6
さて、今起きたことを整理しよう。
ユキ——このゲームの主人公——が、最初の攻略対象でありチュートリアル相手でもある相手に、まさか負けるなんて。
——「始め」
戦闘教官の合図と同時に、ユキは目にも留まらぬ速さで前進し、藤原麗奈に向けて一閃を放った。一撃で決めるつもりだったのだろう。だが麗奈は、そのレイピアでそれを防いだ。とはいえ、苦労しているようだったが。
——「あの一撃に、どれだけの魔素を使ったんだ?」
それが頭に浮かんだ。
ユキは驚いていた。あれだけの魔素を使った一撃を防げる相手がいるとは思っていなかったのだろう。
ユキがその一撃の反動で体勢を立て直す間、麗奈は一突きを繰り出した。ユキは後退して辛うじてかわす。だが、それが誤りだった。麗奈は追撃に出た。ユキはまだ地面から数センチ浮いた状態で、支えがないまま迫る突きを剣で受け止めようとした。無駄だった。一瞬にして麗奈は攻撃を切り返し、横薙ぎに変えた。しかも、その腕にはユキが最初の一撃に使ったのとほぼ倍の魔素が込められていた。
それだけでユキは耐え切れず、手から剣が弾き飛ばされた。
ユキが地面に着地した時には、すでに麗奈のレイピアがその首筋を捉えていた。
——何が起きた?
こんなはずはない。イベントはしっかり覚えている。ユキが特殊攻撃を放ち、麗奈はそれを防ごうとして失敗し、プライドを傷つけられるはずだ。
ざわめきが始まった。
——「あれが藤原家の令嬢か?」
——「強すぎる……」
——「確実にSクラスだな」
取るに足らない雑音だ。
——「弱すぎる」
雑踏の中でも、麗奈のその言葉がはっきりと聞こえた。彼女は優雅な動きでプラットフォームを降りる。一方、ユキはまだ地面に座り込んだまま、俺と同じくらいの衝撃を受けていた。
弱い……いや、お前が強すぎるんだよ。
十分ほど、頭が真っ白になった。その状態から俺を引き戻したのは、誰かに呼ばれたからだ。
——「黒金零、次はあなたよ」
教官の声だ。
どうやら俺の番らしい。
観客席から木製の薙刀を持って降り、プラットフォームに上がる。群衆は俺にほとんど注意を払わなかった。俺もまた、自分の状況に頭が回っていなかった。さっきの出来事で頭がいっぱいだった。
対戦相手を見る。ショートカットの少女が剣を構えている。
——「始め」
俺はまだ戦闘態勢すら取っていなかった。あまりにも気が散っていた。ユキと麗奈の戦い、ユキが負けたことの全ての意味を反芻していた。
だが、何かが俺の集中を遮った。対戦相手——いや、むしろ彼女の叫び声だ。
彼女は空中に跳び、剣を振り下ろそうとしていた。その叫び声に少し驚き、反射的に薙刀で彼女の腹部をまっすぐに打ち据えた。空中で完全に止まった。
——「しまった、力を使いすぎた」
彼女を傷つけすぎていなければいいが。彼女は白目を剥き、口から泡を吹いて床に倒れた。
——「化け物かよ」
——「ただの評価戦だろ、殺す気か?」
——「あんな野蛮人とは戦いたくないな」
それがその場で聞こえた声だ。
数人の女生徒が駆け寄り、彼女を担架で運び出した。
その時、観客席で麗奈が俺を見ているのに気づいた。その視線の意味は読み取れなかった。嫌悪感……だろうか?
観客席に戻ると、今度は女生徒たちが少し距離を取った。初日で評判を台無しにしたようだ。
だが、どうでもいい。今はどうやってこの状況を立て直すかを考えなければ。
もしユキが麗奈に勝てなければ、麗奈は慰められる必要がない。そして慰められなければ、彼女のルートは永遠に開かれない。
麗奈がユキに敗北することで大きく傷つく理由は二つある。
一つ目、ユキは戦闘において全ての面で天才だ。入学前からその強さは噂になっていた。だが同時に、彼女は推薦で入学したただの一般人でもある。
一方、麗奈は現代における貴族に等しい。彼女の家系は古く重要な家柄であり、戦闘において常に頂点に立つことで知られている。だからこそ、ユキに敗れることが彼女を傷つける。だが、慰められることで、将来的に二人の恋愛の種が蒔かれるのだ。
麗奈がユキに敗れた後、ユキに慰められることはあまりにも重要だ。
だが、ユキ以外に麗奈に勝てる者など存在しない。ましてや、今の彼女の強さならなおさらだ。
……いや、一人だけいた。俺だ。
俺が彼女に勝ち、その後ユキに何らかの形で慰めさせることができるかもしれない。だが、それは非常に危険だ。彼女に勝てる可能性は低い。だが、他に何ができる?
……
そうして一日が過ぎた。
この戦いはトーナメント形式だ。上位30位は即座にSクラスに編入される。ゲームでも、これは実力者への報酬であり、ニューゲームプラスをした者への特典だった。
俺の当初の計画は、せいぜいCクラスに留まることだった。だが運命は味方しなかった。どの対戦も麗奈とのものではなかった。
早く彼女と対戦し、低いクラスに留まり、すべてが解決したら遠くから見守るつもりだった。
だが、現実はそうではなかった。今の順位はおそらく上位40位以内に入っている。
良い面を見れば、彼女の戦いをより多く観察できたことだ。だが、彼女の戦いはどれも長続きしなかったので、あまり分析できなかった。
俺の戦いも同じだった。だが、見せびらかしたいわけではない。戦うたびに使う魔素が増えている。今の俺の魔素量は、せいぜい二杯分に届くかどうかだ。
——「藤原麗奈と……黒金零、対戦のために降りなさい」
ついに来た。このまま彼女と共にSクラスに行かなければならないかと思っていた。最初の戦いから彼女が俺に向けてくる視線——おそらく嫌悪感だろう——は、もう十分に彼女が俺を嫌っていることを示していた。
再びアリーナへ。
——「行け! 藤原様、あなたならできる!」
観客席から声が上がる。どうやら彼女は早くもファンクラブを作ったようだ。
だが、今は目の前に麗奈が立っている。
——「黒金零……」
麗奈が口を開いた。
——「私が倒してやる。そして五年前のことが何の価値もなかったことを証明してやる」
……え? 五年前? なぜ彼女は既に俺を知っているかのように言うんだ?
——「誰かと勘違いしてませんか? 私たちが話すのは今日が初めてです」
その返答が彼女を苛立たせたようだ。これまでの嫌悪の表情が、明らかに怒りに変わった。
考えろ……五年前……いや、この世界に来て彼女と会った記憶はない。だから安心だ。
——「用意……」
構えを取る。薙刀を正面に構え、刃を下に向けて足元の高さに。
彼女はレイピアを構え、柄を胸の高さに、切っ先を天井に向けている。
奇妙だ。なぜ彼女はこんなに俺を真剣に受け止めているんだ?
——「始め!」
即座に彼女の前に移動する。彼女も即座に反応し、突きを放つ。だが、それが俺に届く前に左に移動する。そして下から、刃の先を彼女の胸に向けて振り上げた。だが、それは届かなかった。切っ先は彼女のレイピアに防がれた。
成功するとは思っていなかったが、試す価値はあった。
麗奈は待たずに攻撃を仕掛け始めた。一秒間に何十もの突きが繰り出される。俺はかろうじてそれらを見切り、かわす。だが、完全にかわせないものは掠めていき、拳で殴られたような衝撃が走る。その都度、魔素を使って衝撃を和らげなければならなかった。
完璧な瞬間を待つ。そして、その瞬間が訪れた。
彼女の腕に込められた魔素が切れ、力のない突きを放った。彼女が新たに魔素を込める前に、俺はその隙を突いた。全力で、かつ相当な量の魔素を込めて彼女の手を打ち据えた。力の抜けた彼女の手と俺の一撃で、彼女は武器を落とした。
もう一方の腕が動く。薙刀の切っ先はまっすぐに彼女の首筋へ。
麗奈は目を閉じ、腕を顔の前に掲げて衝撃に備えた。
だが、それは決して来なかった。
——「勝者……黒金零」
彼女が再び目を開けると、切っ先が数センチのところで止まっているのが見えた。
俺は息を吐いた。会場は、それまで麗奈への声援で満ちていたのに、今は静まり返っていた。
呼吸が乱れている。この短い戦いで、ほとんど全ての魔素を使い果たした。だが、やった。
彼女は悲しそうだった。
少し気の毒に思ったが、何も言えなかった。それは干渉になってしまう。今必要なのは、ユキに彼女を慰めさせることだ。
麗奈から離れ、観客席に戻ろうとした。
——「待ちなさい」
振り返った。麗奈だ。
彼女は俺に歩み寄り、俺の首を掴んだ。
——「あなた……!」
今はもっと怒っているようだった。望まなくても、彼女は俺の敵になるかもしれない。だが、それは必要なことだ。
だが、次に起こったことは、何百万年考えても予測できなかった。
彼女は無理やり顔を近づけ、俺にキスをした。
その瞬間、頭が真っ白になった。
耳に届くのは、生徒たちの驚きの悲鳴だけだった。」




