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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王ルノア伯領に降り立つ

 しばらくしてルノア伯爵領に到着した。

 ルノア伯爵領は稲作で有名な領地だ。

 この国の米の4割はこの領地で採れたものらしい。

 今の時期は田植えすら行っていないのでただ茶色い畑の風景が広がるのみであったが、10の月辺りだと金色の稲穂が一面に広がっているらしい。

 ぜひその時に訪れてみたいものだと思いながら、ルノアの街の外壁の門の前に飛空挺を停めた。

 飛空挺はそのまま俺の無限収納にしまい、操船をしてくれたリシルの影は俺の影で休んでいてもらう。

 その一連の流れを門番は大口を開けて見ていたが、やがて俺たちが歩み寄っていくと佇まいを直した。


「ようこそルノアの街へ!勇者様御一行でしょうか?」


「ああ、そうだ」


 そう言ってギルドカードを見せる。

 門番はギルドカードを確認すると、外壁の上にいる衛兵に声を掛けた。


「おおい、開けてくれ!」


「わかった!」


 そう言うと外壁の上にいた衛兵が何やら操作をすると、重々しい石の門がごごご、と音を立てて開き始めた。


「おお、凄いですね!」


「ああ。魔法駆動にでもなっているのかもな」


 内側に開いた門から中に入ると、開いた門のすぐ傍に豪華な馬車が止まっていた。その馬車の前に燕尾服を着た老年の執事らしき人物が立っていた。

 その人物は堂に入った動きで俺たちに一礼をした。


「勇者御一行様。ようこそルノアの街へ。ルノア伯爵邸までご案内させていただきます」


「ありがとう。よろしく頼むわね」


 俺たちは馬車に乗り込み、執事は馭者台に座ると馬車を走らせた。

 馬車の席はスプリングが効いているのか、あまり揺れを感じなかった。


 馬車に揺られながらルノアの街を見る。

 街並みは王都と比べると木造の家が随分多いように見える。

 エミリアに理由を聞くとここは元々森を切り開いた開拓街であり、その時に切った木をそのまま家に使ったんだそうな。

 先程空から見た一面の畑全てが元々は森だったと聞くと、人族の努力は途方も無いな、と思う。

 歩く人々の顔にはありありと不安の色が見て取れた。

 ルノア砦に魔物の大軍勢が侵攻してる事は既に民草に発布しているらしく、それで不安に思っているのだろう。


「この不安を早く解消せねばなりませんね」


 民たちの表情を見ながら、ララは言った。


「そうね。頑張りましょう」


 それにエミリアが応える。

 ルノア伯爵邸に着いた頃には完全に日が暮れていた。ルノア砦まではここから馬で半日ほどだそうだ。夜には飛空挺は飛ばせないため、今日はルノア伯爵邸に泊まる予定である。

 晩餐に招待された俺たち。

 ルノア伯爵は晩餐の席で俺たちを見るなり、露骨にがっかりした様子を見せた。


「王国は我が領を見捨てたか・・」


「なんでそうなるのかしら」


 エミリアが怪訝な表情でルノア伯爵を見た。


「この我が領未曾有の危機に援軍がたった3人だぞ!誰だってそう思う!」


「なるほど。貴方はディスターの事を知らないのね?」


「お言葉ですが王女殿下。そこのディスアスター殿が勇者と呼ばれている事は存じております。ですが異世界の勇者1人で一体何ができましょうか」


 顔を顰めながら言うルノア伯爵に、エミリアはふん、と鼻を鳴らして応えた。


「やはり知らないのですね。王国は最大戦力を最速でこの領に送りました。このディスアスター・サタンこそ王国最大戦力です」


「彼が王国最大戦力?」


「ええ。彼は位階序列第1位なのですよ、伯爵。少なくとも第7位である私は手も足も出ずに彼に敗北していますし、王国の最終兵器と呼ばれる王国宮廷魔法師長ユーリ・ローゼンベルクも彼には勝てないと言っています。更に言えば彼はあの伝説の勇者ヤマト様と互角以上の戦いをした経歴の持ち主です」


「・・勇者ヤマト様は1200年前の人物だが、彼とどうやって戦うというのだ?」


「彼の元いた世界でヤマト様と戦ったそうです。この世界に召喚される際1200年の誤差が出たようですが。創造神アルカディア様のなさった事です、そういうこともあるのでしょう」


「・・信じられんな」


 疲れた様子で言うルノア伯爵。

 彼はこの未曾有の危機にきっと神経をすり減らしているのだろう。


「ルノア伯爵。聖女の魔眼の力はご存知ですね?」


「・・知っているが」


 怪訝そうな表情を浮かべるルノア伯爵。


「彼女は教会の指示で彼の過去を見ました。その中で確かに勇者ヤマト様と戦っていたのですね?」


「ええ。それどころか彼は何度も勇者ヤマト様に勝利しておりましたよ」


「・・それは嘘ではないのか?」


「神に誓って真実です」


 ララは毅然とした様子で言った。

 ルノア伯爵の目に少しずつ力が戻る。


「私は期待しても良いのか?」


 ルノア伯爵はそう言って俺を見た。


「ああ。必ず魔物の軍勢を撃退すると約束しよう」


「・・信じるぞ。我が領民を守ってくれ」


「任せろ」


「見事魔族めを撃退できた暁には宴を開こう。秘蔵のニホン酒を浴びるほど振る舞おうぞ」


 そう言ってルノア伯爵は笑った。


「それは楽しみだな」


 その後の晩餐は和やかに進んだ。

 情報では魔物の軍勢の進軍速度は遅いらしく、砦に辿り着くのは明後日の予想だという。

 晩餐後は湯浴みをしてそれぞれあてがわれた客室で眠りについた。


 翌朝。

 ルノア砦への支援物資を積み込み、俺たちは飛空挺で飛び立った。

 見送りにきたルノア伯爵は言った。


「ルノア砦では我が息子が指揮を務めている。どうか我が息子を助けてやってくれ」


 ルノア伯爵の目には確かな希望が宿っていた。

 この期待を裏切るわけにはいかない。

 決意を新たに胸に宿し、いよいよ決戦の地ルノア砦へと向かった。

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