第7話 喚ばれる者たち
「驚いているけど、普通はそんなことないの?」
「はい、普通は召喚者の呼び出しに応じて力を貸すだけ。力の向上など起こりえません。ちなみに私には雷属性は使えなかったのですが、使えるようになりました」
なるほど。多分一方的な協力ではなく相互協力という縛りを課したことによってボーナスが得られたとかそんなところじゃないかな。とレイヌに言ってみると、
「契約にそんな効果が。貴方だからこそできたことなのでしょうね」
などとこそばゆいことを言ってくれる。そういえば僕のことを見てたって言ってたっけ。どういうことか尋ねてみる。
「女神にあれだけ愛されているのです。嫌でも目立ちます。神威を感じ取れる者であれば特にです。故に注目して見ていましたが、貴方はこの世界の在り方を良い方に変えようとしている。それを知っていたので、召喚に応じてしまいました」
彼女曰く、この世の自然を司る精霊の、それも女王たるレイヌは、観測者として世界に存在し、特定の者に力を貸すことはしないらしい。それでも僕の召喚に応じてくれたのは嬉しいね。
「じゃあ契約も済んだし、今日はここまでかな?」
「いえ、主人様。主人様はまだ仲魔を召喚できるようですので、このままで」
「え?」
複数の召喚なんてできるの?
「普通はできませんが、主人様の魂は特別なようです。それに、私との契約により魔力が大幅に増加しています」
言われて気づいた。半分持って行かれたはずの魔力がほぼ気にならない程度まで回復している。というよりこれは、失った分が気にならないほどに最大値が増加しているらしい。
「このまま契約を続けていけばおそらく私レベルの者があと五体は召喚できるでしょう」
「そんなに!?」
精霊女王一人でも大きすぎる力なのにそのレベルがあと五体って……。明らかにオーバーな力じゃないそれ? でも興味が勝ってしまう僕であった。レッツ召喚!
二回目の召喚も一回目と同じくらい魔力が引かれる。そして出てきたのは漆黒の鎧?
「ふむ、貴殿が我を召喚した者か。我は漆黒の騎士。この世の『騎士』という概念の結晶である」
「僕はアインです。よろしくお願いします」
二度目はもう緊張しないけど、すごいこと言ってない? 騎士という概念って。要するに最強の騎士ってことだよね?
「レイヌとのことは知ってる?」
「我は貴殿の召喚によって生まれし者。貴殿の記憶も少し受け継がせてもらった」
わお。生まれたてかい。え、何? じゃあ写身じゃなくこれが本体?
「我は概念が形を持ったもの。貴殿が生きてさえいればこの身が滅ぼうとも再生成が可能だ」
本体みたいなのはないけど仕組みはだいたい同じって事ね。でもそれなら契約内容に困るなあ。
「しからば、名前をつけていただければと思う」
「名前?」
「そう。我には名前がない。特定の誰かではない故にな。よって、自己認識のため、名前を乞う」
コギト・エルゴ・スムみたいだな。我思う、故に我ありか。じゃあそこからちょっともじって、
「君はアルゴだ」
「アルゴか。良い名だな。主に忠誠を誓おう」
アルゴには本当の良さは伝わっていないかもしれない。さっきの言葉から取った以外にも、ギリシャ神話のアルゴノーツからも頂いている。伝説の勇者たちのように勇ましい騎士であれという意味もあるのだ。
「今更だけどアルゴは何が得意なの?」
「我は見ての通り剣と盾を携えている。この二つの扱いならば誰にも負けはせん。槍も扱えるが生憎召喚時には持たぬようだ」
四大属性魔術を司るレイヌと近接最強のアルゴ。既にすごい戦力だけど、レイヌの計算ではあと四体も契約できるらしい。あと何が足りないの、僕?
「主人様、次の者もお喚びください」
レイヌに急かされてしまった。まあ、今までの感じもう契約の説明は要らなそうなのでお互いの紹介だけしてサクサクいこう。
三体目は〜?
ぽふん!
煙とともに出現したのは大きな犬? いや、狼かな? 白銀の毛並みがとても美しい。
「召喚に応じてくれてありがとう。僕はアイン。よろしくね。君は?」
(私はアルテ。フェンリルだよ。女神様がアイン様に仕えなさいって送り出してくれたの)
今度は女神様直々の紹介ですか。フェンリルといえば北欧神話で神をも喰い殺す狼だった気がするけどこの世界では神様に仕えているんだね。ていうか念話か。そんな技術あるのかこの世界。いや、神に近いからか?
(私も契約。ずっと一緒にいてほしい)
「ずっと一緒にっていうのは僕も嬉しいけど……。それで本当に良いの?」
(うん。アイン様、女神様の力を感じるし優しさも感じて気持ちいいの)
「それなら契約だ」
そうしてアルテとも契約を交わす。するとアルテの姿が白銀の長髪を持つ美しい女性に変わる。……服は着ていて良かったよ。女神様グッジョブ。
「驚き。人の姿になれるなんて。これで一緒にいられる。嬉しい」
「どちらかというと狼の姿で犬くらい小さくなったらもっと簡単なんだけど」
と苦笑いしながら言う。人間の姿で屋敷に入るなら養子か使用人としてになる。どちらを選ぶより、ペットの犬として入る方が簡単だろう。
「できるから。一緒にいさせてね」
と念押しされ、アルテとの初対面を終える。これで三体。だけど、このときの僕は契約するごとに僕自身の力が上がっていることを忘れていた。つまり、この後の三体はまたとてつもないものが出てくるのだ。




