ってきた。


私の顔を見て、目を見開く。

きっと、私も同じ顔をしている。


「アンジェリカ様?」


思わず名前を呼んでしまう。


アンジェリカもまさか王宮、しかも王太子宮殿にいるとは思わなかっただろう。

目を見開いている。


「……メリッサ様?」


アンジェリカは、呆然とした表情で私を見つめていた。


私の魔法学園時代から一番仲のよいアンジェリカ・パトーキ侯爵令嬢がそこにはいた。


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