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第14話 終決の黒煙

あたしたちを取り囲む数多のカラスと、巨大な怪異の化けガラス。

それが同じタイミングで、一気にあたしたちに向かってくる。

あたしは地面を蹴って空中に飛び上がり、ミニガラスを蹴り飛ばす。

グニっとした感触のあと──、カラスは遥か彼方まで飛んでいき、最後はキランと光って見えなくなった。そのまま戻ってこない。

どうやらあたしの蹴りは怪異のカラスにも効くようなので、あたしはひたすらカラス共を蹴り飛ばし続ける。

後ろでは影宮が銃でカラスを撃ち落としてる。弾に撃たれたカラスは、じゅうっと湯気が消えるみたいにあっという間にいなくなった。

だけど巨大カラスは今この瞬間も新しいカラスを何羽も生み出し続けている。

いくら蹴散らしても、また生まれてくる。無限ループの繰り返し。

終わりが見えない……!

「影宮ぁっ! これじゃいつまでも終わらないよっ! なんか作戦考えて! その間あたしがカラスから守るから!」

口を動かしても、足は止めない。動きを止めた影宮を確認しながら足を振り上げる。

……あたしの運動神経が、こんなふうに役に立つ日が来るなんて思いもしなかった。

「はあっ……ハア……」

いくら体力無限大と言われるあたしでも、ここまで動き続けたら流石に少しは息があがってくる。少しでも気を抜けば自分が、影宮が、怪異にやられてしまう危機一髪の状況も相まって。


目の前で、明里が信じられない運動神経でカラスたちを制圧している。

おかげで、俺の元まではカラスがやってこない。

でも、よく見ると少しは息切れをしているようだ。

俺は頭を超速でフル回転させる。

考えろ。思いつけっ! 思いつくんだ!

俺は、怪異警察なんだから……あんな目には、もう遭いたくないんだよ……!

ふと、カラスを生み出し続ける巨大カラスの背後に目がいった。

背後までは意識が向かないようで、すっからかんのその空間。

そして、カラスを生み出すことで体力を消耗するのか、巨大カラスにはほとんど動きがない。

その瞬間、閃光のように頭に走った思いつき。

俺は在らん限りの力を込めて叫ぶ。

「──明里!」

あいつ絶対バカだが伝わるだろうか。

「……了解(ラジャー)」

俺の策を聞いた明里はにっこり笑った。理解できたのか?

「頼む!」

明里はもう、俺の視界からいなくなっていた。


あたしは影宮とは全然違う方向に走る。

巨大カラスの意識がこっちにそれたのがわかった。

それと同時に、ミニガラスたちもあたしの方に一斉に向かってくる。

あたしが蹴るのを中断した分、倍増したカラスの黒い群れ。

戦いで考えている暇がなかった恐怖心が再び湧き上がってくる。

お願い、影宮……!

巨大カラスの背後に回り込んだ影宮の姿が見えた。あたしに意識を持っていかれたカラスは影宮に気づいていない。

そのまま影宮は、手にした煌めく銀色のナイフを、

怪異ガラスに、突き刺した。

あたしは思わず目を覆いそうになる。

すると……、カラスから、じゅうっと羽と同じ色の、黒い煙があがる。

あたしを狙っていたミニガラスたちは、気づけば跡形もなくなっていた。

あたしは影宮の元に駆け寄る。

黒煙が完全に掻き消えると──、

そこにいたのは、ただの一匹の、普通のカラスだった。

つぶらな瞳は赤くなく、真っ黒。

羽にも艶やかさがある。

「へ……ただのカラスだったの? あの怪異が?」

無事だとわかると、一気に体の力が抜けて、あたしはヘナヘナとその場に崩れ落ちる。

「あたし……生きてる……影宮も……」

影宮は何も答えない。

「?」

彼はいきなりあたしに倒れ込んできた。

あたしは咄嗟に受け止める。

気を失ってるみたいだ。

あたしはそっと彼を隣に横たえて、座り込んだまま空を見上げた。

変わらない空は、限りなく、青かった。

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