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第43話「幽霊の秀長」
「……秀長? おみゃあさん、そこに居るのかね。懐かしいがや、その地味な着物。わしの枕元にまた何か小言を言いに来たんかね」
伏見城の奥の薄暗い寝所。意識の混濁する万作の前に死んだはずの秀長が若き日のあの生真面目な顔のままでぼんやりと座っている。万作は、天下人としての虚飾を脱ぎ捨て、一人の兄に戻ってボヤき始めた。
「秀長、わしゃあ疲れたわ。おみゃあさんが居なくなってから、わしは嘘ばっかりついて人をたくさん殺してしもうたわ。こんなはずじゃなかったんだけど……。村の畦道で、おみゃあさんとずっと笑っとりたかったわ」
万作の涙に幽霊の秀長は苦笑いしながら答える。
「兄上、今更何をボヤいているんですか。 あなたは最後まで、この豊臣秀吉』という大芝居を演じきらなければいけない。それが、一緒に夢を見た私への供養ですよ」
「演じきるって……わし、もう足が動かんのだて。でも、おみゃあさんが見ててくれるなら、あと少しだけ頑張ってみようかね」
万作が手を伸ばすと秀長の姿は朝霧のように消えた。しかし、冷え切っていた万作の胸には、不思議と懐かしい温もりが残っていた。




