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恋する人の眼差し

何度も押し引きを繰り返した結果、俺は半ば流される形で了承してしまった。


まず妹にメッセージを送った。本当は「今日はやめときなよ」と止めてくれることを少し期待していたのだが。


返ってきたのは、ただの「OK」のスタンプだった。


【くそ……。今日は妹が作ってくれるはずだった豚カツを楽しみにしてたのに】


道中、俺は気を利かせて二人の後ろを歩いた。


目の前で二人が仲睦まじく会話できるようにするためだ。


……しかし、残念ながら。


事態は俺の予想通りには進まなかった。


韓江は何度も振り返り、俺に話しかけてくる。


そしてもう一人――宋玥綺もまた、同じように振り返りながら、まるで天照の炎でも宿しているかのような怒りの視線を俺へ向けていた。


【つまり……「全部お前のせいだからな」ってことか】


……いや、そもそも先に話しかけてきたのはお前だろ。


俺は突き刺さる視線に耐えながら、火に油を注ぐような雑談を曖昧に続けるしかなかった。


そして。


心身ともに疲れ果てた俺は、光のない目で目の前の道を眺めながら、十数分間歩き続けた。


————————————————————————


「着いた」


韓江が言った。


「入って。今日はたぶん家に誰もいないから」


「「うん」」


俺と宋玥綺は同時に返事をした。


家に入ると、俺は震える足で一歩ずつ歩き、独特な模様の入ったソファへ向かった。


一方の宋玥綺は、まるで自分の家かのように落ち着いた様子で水を飲んでいる。


韓江は冷蔵庫からありふれた野菜や肉を取り出し、一人で夕食を作り始めた。


まな板からは、規則正しい包丁の音が響いている。


本来なら宋玥綺も手伝うつもりだったらしい。


しかし韓江に「理由は言えない理由」で断られていた。


ちなみに俺はというと、料理経験が皆無だったため、ずっとソファに座っていた。


「ねえ」


宋玥綺が不満そうに俺を呼ぶ。


「何?」


「いや……ただ、少しくらい話さない?」


「はぁ……でも残念ながら、俺はお前と話したくない」


そう答えて、俺は再びスマホをいじる。


「ふふっ」


宋玥綺は小さく笑った。


「相変わらずで、なんか安心した」


「どういう意味だ?」


俺は首を傾げる。


「それって褒めてるのか?」


「まあ、そんな感じかな」


彼女は少し考えてから続けた。


「少なくとも、隣にいる人が知らない誰かじゃなくて、全部分かってる人だっていうのは……安心するから」


「まるで自分が人見知りみたいな言い方だな」


俺がそう言うと。


「……ん?」


「何だよ」


「い、いや……ただ、私って実はそこまで社交的じゃないんだよね」


「でも少なくとも、お前には彼氏がいるだろ」


俺は言った。


「世の中には恋人すらいない人もいるんだから」


「それはそうだけど」


宋玥綺は優しく笑った。


「でも、小江が隣にいてくれるだけで、孤独とか寂しさって一瞬で消えるんだよね」


「……気持ち悪いくらい甘いな」


「それだけ私たちが仲良しってことだよ」


「……」


————————————————————————


「おーい、お前ら。ご飯できたぞ」


「来た!」


宋玥綺は嬉しそうに駆け寄った。


俺はというと、二人の斜め向かいの席にゆっくり座った。


料理はラーメンだった。


見た目はかなり良い。


味については……まあ、普通だった。


でも、韓江がかなり頑張って作ったことだけは伝わってきた。


宋玥綺は何度か、自分の手で韓江に麺を食べさせようとしていた。


……そのたびに油を服へ落としていたが。


食事を終えた後。


幸いにも、熱愛中のカップルが放つ甘ったるい空気は、完全にラーメンの匂いにかき消されていた。


「じゃあ、俺は帰る」


二人の時間を作るため、食後すぐに立ち上がる。


「うん、またね」


宋玥綺は嬉しそうだった。


その指の一本は、いつの間にか韓江の手の中へ伸びていた。


……だが。


悲劇は起きた。


恋愛に関して鈍感すぎる韓江は、その手を開き――


赤橙色の棚から、一束のカードを取り出した。


「せっかくだし、一緒に遊ばない?」


俺はその場で固まった。


そして宋玥綺は――


恐ろしく冷たい目で俺を睨んでいた。


右手は固く握られている。


まるで骨が軋む音まで聞こえてきそうだった。


「ね、小江」


宋玥綺は笑顔を作る。


「郭錫、まだ用事があるみたいだから帰してあげたら?」


「郭錫、お前用事ないよな?」


韓江が言う。


「今日、ちゃんと聞いたし」


【!!!】


【いつだよ!? くそ……】


「……わ、分かった」


信じられないことに。


宋玥綺は俺より先に了承した。


「だって最近、前部长とあまり話してなかったし」


彼女は笑う。


「たまには一緒にゲームするのも悪くないかなって」


「全員同意したな」


韓江はカードを手に取る。


「このゲームは……まあ、簡単に言えば真実か挑戦かのカード版みたいなものかな」


「韓江、お前こういうゲームするのか?」


俺は驚いた。


「これは遠くの学校に通ってる妹のものなんだ」


韓江は少し申し訳なさそうに言う。


「あいつ、昔から大人びててさ。友達と遊ぶために買ったらしい」


「小江、妹さんいるの?」


宋玥綺が目を輝かせる。


「ごめん、今まで言ってなかった。でも、もうかなり長い間会ってないんだ」


「会ったら抱きしめたいなぁ」


宋玥綺は想像を膨らませる。


「小江の妹なら、絶対いい子なんだろうね」


「好きに想像してくれ」


「ちぇっ」


————————————————————————


「「「じゃんけんぽん」」」


何回目かも分からない勝負。


俺が出したパーは、見事に負けた。


「早くカードめくって」


俺が言うと、宋玥綺は一番上のカードをめくった。


「ふふっ♪」


彼女は楽しそうに笑う。


「これは……ちょっと聞きにくい質問だね」


そして。


「じゃあ質問」


「部长って、好きな人いたことある?」


「ある」


即答した。


「えっ!? 全然恥ずかしがらないじゃん」


「普通だろ」


「というか、なんか思ったより面白くないな」


「なんで!?」


宋玥綺は不満そうに声を上げる。


「めちゃくちゃ面白いでしょ!」


「ほら、続けよう!」


「……結局、お前が一番ハマってるじゃないか」


俺は呆れながら呟いた。

最近は忙しく、更新頻度が少し落ちると思います。

ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。

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