第12話 あたしにもやらせてよ
俊速で振り向いた影宮のすごい顔。まるであたしが来るなんて想像もしてなかった、って感じ。
影宮には悪いけど、あたしはちょっと笑っちゃった。
影宮、あんたあたしを舐めてるな。
あたしは結界の中で何もできずに大人しく待ってるようなやつじゃないの!
あたしはドヤ顔をしてみせる。
「明里……」
影宮が掠れた声で言う。
「どうやって結界から出たんだ?」
「スーパーウルトラハルキックで穴開けてきた」
彼は自分の額に手を当てる。
「つまり……蹴り破ってきたってことか? 自力でか?」
「当たり前じゃん。誰が助けてくれるって言うの」
「嘘だろ……」
「嘘じゃないよ」
信じられないものを見る目をする彼に、あたしはにっと笑う。
「まさかそんなことがあるわけは……絶対に一般人はあの結界を破れないはずなのに……しかも道具も使わずに蹴って出るなんで……そんなのあり得るのかよ……?」
影宮がぶつぶつ何か呟いてるけど、それより、あれだ。
「影宮。怪異倒すの、あたしにも手伝わせて」
「ダメだ。だからわざわざ結界まで張ってったのに」
とりつく島もないけれど、あたしは藁にも縋る気持ちで喰らいつく。
「ダメって言われてもあたしはやるよ。あたしね、自分で言うのもなんだけど、すっごく運動神経いいんだよ?」
「だからって」
反論も、あたしは遮る。言わせてやらないから。
「全日本柔道大会小学生の部準優勝。全日本柔道大会中学生の部優勝。全国小学生サッカー大会優勝チーム・ジェネル元所属選手。握力測定不可能。ソフトボール投げ100m。50メートル走5秒。100m走10秒。朝比奈中サッカー部エース」
ペラペラと喋るあたしに、影宮はポカンとして目を瞬く。
「これがあたし。全部、あたしだよ。それであたしは自慢がしたいんじゃなくて」
あたしは前のめりになって、影宮を視線で射抜く。心の中の想いを全部吐き出す気で叫ぶ。
「だから、あたしは手伝う! 役に立てると思う!
──お願い! あたしにもやらせてよ!!」
影宮は呆然とする。
「そんなデカい声出したら怪異が……っ、」
ガァァァァァァァ!!!
鋭い、耳をつんざくような──でも、あの着信音とはまた違う、おぞましい音が響き渡った。
同時に感じる、──ゾッとする、不快感。
固まったあたしと影宮の前にゆっくりと姿を現したのは──、
あたしたちと同じくらいの大きさで、血みたいな真っ赤な眼の、……カラス。




