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第46話「万作のいない世界」

「秀長、あんなに秀頼を頼むって言ったのに家康の奴やっぱり全然言うこと聞いてくれてにゃあがね。人間ってのは、本当に勝手なもんだでいかんわ」

あの世の入り口で、万作は秀長と並んで下界を眺めながらボヤいていた。万作がこの世を去ってわずか二年。日本は真っ二つに分かれ、関ヶ原という名の巨大な大戦さが始まろうとしている。万作という愛嬌のある嘘が消えた途端、大名たちは剥き出しの本音で牙を剥き始めたのだ。

「兄上、それが乱世というものです。…あなたという太陽が沈んだから、みんな自分の影の長さを競い始めたんですよ。しかし三成も、もう少し上手く立ち回ればいいものを……」

秀長は、生前と変わらぬ冷静さで戦況を分析している。万作が可愛がっていた子飼いの武将たちが東と西に分かれて殺し合う。その中心には、あの時涙ながらに手を握った家康が涼しい顔で座っていた。

「家康の狸オヤジ……わしの遺言を、鼻紙にして捨ててまったな。秀長、よう見てちょうよ。わしが一生懸命作った平和がたった一日でグチャグチャだがね!」

万作は、関ヶ原に立ち込める硝煙をやるせない思いで見つめていた。

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