第5話 試作品と商会
付与を知ってからはあっという間だった。【電熱変換】【回転機構】【放電】など色々と付与を成功させ、製品を作り上げた。材料は一旦伯爵家のお金を使わせてもらって買い集め、売上で返すことになった。基本的には鉄、アルミニウム、銅などの金属が中心だが、一部にケイ砂や虫魔物の羽素材などが必要だったのでそちらも用意した。
試作品は五つ。
まず一つ目は、【電熱変換】を使ったエアコン的なもの。【電熱変換】は熱を作ることも奪うこともできたので、電気を流せば一定空間の気温を上げ下げ可能だ。面白いのは、前世のように温風や冷風が出てくるわけではなく、魔術的に空間を覆って気温のコントロールをする点である。しかも付与で作ったためエアコンよりずっと小さく、持ち運びできる。車がないこの世界では大変重宝されることだろう。野菜や果物を育てるのにも良さそうだ。もちろん温度調整もできる。気温を大きく変えると魔力も多く使う仕組みになっている。
二つ目は同じく【電熱変換】を使ったIHコンロみたいなもの。火を使わないので比較的安全に調理できるのが魅力である。もちろん温度調整も可能で、高温ほど魔力を多く使う。各家庭に一台となればかなりの需要だろう。
三つ目はこれまた【電熱変換】を使っている。空気を冷やして水蒸気を液体の水にする製水器だ。 これも旅先で役立ちそうだ。当然持ち運びが簡単な大きさと重さである。
四つ目は【回転機構】を使った扇風機だ。エアコンと違い温度調整はしないが、優しい風が吹いて浴びると気持ちいい。エアコンより消費魔力が少ないため低燃費である。
そして最後に【放電】を用いた窒素固定器だ。雷が多い年は豊作というのはこの世界でも共通で、雷のような空中放電は空気中の窒素を窒素化合物に変え、雨に溶けて土に入り植物の栄養になる。窒素の単体は三重結合だから結合が強すぎてそのままだと植物が使えないんだよね。ということで空中放電して窒素化合物を作り水に混ぜて肥料を作れる装置を開発した。
これら五つの試作品には先生も火水地風を制覇したと大喜びで、伯爵家でもその便利さが認められ特に使用人が大喜び、父上も僕が雷属性に喜んだ理由が分かりスッキリしていた。
さて、製品ができたということは次にやるべきは生産体制と販売方法の確保である。どちらから当たるかというところで、月一回伯爵家に販売に来る商会の人がちょうど先生の授業の時間に来た。せっかくならという父の鶴の一声で、試作品たちが商会の人に見せられることになったわけだが……
「これはすごい! これはすごいですよ! 今すぐにでも売り出したいくらいです!」
やはり凄まじい食いつきである。そりゃそうだよね。何せ人口の三分の一が雷属性魔術師だ。それだけ需要があるんだから。
「落ち着いてください、ミラー会頭。まだ見たばっかりですし、アインも貴方のことを知らないのですから」
父がそういうと、落ち着いた茶髪イケメン、ミラー会頭が自己紹介をする。
「失礼いたしました。私はミラー商会の会頭、ハヤト=ミラーと申します。以後お見知り置きお願いいたします」
「ご挨拶ありがとうございます。私はシュタイン伯爵家が三男、アイン=シュタインです。よろしくお願いいたします」
驚いた。ミラー商会と言えば国を股にかける世界一の大商会じゃないか! そんな商会のしかも会頭自ら来ていたなんて、やはり父上はすごいなぁ。
「ところで、こちらの品々、私どもの商会に販売をお任せいただけませんか?」
これは渡りに船、というには馬鹿でかい豪華客船が来たものだが、一つ問題点がある。
「嬉しい申し出ではあるのですが量産体制がなくて……」
「はっはっは、お任せください! ミラー商会には生産部門もございますので!」
なんと、売り買いだけではないんだ。自社生産もしているなんて、流石は世界一の商会である。
「錬金術師もいますか?」
「当然ですとも!」
「付与もできます?」
「もちろんです!」
「よろしくお願いします!!」
「こちらこそです!」
一つの出会いで二つの問題が解決した。前世から出会いには自信があったけれども、今世は前世以上かもしれない。豪華客船どころか宇宙船くらいの豪華さである。
「では早速契約しましょう!」
ミラー会頭が言い出し、父上も先生も止めない。これはこのまま契約の流れだ。ではここからは父上と先生に任せて……。
「「「どこに行くんだ(ですか)?」」」
え? 父上、先生、ミラー会頭の三人がハモって僕を呼び止める。Why?
「え、ここからは大人の話なのでは……?」
「開発者はアインくんなのだからアインくんも立ち会うべきでしょう。むしろ契約すべきなのはアインくんでは?」
先生が言うと、
「はい、もちろん契約はアイン様と結ぶべきと考えております。もちろん、協力者としてルイス氏とも契約いたしますし、保護者としてザイン様にも立ち会っていただきます」
ミラー会頭も続け、
「アインが開発した物の権利は当然アインにあるんだ。アインが契約しないでどうするのさ」
父上がトドメをさす。貴方たち仲良いね。
結局契約は僕とミラー会頭が中心となって行った。値段は庶民でも頑張れば手が出るような程度にしてもらう。もちろん利益は出さないといけないけどね。貴族用に見栄えにこだわった高級品も用意する。機能は変わらないから、こちらの方で利益を大きく出すつもりだ。売上の分配は僕が半分、先生が二割、ミラー商会が三割の割合だ。僕の取り分が多すぎないかと思うけど、商会が三割というのは普通のことらしい。需要が大きいのでこれでも利益は十分に入るそうだからもう任せた。
そうして売り出された「魔電製品」第一弾は飛ぶように売れ、庶民にも貴族にも大好評。特に冒険者は、旅が非常に楽になると言うことでこれを持てるか持てないかで遠征するかどうか選ぶほどらしい。
いるんだ、冒険者。




