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心世界のシャーデンフロイデ  作者: トッシー00
第1章 心怪討伐
11/15

ゴレムの用事

第4話のあとがきです。

 心世界とは別、ここは現実世界。

 二〇十二年、日本の大都市、名は東京。

 大きなビルに囲まれ、人が行き来するこの街はいつも騒がしい。


 今、この場に生きる人々の大半がドリームゲートを所持している。

 街を見れば空に指を触る者、頭に指を置いて話す者。

 はたから見れば意味のない行為だが、実際はドリームゲートが視覚を通して写すタッチパネルを触っているのだ。

 今の世の中に携帯電話など存在しない、そんなものは二一世紀に入ると同時に姿を消した。

 パソコンもディスプレイ入らないしデスクトップもハードディスク端末のように小さく、ドリームゲートと接続することで仮想ディスプレイが表示される時代である。


 この時代に生きる者は、この技術の急成長に対しどのような思いを抱いただろうか。

 否、抱きはしたが関わろうとはしていない。人は常に進化する日常を満喫するだけ、恵まれないものの日常など考える余裕がないのと同じように。


「……待ち合わせはここか」


 大きな建物が並ぶ街並みにはずれた小さな喫茶店で、薄着のジャンパーを羽織る一人の男性。

 男の名は五十嵐(イガラシ)(イワオ)。心世界オンラインでは"ゴレム"の名で通っている。

 ゲーム内と同じくスキンヘッドで、30後半の容姿は初老間近を思わせる渋さが目立つ。

 サングラスなどをしたら少し強面に見えるだろう顔立ちで、実際はゲーム内と同じく陽気な性格である。


 巌が喫茶店に付いて数分後、巌の元に一人の男がやってきた。

 白衣姿にメガネと、まさに科学者を思わせる風貌の男だ。

 30代後半にしては少し若く見える繊細な顔立ち。身体はやせ細っており、屈強な体格の巌に比べるとすぐに折れてしまいそう。

 栄養もろくに取れていない、そんな憶測が出来てしまうほど弱弱しい体格。


「おう"圭吾"。久しぶりだな」


 巌が男の名を呼ぶ。

 男の名は睦月(ムツキ)圭吾(ケイゴ)。神園コーポレーションの社員である。

 彼と巌は高校時代の同級生で、今でも付き合いのある中である。


「やぁ巌、すまない仕事が休みの日にわざわざ」

「気にすんなよ、仕事の無い日は暇なんでな。もう妻とは離婚しちまって2年。寂しさを埋めるためにネットとは親父のやることじゃねぇや」


 巌はゲームと同じく、がははと豪快に笑い自身の不幸話すらさりげなくネタにする始末。

 彼は妻と別れた後、心世界オンラインに足を踏み入れたプレイヤー。

 ちなみにver1からいる古参の一人で、それゆえに心怪のこともよく知っていた。


「……親父とは言ったものだな、僕らももうすぐそういう年頃か」


 ふぅ、とため息をつき圭吾がぼそりと。

 そして少しの間の後、圭吾はうなだれ、言った。


「巌、僕はもう駄目だ。もう会社の意向に従うのはうんざりだ!!」


 まるで助けを求めるように言う圭吾。

 それをなんど巌は聞き続けたことだろう。そしていつも通りにこう返す


「その、なんちゅうかな。俺は一般人だからあまり触れることはできねぇ。俺は俺で必死に心怪を狩り続けている。力になってやれるのはその程度だ」

「本当にすまない巌。本来ならば心怪にもあまり関わってもらいたくはない。君が意識不明になったりしたら、僕は……」

「言うな圭吾。お前もお前なりに抗えよ。その……"神園の計画"ってのによ」


 あまり人のいない喫茶店にて、頼んだコーヒーが運ばれてくる。

 そこで一旦声のトーンを落とし、軽くコーヒーに一口付ける圭吾。


「……本当に、今の世の中がわからなくなりそうだよ。僕は」

「圭吾、お前はどこまで知ってるんだ?そしてそれは……場に公表をしたらまずいことなのか?」

「今の世の中は全て神園が……"ゴッドエデン"握っている。何かしでかそうものなら僕が消される。こうやって君に話をしている今も危ういところだ」


 そう漏らし、あたりを見渡す圭吾。

 その動作を見て、巌が軽く手を当て制止する。


「あんまりきょろきょろするな圭吾、それに俺は迷惑だとも思っちゃいねぇ。俺だって関わった以上は最後まで関わり続けるつもりだ」

「本当に、ありがとう巌」

「あぁ。それでその……答えられる範囲でいいから答えてくれ。その……前に話した"アレ"は本当なのか?」


 巌はできるだけ小さな声で、かつて圭吾に言われたとある噂についての質問をする。

 圭吾がそれを聞くと。数秒間を空けて、答える。


「……あぁ、間違いない。神園は何を目的にしているかは知らないが―――心世界オンラインは"人の感情を読み取り計測するアプリ"を搭載している」

「それは……いったい何が目的で」

「だからそれ以上は触れられないんだよ。心怪が人を意識不明にするのも、シャーデンフロイデという武器がプレイヤーに何をさせようとしているのかも」

「心怪、そしてシャーデンフロイデか……」

「あぁ、僕は……」


 と、続きを語ろうとする直後、圭吾のドリームゲートに着信が入る。

 会社からの招集だ。圭吾の顔を見ればすぐにわかる。


「行かなきゃいけない。すまなかったな巌」

「そう何度も謝んじゃねぇ圭吾。―――諦めんなよ、最後まで戦え」

「……ありがとな、巌」


 圭吾はすぐさまタクシーを呼び、神園コーポレーション本社へと向かう。

 それを見送り巌は、煙草をふかし空を見上げ呟く。



「……ったく、いったいどうなってやがるんだよ。この世界は」

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