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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王王都に帰還する

 翌日の朝。4の週の金の日だ。

 俺達は盛大な見送りを受けながら、王都への帰路についた。


『ヤマト王国の王都か。初めて行くな』


 ガゼルはどこか楽しそうな声色で言った。


「・・やっぱり災厄の芽は式典の日に来るのかしらね」


 エミリアは目を伏せながら言った。


『災厄の芽とはなんだ?』


「創造神アルカディアからのお告げだ。王都に災厄の芽が近付いているとな」


『なるほどな。それで我を使い魔にしたのか?』


「それも理由の1つだな」


 今回は王都には何も起きなかった。ということは、これから王都に何かが起きるはずである。

 ならば、それは王都どころかヤマト王国中の貴族達が集まる式典の日に敵は来るのではないか。

 それは前々から予想していた事であった。


「結婚式くらいは平和にやりたいですね」


 ララもやはり目を伏せながら言った。

 俺たちの結婚式は異世界の勇者とヤマト王国の友好をアピールするため、その式典の日に大々的に執り行われる予定だ。

 ララの言う通り、結婚式は平和にやりたい。

 なんとか事前に防げると良いのだが。


「俺達はやれる事をやっていこう」


「そうね」


「はい」


 王都の民に障壁の魔道具は配布した。

 だが、これは大々的に告知してしまっている。

 もし王都に敵が潜んでいるならそれも踏まえて策を練ることだろう。もう1つくらい切り札が欲しいところだ。


「エミリア。式典は王城の前庭で行う予定だったな?」


「ええ、そうよ。その日だけは王国民が見れるように、内街が開放になって、自由に入れるようになる予定よ」


「それなら、闘技場は使わないんだな?」


「ええ、その日は使う予定は無いわね」


 闘技場はヤマトが作った施設だ。

 内部には王城の訓練場と同様に空間拡張と死亡回避の結界が張られており、およそ10万人まで収容できるとてつもない規模の施設だ。

 これならば俺が考えている策が実現出来そうだ。

 俺はもしもの切り札について2人に話した。


 王都リューベックには昼下がりに到着した。

 飛空挺を王城の発着場に着陸させると、近衛騎士団長カーチスが出迎えてくれた。


「よくぞ戻った!謁見の間で王がお待ちである!」


 操船してくれたリシルの影に礼を言い、リシルの影には俺の影に戻ってもらった。

 そのままカーチスに連れられて俺達は謁見の間に向かった。


 謁見の間では王と宰相ノーチス、そして近衛騎士団達が待っていた。


「お父様。エミリア・ヤマトただいま帰還致しました」


 エミリアが先んじて挨拶を行うと、膝をつき頭を垂れた。ララも同様に膝をつき頭を垂れる。

 俺は例のごとく直立不動だ。

 毎度の事なので他の面々も苦笑するのみだ。慣れたものである。


「面を上げよ」


 王の言葉を受け、エミリアとララが顔を上げる。


「此度の戦の顛末はルノアより聞き及んでおる。ディスアスターよ。そなたは獅子奮迅の活躍であったそうだな。何でも1人で幾万もの魔物の大軍勢を打ち滅ぼしたとか」


「ああ」


「くく、強いとは思っていたがそこまでとはな。さすがは異世界の魔王にして位階序列第1位と言ったところか」


 そう言ってルーガート王はひとしきり笑うと、俺に視線を向けた。


「此度の功績に伴い、褒美を取らせよう。何が欲しい」


 褒美か。今回の件では飛空挺が移動に役立った。

 だが飛空挺は個人での所有が許されていない。飛空挺は全て王国の所有物としているからだ。

 これから旅する身としてはぜひ飛空挺は持っておきたいところだ。


「ならば、飛空挺を1隻。自由に使わせて欲しい」


「よかろう。今回使った飛空挺をそなたに与える。好きに使うがいい」


 よし。これで旅における移動力が格段に増した。

 自由に使えるのであれば強化してしまおう。


「他に何か報告する事はあるか?」


「ああ。出来れば人払いをしたい」


「・・ふむ、良かろう。皆、外に出るように」


 ルーガート王の号令に従い、宰相ノーチスを始め近衛騎士団の面々が謁見の間から出て行った。

 こうして王が護衛すらも外に出させたのは、俺に対する信頼の証であろう。


「では聞かせるがいい。その幼竜の話か?」


「それもある」


 ガゼルに視線を送る。

 もしもの時には風竜王であるガゼルには変化を解いて力を奮ってもらう予定である。

 その時いきなりガゼルが暴れれば混乱が起きるだろう。そうなってもすぐに混乱を収められるように国のトップには話しておきたい。

 ガゼルは変化の術を解くと、元の巨体に戻った。

 ガゼルの怪我は既にララによって治療済みであるので、しっかりと両の脚で立っていた。


『お初にお目にかかる、人族の王よ。我は風竜王ガゼル。此度の戦によりこの異世界の勇者ディスターの使い魔となった』


 ガゼルが挨拶をすると、ルーガートは僅かに目を見開き、そして凄惨な笑みを浮かべた。


「地獄の番犬の次は風竜王か。全く貴様はどこまで余を楽しませてくれるのか」


「災厄の際にはこのガゼルが王都で戦う可能性もある。衛兵達には周知しておいてくれ」


「ふん、余を顎で使うのは貴様くらいよ。良いだろう、衛兵には周知しておく」


 そうしてガゼルは変化の魔法を使い幼竜の姿に戻った。

 これで1つ問題はクリアだ。

 次の話に行こう。


「次だ。敵の魔族に洗脳魔法と呪術を操る女がいる」


「・・洗脳魔法か、厄介なことよ。それでは人族が敵に回る事もあるわけか」


「ああ。誰が敵なのかわからない」


 少なくともこのルーガートには洗脳魔法の気配を感じない。だから話したのだ。


「それ故の人払いか」


「そうだ。理由はまだあるがな」


 むしろ最後の話が本命と言っても良い。


「ディスアスターよ。災厄はいつ来ると思う」


「式典の日が濃厚だろうな。だからこそ、式典の日に向けて"切り札"を用意しておきたい」


 俺がそう言うと、ルーガートは眉を上げた。


「・・ほう、"切り札"とな。申してみよ」


 俺は"切り札"の概要をルーガートに説明した。

 既にエミリアとララには話し、賛成意見を貰っている。


 概要を説明し終えると、ルーガートは僅かに目を見開いた。


「・・本当にそんな事が出来るのか」


「出来るから言っている。仕掛けは必要だがな」


「なるほど。確かに"切り札"よな。良かろう。魔道具ギルドには貴様に従うよう通達しておく」


「助かる」


 こうして俺達は式典の日に向けて準備を始めた。

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