第13話 顔見せ会
顔見せ会当日。かなりの人数の商人や貴族、果ては王家まで来ている。今までにないほどにごった返しているパーティホールだが、それを使用人たちが見事な連携で余裕を持って捌ききっていた。その様子を見た多くの人たちが驚き、すごく父上に質問したそうにしていた。だけどこういうのは会が始まってから位が高い順に話すものだ。なので質問したくてもできなかった。
料理と飲み物が行き届き、いよいよ顔見せ会の開始となる。始めの挨拶はこの中で最も偉い人、すなわち国王陛下が行う。
「この度はかの『魔電製品』を生み出したアイン=シュタインの顔見せとなる! 色々と聞きたいこともあろうが、無理矢理聞くことはこの私が許さぬ。脅迫など以ての外である! 素晴らしい会になることを願うぞ。では『魔電製品』を生み出したアインとこの国の発展に乾杯!」
「「「乾杯!」」」
陛下が注意してくださったおかげで強硬手段に出る族はいないだろう。あとは搦手に注意しないとだけど……。
「そんなに緊張しなくてもいい。私が隣にいる」
「そうさ。僕もいるしね」
父上と先生がいてくれるので大丈夫と言って良いだろう。ちなみにミラー会頭も側に控えているが立場的に多くを語るつもりはなさそうだ。もちろん求められたら話すとは思うし絶好の商売チャンスを世界一の商会の長が見逃すとも思えない。その辺りは好きにすれば良いと思うし、彼の商売で利益を得るのは僕なので上手くやってほしい。
「其方がアイン=シュタインだな」
おっと、考え事をしていたら陛下がいらっしゃった。流石に父上も緊張している。僕はそんな父上を後目に陛下に挨拶をする。
「はい、私がシュタイン伯爵家三男、アイン=シュタインでございます。以後お見知り置き願います」
「良い良い、そんなに畏まるな。取って食いやせぬ。この度は大義であった」
「ありがたき幸せ」
いや畏まるなは無理でしょ。この国のトップですよ貴方。するとルイス先生が陛下に話しかける。
「陛下、流石に陛下相手に畏まらないのは不敬です」
さすがは王家から二つ名を与えられただけあり、僕が言いたかったことを代わりに言ってくれた。
「そうか。では、今日は君が主役なのだからもっと楽にしなさい。私のことも知り合いの父親だと思ってくれて結構だ。これでどうだ?」
無理だよ!! 国王に対して知り合いの父親は流石に無理があるって!!
「ふむ、まだ無理か。であれば、ほら、挨拶をしなさい」
陛下がそういうと陛下の後ろに控えていた女の子が挨拶する。
「はじめまして、アイン=シュタイン様。私はステラリア王国第五王女、ライラ=ステラリアです。よろしくお願いいたします」
「ご挨拶ありがとうございます、ライラ殿下。私はシュタイン伯爵家三男、アイン=シュタインです。よろしくお願いいたします」
ライラと言えばこと座の英名だ。こと座はあの織姫星として知られるベガを擁する星座であり、殿下にぴったりな美しい名前である。
「ふっふ、これで知り合いの父親になっただろう。そうだ、名乗りがまだであったな。私はトーラス=ステラリア。このステラリア王国の国王である。よろしく頼むぞ」
「はっ。よろしくお願いいたします」
トーラスとは牡牛座のことだ。牡牛座は前世の神話で主神が変身した姿を星座にしたものだから、こちらも王様っぽい名前だな。
「それにしても其方はライラを見ても変な気を起こさぬのだな。同年代はもちろん、親世代ですらそういう目で見るものが多いというのに立派なものだ。あるいはその年で枯れておるのか?」
「お父様、流石に失礼です」
歯に衣着せぬ物言いのトーラス陛下にライラ殿下が苦言を呈する。枯れているかとか子どもに聞くんじゃないよまったく。僕は女神様を始め美しい女性を見すぎただけである。ライラ殿下は水色のロングヘアにぱっちりとした同色の瞳をしており、とても美しいけど手を出そうとか思わないから心配しないでほしい。とはいえ説明は必要なのでする。
「殿下は大変美しい女性ですから、お近づきになりたいとかそういった思考を飛び越えてしまうのです。自分のものにするのではなく、皆に大切にされるべきだと思ってしまいます」
嘘じゃないぞ。オタク気質がそう思わせているのだ。僕は一ファンでいい。
「ふむ、なるほど。ところでここの使用人はとても質が高いように見える。王城にもここまでの者はそういない。これほどの者たちをどうやって集めた?」
来た。しかも陛下自らの質問である。周りの者たちも談笑を止めこちらの話に注意を向ける。
「最初からここまでできた者はおりません。育てたのでございます」
「育てた? 誰がだ?」
「私と指導役のメイドです。よろしければ実演しながら説明しても?」
「もちろんだ。言ったであろう、この会の主役は其方だ。ぜひ私に教えてほしい」
周囲の者たちがざわめく。一国の王が臣下に「教えてほしい」と言ったのだ。それは彼らの常識からして驚きを禁じ得ないことであり、そして僕からすればトーラス陛下が名君だと確信した瞬間であった。
僕の合図であらかじめ準備してあった黒板と学習机を手際よく並べていく使用人たち。並べ終わったら席に着き、僕は黒板の前に立つ。
「それでは特別授業を開始します。起立! 礼!」
多くのギャラリーを前にした公開授業が始まった。




