第二話
「桜田美世さんは、どちらを希望ですか?」
「キャストです。」
演技ができるようになりたいの。
「キャストは多すぎるのでオーディションになりますよ。いいですか?」
オーディション?!
「あ、スタッフにしてもいいですか?」
「ごめんね、ホントに・・・衣装と照明と音響があいてるんだけど、どうします?」
「・・・・衣装でお願いします」
やってしまった、私。
せっかく、後悔しないって決めたのに!!
もう、今更何を言っても無駄だってことは分かっている。
衣装係で満足することにしよう。
演技がしたかったのは先輩のためだったんだから。
もう先輩はいないんだから。
演技を練習しても、先輩に告白することはかなわないんだから。
だから・・・
「あ、美世だ――」
「え?凛?」
凛はわたしの幼なじみ。
今では別に特に仲がいいわけでもないけれど、呼び捨てで名前を呼ぶ仲だ。
先輩と同じ学校に合格した、学年で1、2を争う美女だ。
柔らかい茶色い髪に、丸くてかわいい瞳に、色白で桃色の頬。
彼女がキャストねらいなのは聞かなくても分かる。が・・・
「凛、キャスト?」
「まあね」
やっぱり。聞かなければショックを受けることは無いのに、
聞いてしまうのは何でだろう。
凛はかわいく首をかしげた。
「美世は陽光第一高等学校でしょっ?すごいね―、賢いよね。
私なんて全然だから。ぎりぎりで里日高校だもん。」
「里日も賢いじゃん」
「陽光にはおいつけないっしょ。あこがれるよ、陽光生。」
「まさか。凛は相変わらず上手いんだから。」
と、言いつつ内心喜んでいる。先輩も私のこと見直してくれたりして・・・
無理だよ、あんたは地味なんだから。
心の中のもう一人の自分が言う。そう、
地味だからキャストに行って変わろうと思ったのに。
「そういえば、キャストってオーディションあるんでしょ?」
「あ、よく知ってるね美世。そうなんだよねー大丈夫かな?」
といいつつ凛は笑顔だ。
「凛は絶対大丈夫だよー、かわいいし才能もあるもん」
「えへへ、そーかなぁ」
凛は素直だ。なのに、いざとなったら表情をつくったりもできる。
凛はそうやって何人もの人からすかれている。
第一、私もその一人だ。凛にはかなわない。そう思っている。
凛はきっとオーディションに受かって・・・
予感は、当たった。
次の集合日には、キャストの席に姿勢良く座っている凛の姿があった。




