16話 神装【天の詔琴】
祝☆1周年☆
「……神装【天の詔琴】」
歴史を感じる趣を残しつつも汚れのない和を感じる楽器……神器が手に収まっていた。
「わぁ……綺麗……」
少年がその神器に感嘆の声を漏らす。
「よし、弾くぞ」
気合を入れて弦を弾くと、神装が神々しい光を放ちながら音色を奏でる。
本来ならば自身は音楽など何もやった覚えがなく、弾く間際まで成功するのか疑問であった。
しかし、神装保持者としての能力が神装である【天の詔琴】の使用を可能としている。
そして弾き始めて数秒が立つ頃にまた【天の詔琴】が輝き出す。
その輝きは徐々に横たわる女性の元へ行き、更にその光は彼女の体を全て飲み込むと一層その輝きを増すと同時に光は弾け飛ぶ。
顔を覗き込むと、そこには先程までの辛そうな表情は消え去っており、安らかに眠っている女性の顔が見えるのみであった。
(念のために確認しておくか……鑑定)
名前:コレッタ
職業:聖職者
Lv:21
種族:人間
状態異常:なし
―スキル―
光魔法Lv3
戦棍術Lv2
―称号―
鉄拳制裁【対象を導く時のみ発動;対象へのダメージ量増加(中)】
何やら不穏な称号を発見してしまったがそれでも己は信じると固く何かを誓う。
「おい、コレッタさんの治療終わったぞ。もう大丈夫だ」
「本当!?じゃあ皆を呼んでもいい?」
「構わんぞ」
そう言って神装【天の詔琴】に感謝の念を送りスキルの発動を止める。
「みんなー!お姉ちゃん治ったって!顔色も良くなってるよ!」
少年がそう言うと入り口からぞろぞろと少年少女たちが入ってくる。
「ほ、ほんとだ!おねーちゃん!」
「あねき……うっぐすっ……」
普通に喜ぶやつもいれば、感極まって泣き出す子もいる。
この光景を見ながらほっこりとしていると裾が引っ張られる感覚がしたのでそちらを見ると、盗人及び監視少年と俺を信用出来ないと堂々と言い張った強気な少年の二人が目の前に立っていた。
「「ありがとう」」
そう言って二人はグループの元に戻っていった。
「……良いって事よ」
俺は静かに彼らにそう言葉を残し帰宅するのであった。
***
「なにか……良い事でも、ありましたか?」
「んー?いや~ちょっとな」
宿屋でメルティと飯を食っているとそう聞かれた。
なので適当に返す。
あの出来事は俺と彼らだけの秘密ということにしておくつもりなのだ。
「そう、ですか……」
何か言いたげな表情をしているがこればっかりは俺も譲れない。
「あぁ……すまんな」
「いえ、クリスさんが気にすることは……ありません」
せっかく彼女から話しかけてきてくれたのに申し訳ないなと思いつつも、昨日今日の思い出を思い出しながらどこか楽しげに食事を進める自分であった。
そして夜は更けていく。
***
「なんでテメーがココに居るんだよ」
翌朝のことである。
まだ日の出が見えてきた頃にメルティと同時に起きた俺は二人で散歩にでも出ようと彼女を誘って外出しようとしていた。
そしていざ行くぞと宿屋の扉を開けると……。
盗人及び監視少年がそこにいたのである。
「えと、ココに行くのを見ていてそれで――」
「いやいやいや、それストーカーじゃん」
「あの、クリスさん……彼は一体?」
「あ~のだな~……はぁ、しゃあねぇか……」
そして俺は昨日一昨日で起きた一連の出来事をメルティに聞かせるのであった。
***
一昨日頃からであろうか。
リツ様がいつもより楽しく食事を取っている。
ここ二日の間、私は資金稼ぎのために傭兵組合に訪れ、手頃な依頼を受けていた。
それを完遂することでこれからの資金への足しにしていたのである。
しかし、そのたった二日間で彼は色々な出来事に見舞われていたようなのです。
スラム街はルールが異なるからあまり行かないようにと伝えましたが、案の定行ってしまう所がある意味リツ様の見ど……欠点……なのかもしれません。
彼が出会った少年は最初見たときに女の子かと勘違いしてしまいました。
その子が女の子じゃなくて良かったとホッとしたのですが……だけど何故でしょうか……私の中の何かが言うのです。
この少年には気をつけろと。油断してはいけないと。
***
最初、僕がお兄さんと出会ったのは、スラム街の道中。
その時の僕たちは、今まで面倒を見てきてくれた母親代わりのお姉ちゃんが、重い病気に罹っていた事で、余裕がない状態でいた。
病気を治すためには薬が必要で……そのためのお金が必要で。
だから、スラム街を歩いているお兄さんを見つけた時はラッキーだと思った。
このスラム街ではお金を取られようが暴行されようが全ては自己責任……弱肉強食の世界となっている。
こんな場所であんな無防備に外を歩いていれば、このような場所に初めて足を運んだというのが丸分かりだ。
相手が何も知らないなら子供の僕ならきっと上手いことあのお兄さんからお金を取ることができると、そう思っていた。
しかし、実際は違った。
いや、相手がこの街を理解できていなかったのは確かだったが、どこからかすぐに僕を察知して迫ってくる。
結局僕は捕まってしまう。
仲間が集まるがあのお兄さんの身のこなしからただの人ではないと感じ取っていた僕はもう駄目だと思った。
でも、そのお兄さんは僕が取っていた銀貨一枚を僕に渡すと解りきっているこのスラム街への忠告を残して帰っていった。
***
次の日、お姉ちゃんの病状が悪化した。
僕は急いで薬を貰いに走る。
その時に急いでいたあまりショートカットを使ったのが間違いだった。
昨日の様子を見ていたのだろうスラムの住人であろう巨漢が目の前に迫ってくる。
「おう、ガキだからって昨日はいいもん貰ってんじゃねぇかよ、なぁ?」
「な、何も貰ってません……」
「嘘つくんじゃねぇぞこのガキッ!」
腕を捕まれ逃げられないようにした後、ポケットに手を入れられ銀貨を取られてしまう。
「チッ……銀貨一枚ぽっちかよ、まぁこれだけありゃあ酒を一週間はたらふく飲めるわな!」
あの銀貨を取られてしまうと本当に困る。
お姉ちゃんの命が危なかった事もあり、大声が出る。
「お願いします!何でもしますからそのお金を返してください!」
でもこんな非力な僕ではどうすることもできなかった。
同仕様もなくなり絶望しかけていたその時だ。
「おいおっさん。悪いけどその少年から離れてくれないか?」
あのお兄さんがやってきたのは。
お兄さんはあっという間に巨漢を倒してしまって、お姉ちゃんを助けると言って僕とボロボロになっている教会まで来る。
その後はすごかった。
商人の間で有名なアイテムボックスから不思議なアイテムを取り出し、そのアイテムを使用するとお姉ちゃんの顔色は以前のように健康的な肌色になった。
お兄さんにありがとうと言ったのちに皆と一緒にお姉ちゃんの看病をする。
お姉ちゃんが無事で、本当に良かったそう思わずにはいられない。
***
その翌日。
「このド阿呆ども!」
ゴツンという大きな拳骨音とともに僕たちは怒鳴られる。
「ありがとうの一言だけで済む話じゃないよ!」
お姉ちゃんが元気になったのは良かったけどここまで元気にしなくても良かったと思ってしまう僕達がそこにいた。
「とりあえずアルトとベルはその男の人のところまで行ってもっときちんとお礼してきな」
「ねーちゃんが行けばいいじゃねーかよ」
ベルがそう言うがそれはお姉ちゃんに取っては火種にしかならない。
「な、なんもねぇって!わかったよ!行けばいいんだろ行けば!」
「じゃあこれを持っていきな。私もまだ本調子じゃないからこれで済ませるしかないからね」
「どっからどー見ても本調子じゃんかよ……」
きっとベルは馬鹿なんだと思う。
ゴツン!
「痛ってーーーーーーーー!!!」
そうして僕たちは再びお兄さんに会うために一般街に足を運ぶのであった。
1周年です!
本当はとあるシーンまで一気に駆け巡りたかったんですが、この話書くのに思いの外手こずってしまって……
とあるシーンというのが神装を題材にするとなった時からずっと書きたかったシーンなんですよね。




