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第6話聖闘教⭐️ティーチャー降臨

ゆっくりと瞼を上げる。

爆炎の中から、人影が現れた。


逆光。

揺れるコート。

その一歩だけで、場の空気が変わった。


――音が、消える。


その男は、静かに腕を上げた。

指先を揃え、

額の前で意味ありげに止める。


完全に意味が分からない。

だが、無駄に堂々としている。


「通知はな、増えるほど価値が下がる。

 感情も同じだ。

 送りすぎれば、ただのノイズになる」


一歩、踏み出す。


聖闘教セイント⭐️ティーチャー降臨」



「誰だよ!!てかポーズなんなんだよ!!」


俺のツッコミなど、まるで聞こえていないかのように。

ティーチャーは、思春期バーストズを見据えた。


「過多だな」


ぼそり、と呟く。


次の瞬間――


 消えた。


視界から、消失。


いや違う。

速すぎる。

気づいた時には、

思春期バーストズの懐にいた。

スマホを掲げる怪人の腕を、

トン、と指で弾く。

それだけ。

それだけで。


 ビシィッ!!


空気が裂ける音。

次の瞬間、スマホが粉々に砕け散った。


「なっ、、、!?」


動揺が走る。

だがティーチャーは止まらない。


「一つ」


軽く踏み込む。


「二つ」


ネイルが振り下ろされる前に、


 スッ――


その軌道から外れる。


「三つ」


振り向きざま、


 パシンッ


指先で額を弾く。


その瞬間、


 ボンッ!!


思春期バーストズが弾けた。


「す、すごい」


思わず口から漏れる。


強い。

明らかに俺とは、次元が違う。


「感情は、悪ではない」


ティーチャーは歩く。

爆煙の中を。

まるで、授業でもするかのように。


「だがな」


一体のバーストズの目の前で、止まる。


「扱えないなら――」


2本指を立て、水平に空を切る。


「それは“暴走”だ」


 ドンッ!!


見えない衝撃が走る。

思春期バーストズが、一斉に吹き飛んだ。

モヤが、霧散していく。

残ったのは、ただ一体。


本体――

思春期バースト。


「ぎ、ぁああああ――!!」

けたたましい雄叫びをあげている怪人を尻目に、ティーチャーは振り返りもせず、


 ストン。


まるで一筋の矢が刺さったかのように、

俺の前へ降り立った。


「、、、え?」


近い。近い近い近い。

距離感っ!!


動揺しながら、

俺は圧倒的な存在を見上げた。


派手じゃない。

なのに目が離せない。

理屈じゃない説得力が、

そこにあった。

削ぎ落とされたみたいな雰囲気。

無駄がない。

それでいて、

妙に色気がある。


くっ、、、眩しい、、、!

大人って、こういうことかよ、、、!


ティーチャーは、静かに口を開いた。


「さぁ」



「君は、感情のコントロールはできているかい?」


「いや急に面談始めんな!!」


俺の叫びも気にせず、続ける。


「暴走した感情は、外からではなく――」


指を一本、立てる。


あの、例のポーズ。


「内から整えるものだ」


トン、と俺の胸を軽く叩いた。


「一思いにやってしまいなさい」


「はぃ!?やるの俺!?」


いやいやいやいや無理だろ!!

さっきまで俺、ボコられてた側だぞ!?

どうせなら最後まで倒してくれよ。


「りょう」


頭の中にアサヒの声が響く。


「できる」


「根拠は!!」


「さっきより、、、マシ」


「評価低っ!!」


だが。

思春期バーストが、ゆっくりとこちらを見る。

その目はもう、

さっきみたいな狂気じゃない。


揺れている。

迷っている。


「、、、っ」


逃げるか?


いや。


――違う。


「、、、やるしかねぇかッ!!」


拳を握る。

震えてる。

でも。

さっきよりは、マシだ。


「来いよ、、、思春期バースト」


俺は、一歩踏み出した。

その時

「りょう」


アサヒが、ぼそっと呟く。


「拳に、言葉のせる」


「言葉!?」


思わず声が裏返る。


「力じゃなくて??」


「ティーチャーの能力。今なら使える」


一瞬、胸に触れた感触を思い出す。


 トン。


さっきの、あれ。


「、、、って!あの胸トンなんなんだよ!!

 あのモーションだけでそんなことできんのかよ!!」


でも。


――なんか、できそうな気がする。


思春期バーストが、揺れている。

さっきまでの勢いがない。


迷ってる。


なら――


「よし、、、やってやる!!」


大きく息を吸う。


拳を握る。


ぐっと、力を込める。


「はぁぁぁぁ!!、、、って違うわ!!」


力じゃない。

言葉、だろ。

一度、目を閉じて

深呼吸。


そして――


拳に、言葉をのせる。


「既読つかないだけで不安になるの、分かるけどさ」


思春期バーストが、止まる。


ぎこちなく、


 ぐ、が、、、が、、、っ


喉の奥で何かが引っかかるような音。


身体が、不自然に震える。



「でも、それで全部決めつけるのは違うだろ」


俺は一歩、踏み出す。


「相手だってさ、ずっとスマホ見てるわけじゃねぇし」


 ふしゅー、、、


漏れた息のように、

思春期バーストから黒いモヤがにじみ出る。


モヤが、かすかに乱れる。


揺れる。


まとまりきらない。


――何かを、手放しかけているみたいだ。


今だ!!


拳を、下ろす。

振り抜く――


「一人くらいはいるだろ!ちゃんと見てくれてるやつ!」


思春期バーストに触れる、

その、寸前。


 ふわり。


見えないはずの何かが、広がった。


 言葉の膜。


薄く、やわらかく、

けれど確かにそこにあるものが、

バーストを、包み込む。

殴った感触は、ない。

代わりに――


降り注ぐ。


ありったけの、優しい言葉のシャワーが。

責めるでもなく、

押しつけるでもなく、

ただ、そこにある感情を、

そのまま受け止めるように。


「ワ ダ ジィ、、、ノ"マ マ デ イイ」


思春期バーストの動きが、止まる。

モヤが、ほどけていく。


固く握りしめていたものを、

そっと手放すように。


そして、さっきまでの異様な姿は消え、

普通の女子高生に戻った。

変身を解いた俺たちは、女子高生に駆け寄る。


その一歩前に出たのは――

ティーチャーだった。


ティーチャーは、少しだけ腰を落とし、

少女と目線を合わせる。

少女の目から、ぽろりと涙がこぼれる。


俺は、ただ呆然とそれを見ていた。


なんなんだよ、こいつ、、、

強いとか、そういう話じゃない。


「先生、かよ、、、」


思わず、そう呟いていた。

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