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第45話「露と落ち 露と消えにし……」

「秀長、やっと迎えに来てくれたんだねぇ。……長い夢だったわ。尾張の村で泥まみれになっとった万作が、黄金の城で死ぬなんて誰が信じるんだわ」

慶長三年八月。万作の意識は、もはや伏見の豪華な寝所にはなかった。視界に広がるのは、若き日に秀長と駆け回った故郷の青々とした田んぼの風景だ。天下人という重すぎる役を演じきり、万作の魂はやっと豊臣秀吉という重すぎる鎧を脱ぎ捨てる時を迎えていた。

「兄上、お疲れ様でした。…私と一緒に、あの畦道を歩きましょう、ただの本物の兄弟として」

枕元に立つ秀長の幻影が優しく手を差し伸べる。万作はその手を取ろうと震える指を宙に伸ばした。

「ああ……露と落ち、露と消えにし……わしの人生なにがなんだか分からんうちに終わってまったけど、おみゃあさんと一緒だで退屈だけはせんかったわ」

万作は満足げにフッと微笑んだ。

「……秀長、待っとれよ。今、そっちへ行くがや」

その瞬間、戦国最強の影武者は、ただの万作に戻って静かに息を引き取った。

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