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雷下の改新〜霹靂伯の異世界教育改革〜  作者: 囲魔 美蕾


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第15話 終わりと始まり

 授業が終わり、僕は書いていた板書を消すために黒板のボタンを押す。びっしりと書かれていた板書が一瞬にして全て消えた。これにも多くの者が驚きを覚えたようだ。


「あの、今のは?」


 質問したのはライラ殿下。疑問を持って実際に問えるのは良いことだね。


「この板も錬金術で作ったもので、書いたものをワンタッチで消せるんです。ミラー商会で買えますよ」

「では、それに陣を描いたらどうなりますか?」

「えっ?」


 その発想はなかったけど、そうか。確かにそうすれば繰り返しかつ別の魔術が使える媒体になるじゃないか。その発想の柔らかさに脱帽である。


「それは素晴らしいですね! 必ず作ります!」


 と言った後、「複数の陣を一度に描いたら?」とか「材料は何が良いだろう?」とかブツブツ独り言を言い出してしまう。思考を止めたのはトーラス陛下であった。


「アイン。今回の授業、素晴らしかったぞ。其方ほどの教育者も、学者も見たことがない。ライラよ、シュタイン伯爵家で学ぶ気はないか?」

「えっ」

「よろしいのですか!?」


 陛下のありがたい言葉の後の爆弾発言に戸惑う僕と喜ぶライラ殿下。それって父上の許可が……。ああ、父上諦めてるや。まあ相手は国王陛下だし、拒否権はないか。


「流石にこのまま残るというわけにはいかないがな。一度城に戻り、支度を整えて改めて学びに行きなさい」

「はい!!」


 駄目だ、この父娘止まらない。ライラ殿下が学びに来るのは確定事項らしい。こうなると他の者たちも押し寄せてきそうなので防衛策を取る。


「殿下については父の許可があれば。ただ、受け入れる準備というものもありますのでなるべくお付きの方は少なめでお願いしたいのですが……」

「心配せずとも、行き帰りの護衛に止めよう。これだけ優秀な使用人が揃っているのだ。到着してしまえば何も心配あるまいよ。それに、優秀なのが使用人だけとも思えんしな」


 陛下にはバレバレか。そう、アルゴの訓練のおかげで伯爵家の自慢だった騎士団がさらに精強になっている。というか使用人でさえ護身術で並みの騎士団相手に守りの戦いならできると思う。ましてや騎士たちは一人一人が他の騎士団の幹部クラス、役職者は一騎当千とはいかずとも一度に二十や三十くらいなら相手にできる。なのでこの屋敷は王城より安全なのかもしれない。

 こうしてライラ殿下のシュタイン伯爵家への留学が口約束とはいえ決定した。



 その後は色々な貴族や商人たちと挨拶を交わし、情報交換をした。僕個人としてはあまり隠すことはないので、魔電製品の使い方とか今後の展望とか色々と話した。向こうからは主に製品の使い心地だったり自領の特産品の話だったりを聞いた。あと、自分の息子や娘に勉強を教えてくれという声が圧倒的に多かった。この世界の教育事情を考えればさもありなん。でもそんなに大勢は無理なんだよね。僕って一人しかいないしさ。

 そして最後の挨拶は僕が務めることに。さっき言いたいこと言ったので今更何を話そうかね。


「本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございました。来てくださった方々と、準備をしてくれた使用人たちに感謝いたします」


 まずはお決まりのフレーズから。


「まだまだ私は若輩者です。だからこそ自分の可能性を信じて、これからも皆のためにできることをやっていくつもりです。皆さんには暖かい目で見守っていただければと思います。ステラリア王国のさらなる発展を願っております。改めまして本日はありがとうございました」


 暖かい拍手に包まれて顔見せ会は終わりを告げたのだった。



 今回の経験で教育の重要性に気がついた貴族や商人たちは各々の地に戻り早速教育施設を作ろうと考えるが、いかんせん集団教育というものが今まで存在していなかったものであるため作り方がわからなかった。考えた結果それぞれが国に投げ、国も困ることになってしまった。国王も今回初めて集団教育を目の当たりにしたのだ。とはいえ重要性も高く要望も出ているものを作らないわけにはいかない。そのため、留学に向かう第五王女ライラに一通の手紙を託したのだった。



「お久しぶりです、ザイン様、アイン様。お初にお目にかかります、マイン様とカイン様……でよろしかったでしょうか?」


 顔見せ会から二ヶ月。ライラ殿下が再びシュタイン家にやってきた。今回はマイン兄上とカイン兄上も一緒に挨拶する。

 この二ヶ月でシュタイン家の教育施策はさらに先に進んだ。お茶を飲んで休憩を取った後、ライラ殿下を連れて新たな教育の地、シュタルニアにある孤児院へ向かった。


「ここは……教会の孤児院ですか」


 そう、孤児院は教会が寄付を元手に運営している。元々親に捨てられたり親を早くに亡くした子どもたちを受け入れていたのだが、孤児院を卒業した子の就職率は低かった。就職できなければ体調を崩すか犯罪に走る。どちらにせよ治安が悪くなる原因になるので、対策として使用人に教えたような一般教養を教えたらどうかと思ったのだ。とはいえ貴族の子息が頻繁に訪れるわけにもいかないので、一般教養を修了した使用人の中で特に教え方が上手い者を派遣している。もちろん特別手当を出しているとも。

 まだ始めて一ヶ月ほどなので修了した子はいないが、子どもたちの学ぶ意欲は高く、着実に成績を伸ばしているとのことだ。僕も最初の一回と半月に一回ほど様子を見に行っているので、子どもたちや運営者には認知されている。というか使用人たちが「私たちの先生です」とか紹介するから子どもたちからはキラキラした目で見られ、大人たちからはすごく感謝されている。

 ちょうど前回の訪問から半月ほどなので、良い機会だしライラ殿下と一緒に来てみた。


「ア、アイン様!!」


 出迎えてくれた運営の大人が慌てた様子で声をかけてきたがどうしたんだろう。


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