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雷下の改新〜霹靂伯の異世界教育改革〜  作者: 囲魔 美蕾


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第19話 ワイバーンだ!!

 シュタルニアを出発して五日が経ち、いよいよ王都が見えるようになった頃、僕とライラ殿下は談笑していた。二ヶ月の授業では語りきれなかったことがあったからそれを中心に、僕が話し、殿下が質問し、僕が問いかけ、殿下が考えるというように、ひたすらに話し続けていた。王都が近づいている、近衛騎士団1個小隊が着いていると安心していたのだろう。そんな安心感をぶち破るように騎士の一人が馬車の戸を開けて叫ぶように報告する。


「ご歓談のところ申し訳ありません! 突然ワイバーンが現れました!!」

「!!」


 ワイバーンは飛竜とも呼ばれる、飛行能力に優れた魔物の一種だ。「飛竜」であって「竜」とはまったくの別物で、竜はれっきとした生物だが飛竜は魔物。生物と魔物の大きな違いは、魔物は代謝をしないということ。代謝は呼吸や光合成のように、体内の化学反応でエネルギーを取り出すことだが、魔物は食べた物から魔力だけを直接吸収し糧とする。それは生きるためではなく強くなるためである。魔物は摂取した魔力を生命活動に使うが、余った魔力は溜めておくのだ。そしてある程度の魔力を溜め込むと爆発的に強くなる。これを昇格と言い、昇格した魔物は討伐に要する人数が3倍ほどになるという。この討伐に要する人数を基準に魔物の強さを表したのがランクだ。平均的な新人騎士一人で倒せる魔物がレベル1、そこから3倍ごとにレベル2、レベル3、……と上がっていく。そしてワイバーンは初期段階ではレベル4。新人騎士が30人ほどで挑みようやく勝負になるくらいの強さだ。レベルでいえば歴戦の近衛騎士が1個小隊30人いる今、相手をするのはそう難しくない。ただそれは、相手が地上の魔物で、昇格しておらず、護る相手がいなければの話だ。ワイバーンは基本的に戦闘で地上に降りない。上空から一方的に攻撃する手段があるからだ。つまり、騎士たちは武器ではなく魔術で戦わなければならないのだ。また、倒す戦いと護る戦いは別物だ。僕とライラ殿下がいることで、騎士たちは僕たちを護りながらワイバーンを倒さなければならなくなった。【鑑定】しても能力的に昇格している様子はないのでそれは救いか。ただ、かなり厳しい戦いになりそうだ。なお、戦わないで逃げるという選択肢はない。ここからは王都が見える。つまり僕らが逃げれば襲われるのは王都なのだ。ワイバーンに対して外壁は大きな意味を持たない。飛んできたワイバーンに王都の人たちが襲われてしまうと考えると、逃げるのは選択肢にない。

 さてどうしたものか。案の定ワイバーンは上空でこちらの隙を伺っているようだ。一方騎士たちは防御陣形を組み、向かってきたら返り討ちにする構え。それをわかっているのかワイバーンは仕掛けてこない。マズイな、このままだとワイバーンのブレス攻撃で一方的に攻撃される。僕と殿下くらいなら守れるけど30人もの騎士を守る方法は僕には無い。

 すると、グラムが前に出て剣を構える。離れたところから何を? と思ったら、彼はそのまま剣を振り下ろし、


「《空割》!!」


 と叫ぶ。すると、振り下ろした剣から衝撃波が飛びワイバーンに向かっていく。驚いたな。【剣術】を高めると斬撃が飛ぶのか。いや、これは技術も必要だがグラムのパワーあってのものだな。ともかく、飛来した斬撃をワイバーンは……翼で防いだ!? あれは翼が鋭く発達したブレードワイバーンか! 厄介だな。本来ワイバーンはブレス攻撃が主体で近距離戦闘は比較的強くない魔物──とはいえ体は大きく強いので当たったら痛い目を見るが──だが、ブレードワイバーンは近接が強いタイプの魔物だ。一説では【剣術】スキルを持っているというが、【鑑定】結果をよくよく見れば確かに持っている。


「気をつけてください! ブレードワイバーンです!」


 騎士たちに注意喚起する。とはいえ僕が持っている情報は家にあった魔物図鑑に載っていたものくらいなので、これ以上情報がない。ここからは騎士たちの働きに期待するしかないが……。なんだあれは!? ブレードワイバーンが体を回転させて、錐揉み回転しながら突っ込んできた! ブレードワイバーンの翼は鉄より硬い。あんなの喰らったらひとたまりもないぞ!

 思考しているうちに回転する巨体が近づいてくる。僕にできることは二つに一つ。【神聖術】で障壁を張り確実に馬車を守るか、一か八か魔術攻撃で倒し切ることを試みるかだ。一瞬の逡巡の末、殿下には悪いが賭けに出ようと馬車から飛び出す直前、グラムが大剣を携え前に出る。そして剣を盾のように使い……なんと、ワイバーンの突進を防いでみせたのだ。これが《剛剣》の為せる業か。

 そうしてワイバーンの動きが止まったところに騎士たちが斬りかかる。騎士たちはわかって、そして信じていたのだ。自分たちの隊長が見事にワイバーンを止めることを。騎士たちの絶対的な信頼と、それに応えるグラム。素晴らしい関係だ。ただワイバーンもただでやられてくれるわけではない。硬く鋭い翼で騎士たちの攻撃をいくらかいなしつつ、鱗に守られていない箇所への攻撃をされないように立ち回っている。

 しばらく地上での攻防が続くが、近衛騎士といえどもさすがに真正面からワイバーンにまともな傷を付けるのは難しいらしく、小さな傷を与えるにとどまっている。だが小さな傷があれば十分だ。僕は念の為持ってきていた秘密兵器を持って馬車を飛び出した。そして騎士たちとの戦いに集中しているワイバーンに気づかれないように近づき、秘密兵器を、両端が尖った細く鋭い槍をワイバーンの傷に向かって突き刺した。

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