母娘
大変お待たせ致しました。
二話目です。
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作者が喜びます
カラァン
変なお店と思う様な音がドアから鳴った。
「らっしゃい、ゆっくりどうぞ」
客を客とあまり思っていないであろう声が奥の方から聞こえて来る。
「あの、子供用の眼鏡を……買いに来たのですが」
「あー、その子の、ですかね?」
「ええ。あ、この通り視力検査はしてきました」
娘の目は五年生になると一気に悪くなった。
私も同じぐらいの頃から近視が進み、遺伝もあるのかと悩んだがこればかりは仕方ないのかもしれない。
「あー、眼科さんでしっかりとやって貰ったのであれば、仮性近視の可能性は低い感じですか」
まさか専門的な事をこんな店員から言われると思っていなかったので私がつい驚くと、やや申し訳なさそうに女性店員が案内を始める。
「子供さんだと、どうしても成長があるので、あまり締め付けがキツイ眼鏡はかけない方がいいですね。あとは、眼鏡をかけるのが嫌になる子もいるので、できるだけ掛けていることを感じにくい、柔らかめの素材の……そうですね、この辺りのちょっと子供っぽい感じのモノが多いですけど、初めてだとこの辺りのモノがオススメです」
大人用と子供用で別れているというよりは、顔の幅で分けているようで、横幅がやや小さめに見えるコーナーへと案内された。
値段をチラリと確認すると、チェーン店の眼鏡屋さんよりも思っていたより安い。このぐらいであれば、予備を買う事も検討できそうだ。
女性店員が進めてくれたコーナーは言う通り子供っぽいモノも多いが、娘はどうだろうと確認すると、嬉しそうだった。
「えーっと、これと……こっちと、後コレもかけてみたい」
即断即決というぐらいの速さで、三つの眼鏡を娘が選ぶ。
「では、こちらの方でかけ心地の確認ですね」
「お願いします」
娘が頭を下げると、丁寧に女性店員は頭を下げて机の上に鏡を用意してくれた。
「眼鏡は顔の一部になるので、人からの見え方も多少気にしてもいいですよ」
優しく女性店員が言うと、しかめっ面になる娘。
「えー、男の子はボインがいーってうるさいし、私はそういうよてー……ないから、別にどう思われてもいいんだけどー」
そんな話は家でもしないのに、いきなりで私が慌てたのですが、気にした様子はなく逆に少しだけ悩む表情になった女性店員さん。
「貴女は今よりも先を見ているのね。だったら、尚更しっかりと気にしたほうがいいわ?」
「そうなの?」
「私たち女性の方が、少しばかり成長が早いから、そうならないようにするための先行投資と思うのが大人の女性よ?」
面食らっている私をよそに、娘はふーんと言いながらも面倒臭いなと零す。
私は呆気にとられた。
私はこの子の母親で、一番の理解者で、常に寄り添ってきたつもりだ。
初めての子育てで、右も左も分からなくても出来る限りの事はしてきた。
いや、していたハズだ。
ただ、この女性店員はうちの娘を、しっかりとした一人の人間として見ていた。
私にとっての、目に入れても痛くない、とても、とても、かわいい娘。
「あ、お母さま?娘さんの視力は、ここ最近悪くなり始めた感じですか?」
「え、ええ」
突然声を掛けられて、生返事を返してしまう。
「今の時代、スマホにタブレット、授業でも使うみたいですし、どうしても目は悪くなりやすいんですよね。集中力を発揮すればするほど、目が悪くなるような循環になっちゃう可能性があるので、時折でいいので星を見る……ですとか、遠くを見る様な事をするとか、あまり近視が進まなかったりする方法も色々とあるみたいなので、その辺りはまた眼科の先生とお話ししてあげて下さい」
私は、しっかりと娘を育てているつもりだったけど、私にとって娘はいつまでも子供だと思っていたのに、何というか少し遠いところへ娘が一人巣立つかのような空気を感じてしまい、何とも言えない状態でいると娘が声を掛けて来る。
「おかーさん、かけてみると結構似ているように見えて、違うね?こっちは思っていたよりもゴツゴツしたから、この柔らかいのとこっちのピンクとどっちが合うかな?」
無邪気に聞いて来る娘は、私が知っているいつもの娘だった。
「そうね、どっちも合うし……二つぐらい、子供だとどうしても壊しやすいですから、あった方がいいですよね?」
確認をするように、女性店員へ聞くと頷きが返って来る。
「そうですね。それに家と学校と気持ちを切り替えるツールとしても使えますから、ある程度個数がある事自体は悪くはないですね」
そう言うと、何故か少し悩んでいるような顔になった女性店員。
「このぐらいの度数でしたら、すぐにお作りできますけどどうします?」
「え、すぐですか?」
「ええ。まだ度も進んでいないので、レンズの予備もある程度あるので、お二つぐらいでしたら、余裕を見て一時間以内。頑張ったら、三十分ぐらい……ですかね。ああ、他のお客さんが来ない前提ですけどね」
えへへと、笑う女性店員に明らかに商売っ気はなさそうだった。
「あ、私の腕が心配でしたら、後日までに別の者に作らせることも可能ですから、急いで決める必要はありませんよ」
そう言いながら、両手をわたわたさせる女性店員。
「別にそうは思っていませんよ。どうする?眼鏡、すぐに作ってもらう?」
「うん。見える方がいいから」
「お願いします」
「分かりました。えーっと……ああ、そうだ。もしよければ、ですけど」
そう言って、手渡されたのは手作り感満載のコーヒー無料券。
「待ち時間もいい時間にして欲しいって、オーナーが。もしよければ、店はこの坂の上の所にありまして。……あ、終わった頃にご連絡も出来ますよ?」
不思議な店員の不思議な案内に娘と二人目を合わせますが、お互いにふふっと笑ってそのお店に行くことに。
カラァン
お店から出て、言われた坂を上った先にあったのはパッと見た感じ一軒家。
看板も無く不安はあったのだが、気にした様子の無い娘が勝手に扉を開けると、眼鏡屋さんと同じ音。
さっきのお店の違和感がスッと晴れたのは、お店の内装がしっかりとした喫茶店だったからだろう。
「おや?いらっしゃい」
どうやら、このお店も商売っ気はなさそうで気の良さそうな老人と青年を足して二で割ったような、不思議な雰囲気の人が声を掛けて来た。
「眼鏡を作って貰って……」
その雰囲気に押されて何も言わないでいると、娘が貰った紙を渡す。
「ああ、そうですか。コーヒーで大丈夫ですか?ジュースにする?」
「大丈夫。コーヒー飲める」
「そうですか。お砂糖とミルクは?」
「……お願いします」
「ええ、分かりました」
そういうと、お母さまは?と私にも聞いてきます。
「あ、じゃあ、娘と一緒で」
「分かりました。ああ、席は……お好きな席へどうぞ」
喫茶店の中をあらためて見回すと、中々趣のある店内。
眼鏡屋さんに聞かなければ、一生気が付かなかったかもしれなかった。
「なんだっけ、おかーさん……メトロ?なお店?」
「ああ、レトロね。でも、ほら、奥はしっかりと今っぽいわよ?」
「あ、本当だ。後、なんか美味しそうな匂いもする」
いわれてみて、近くの皮張りのソファに座ってみると、かなり座り心地がよく深めに座りながらテーブルの上にあったメニューを見てみる。
「喫茶店、よね?」
そこに書いてあるのは、たった一文。
ご注文の品を出来るだけお届けします
なんというか、メニューというよりは御用聞きみたいな一文で思わず娘と目を合わせてしまいますが、奥の方から思いっきり機械の音が聞こえてきます。
音が一段落した頃、声を掛けて来た。
「ご覧になりますか?」
どうしようかと思う間もなく娘がカウンターへ飛び出したので、追いかけるように向かう。
「簡単なハート、ちょっとだけ技術のいるリーフ、格好をつけた感じにできる、スワン辺りも出来ますが、リクエストはあります?」
「リーフ!」
「分かりました。お母さまは?」
「あ、じゃあ同じ……」
「お母さんのはハートで!!」
「ええ、わかりました」
男の人は慣れた手つきでカップを包むように持つと、そっと銀色のピッチャーを横へと揺らしていく。白い線がうねりはじめ、スッとピッチャーを引くと一枚の葉っぱが浮かび上がった。
私の分はもっとわかりやすく、揺らさずにいるとカップの真ん中にまんまるい円が出来上がって、線を引くようにピッチャーを抜くと丸が一気に形をハートへと変える。
「どうぞ。ああ、あまり熱くはしていませんが、最初はちびりと確認してください」
淹れ立てのラテは砂糖を入れずとも甘く、そしてかなりぬるいラテ。
「牛乳はぬるめに温めると甘くなるんですよ」
優しい笑顔で言われて、思わずホッとため息が出る。
「おかーさん、このコーヒー甘くておいしい」
「え?」
「ああ、娘さんのエスプレッソには少しだけ砂糖を先に入れておきましたから」
同じようにミルクしか入れていないかと思ったのですが、ここまで気が利くと少しだけ怪しく見えてきた。
「このコーヒー美味しい!」
家でコーヒーは、もう少し大人になってからと飲ませていなかったのだが、この様子であれば少しずつ慣れるのは良さそう。
「ねー、おかーさん、お腹減った?」
「え?お腹?」
どうやら娘はお腹が少し減ったみたいですが……、優しそうな笑顔でこちらを見て来るこのお店の店主。
怖さは少しずつ薄れ、代わりに興味の方が勝ち始めていた。
私達は眼鏡が出来上がるのを待ちにこのお店に入っただけだったのに、不思議な感覚に包まれていた。
母娘が店を出ると、私は最近あまり使わない看板を引き出しから取り出した。
そこには「接客中」と書かれていて、その看板をお店の入り口にかける。
私は思わず笑みがこぼれる。
「よし、これで邪魔は入らないかな。パパっと作ろう」
殆ど機械任せとはいっても、多少の集中力は必要だ。
女の子が選んだ一つ目の眼鏡を機械にセットして、レンズを用意すると機械を動かす。
静かな音でレンズが出来上がったら、後はレンズをはめ込むだけ……なのだが、予想通りで、レンズが少し厚く削りの作業が必要だった。
無心でするこの作業だが、私の中ではかなり好きな作業の一つ。
代わりに、この作業の時に声を掛けられるのはとても困る。その為、看板を外に出したわけだが、こういう時に限って余計な事が起こりやすい。
カラァン
私としては接客中の看板が見えないのかと言いたくなるが、お客さんによってはそんなことはお構いなしという事もある。
仕方なく、作業場から店内に戻ると汗が引いてない郵便屋さんが会釈をして郵便物を置いて行く。
私は何とも言えない表情で目を合わせると、会釈を返した。
完全に集中力は切れてしまったのだが、怒りが湧く事もなく、でもやるせない気持ちだけが私を包む。
「うがー。んもー」
言葉にならない言葉をそのまま吐き捨て、顔を両手でパンパンと軽く叩くと緩い痛み。
グッと目を強く閉じて、大きく息を吐きながら深呼吸をすると、お店の埃っぽい空気でちょっとだけむせた。
「さ、集中、集中」
勝手をする事に対して少しだけ悩んだが、逆に集中力が切れたのが良かったのか、自分の中での踏ん切りが付いたので、思いのままに作業に戻る事に。
レンズを再び削って、眼鏡にパコンとレンズをハメる。
二つ目の眼鏡はズレも殆ど無く、すぐにハマったので大きな調整は無く二個目の眼鏡も出来上がる。
「耳にかかるところは……えーっと、ややかかりぐらいがいいから……」
先セルの部分にドライヤーのような温風を当てる機械を使って熱し、横に伸びている先セルをぐにょんとたらすように折り曲げる。
さっき見た女の子の耳はかなり日本人っぽく、真っすぐの先セルだとどうしても耳に乗るだけで慣れないうちはつぶれる感覚になりやすい。
ただ、彼女の集中力はあるようにみえたので、それなら包み込む形でフィットさせてしまえばいいかもしれないと、今の内に出来る調整をしてみると、かなり耳に引っかかる形の先セルが出来上がる。
「あ、この鼻パットは、かわいくないから……透明のモノにして……」
小さなお世話だが、女の顔は安くない。
女の子の言っていたようにお母さんもストンってタイプだったから、ボインは望めないかもしれないけど、少しでもキレイにして悪い事は……あまりない。
「あ、でも……可愛すぎるとかキレイ過ぎると……面倒でもあるけど……そこは私の知ったこっちゃないか」
見目のいい友達が苦労した話を何故か思い出したが、今は気にしても仕方がない。
もう一つの眼鏡も軽い調整を済ませて、あとはかけて貰いながらの最終調整でどうにかしたい所。
「とりあえず、こんな所かな?」
自分勝手にやった作業が一つあったので、こればかりは後でお叱りを受ける可能性があるのだが、多分私のやったことに後悔はない。
もっと自分としては断言して、こうですと言いきれればいいのだが、どうにも断言は難しい。
「うーん、最悪でもないけど、その時は自腹でいいか」
一応ここで働き始めてから、同じような事は何度もあったが何故か今回に限ってやってみようと思った。多分これは、あの女の子の魅力だと思う事にして、調整が済んだ眼鏡の確認を済ませる。
「よし、角度もいいし、うん、問題ないかな」
自分のできる仕事を済ませたので、うーんと大きく反りながら背中を伸ばす。
かなり伸びると気持ちはよく、自分としてはそこまで集中しているつもりはなかったのだが、しっかり集中力は発揮していたらしい。
時計は自分の予想通りで25分が過ぎていて、すこしばかり迷いが生まれる。
「コーヒー……私だと、どのぐらいで飲んでいたかな?」
坂の上の喫茶店は、居ようと思うといくらでも居たくなるような雰囲気があって、ハッと気が付くと簡単に一時間は過ぎているような場所。もしかしたら、お腹が減って、ちょっと遅めのオヤツや軽い食事を済ませたくなっていたら、早すぎる連絡は逆に悪い可能性もある。
「うぐぐ、やっぱり喫茶店紹介は難しいなぁ。っていうか、真面目に考えると、眼鏡屋で喫茶店紹介ってオカシイような?いや、オーナーのお店だし、いいのかな?」
自分の思考が迷路の中へと吸い込まれそうになっていくかと思ったのだが、店内の電話の着信音が私を現実に引き留めた。
「ふくろう眼鏡です」
あまり鳴らない着信音には未だに慣れないが、しっかりと対応できたのは慣れも少しずつあるからだろう。
「はるさん、喫茶店の田中です。お客様がこちらでオムライスを注文されたので、もう少しかかりそうですが、そちらは?」
「あー、田中さん。ちょうど今さっき、眼鏡は出来上がりましたよ」
「そうですか。では、食事が終わり次第、ご案内して大丈夫ですかね」
「ええ。いつでも大丈夫ですよ」
では、後程お送りしますねという言葉で電話はガチャリと切られた。
「カメラでもこのお店にあるのかな?」
タイミングの良すぎる電話にキョロキョロと店内を見回してみますが、それらしいものは見つけられず。
まあ、あったとしても……正直困る事はないかな?いや、嬉しくはないけど、まあこの仕事の態度に今まで何も言われていない以上、多分ないハズ。
「ま、いいか。……面倒だけど、ひっかけたアレは取って、奥で一服しますかね」
オーナーの計らいでこのお店にも上のお店と同じコーヒーは無いのですが、日本茶や紅茶、それ以外にもお湯を入れるだけでスープになるようなモノまで、色々といつの間にか置いてあって、私自身補充をした事はないけど、勝手に使っていいと言われているので、今の気分は……紅茶かな?と、砂糖たっぷりにミニ冷蔵庫からスライスしたレモンを入れて、優雅な時間を過ごしながらゆっくりと待つ。
眼鏡屋というのは、客が来ない時は来ないもので、薄めの二杯目を飲み終えた辺りで、かなり元気になった母娘が戻って来た。
カラァン
私は会釈をして、母娘を迎え入れると先程と同じ椅子へ掛けてもらいます。
「二つ、作ったのですが……まずはこちらからどうぞ」
どちらの眼鏡も子供用だが、耳や鼻に負担がすくなくなる様にある程度調整をしていたのだが、掛けてもらうとやはり多少のズレがある。
「耳へのかかり心地は大丈夫ですか?」
「うーん、多分?」
「じゃあ、ちょっとだけ調整してみましょう」
もう一度眼鏡を借りて、形を整える。
しっかりと温めたやや熱い先セルの部分だが、この熱さがないと変形せず、そして熱が冷めれば動かしてもあまり意味がなくなってしまう。なので、素早く整えなおす。
「これで、どうです?」
「おー。耳にのってないかも?」
「大丈夫そうですね。では、もう一つの眼鏡……なのですが……」
二つ目の眼鏡は自分としては彼女の為の一つ。
ただ、何も言わずに作っているので、小さな親切ながら大きなお世話の可能性もある状態。
「まずは、見え方から……どう?」
「うわ、これ、すっごい。ぐわんってしない!!」
自分としては、ああ、やっぱり。という感想なのですが、どうしたらいいか迷いが顔に出る。
「同じ眼鏡なのに、こうも反応が違うと……なにかをしたのです?」
お母さんが聞いてきた。
「ええ。お医者さんが渡してくれた紙、左右の視力のズレがあったじゃないですか。本来、処方箋の通りに作るのが正しいのですが、利き目に頼る動きがあって。初めての眼鏡というのもあって、まだその度数に目が慣れていないように見えたんです。もしかして少し弱めでもいいかもしれないと、言われたりしませんでした?」
確認をすると、お母さんの方が「あ」と、なにか思い出した顔になるが、先に話を進める事に。
眼科が処方してくれた数値は分かりやすく両方の視力を1.0にしてくれるように作られているわけで。
「利き手と一緒で、利き目もあるんです。お嬢さんはその数値のズレがかなり顕著だったので、あえて、利き目の方を少しだけ、下げたんです」
「利き目だけ、ですか?」
「ええ。どうしても人間、利き手と一緒で利き目のほうを脳が重視しちゃうので、見え方もそっちに引っ張られるんです。でも、目は視力が戻ると順応しようと頑張って、余計に目に負担をかけちゃうんです」
成長期の目というのはどうしても視力も悪くなりやすく、それを少しでも抑え、さらになるべく目が悪くなりにくくなるに越したことはありません。
「視力検査をすると、多分ぎりぎり1.0ぐらいか、場合によっては0.7ぐらいまで落ちますが、日常生活の面でいえば、それだけあれば十分で。何より、本を読んだり、スマホを見たり、目を使う事が多いのであれば、負担は出来るだけ少ない方がいいんです」
と、ここまで一気に説明をしたわけですが、どうなんだろう?と母娘を見ると、ちょっと怖いぐらい、いい笑顔の二人。
「さぷらーいず?」
「ね。マスターさんの言う通りだったわね」
「え?」
何の話です?って目に私がなると、女の子が教えてくれます。
「マスターさんが、私の為に眼鏡に魔法をお姉ちゃんがかけてくれるって」
「は?」
いやいや、そんな話……なにも電話で田中さんとしていないんですけど?
「どちらも購入しますよ。確かに、眼科さんは眼鏡を作ったら、持って来てもう一度検診しましょうとは言っていましたが、子供の成長に合わせて少し弱めをお願いしてもいいって、言われていたことを今更、思い出しましたよ」
そういう話は……もう少し早く言って欲しかったと思う心もあったのですが、私が上手く引き出せなかったともいえるので、何とも言えない表情に私はなる。
そして、どうにか絞り出せた言葉はとてもありきたり。
「そうでしたか」
母娘は笑顔で二つの眼鏡を購入してくれて、念の為と数日以上使って、それでもやっぱり強く見えすぎるという場合は眼科さんに相談の上、また来ていただければレンズ交換いたしますと、伝えれば、元気のいい「わかった」という返事が返ってきた。
「子供のはじめての眼鏡で、ちょっと私も緊張していたけど、これだったら私も一本欲しくなっちゃうわね」
「眼科さんに行かなくても、一応簡易検査で作る事も出来るので、もし見え方に何かあるのでしたら、お気軽に来ていただければ、どうにかしますよ」
そう言うと、それは助かると言ったのですが、どうやら手持ちが心許なかったみたいで、今度、お伺いするわ、と、花柄の眼鏡ケースを選んだ娘さんと一緒に笑顔になってお店をあとに。
「ホッとしたら……どっと、疲れたかも」
お客さんに喜んでもらえる眼鏡が出来たので、疲れはあるのですがちょっとだけ頬が緩み、満足感が後からじんわりと自分を包んだ。
※眼鏡の度数は基本的に眼科さんが出した場合はその通りに作った方がいいので、眼科の指示を優先するのが基本です。
これは、あくまでもフィクションです。お店の方に無茶を言わないようお願いします。
一話目のタイトルを「どぐらす」から「ガムテの人」に変更しました。
今後、他のサブタイトルが変わる事は無いハズです。
何度か自分でも読み返し、違和感や引っ掛かりなどは極力減らしたつもりですが、「ん?」と思う事があれば、ご指摘いただけると助かります。
私は文字数が増えると、どうにもダメダメなのです。
今回も読んで頂きありがとうございました。
次回も、不定期ではありますが、大安の日に公開予定です。よろしくお願いします。




