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第39話「止められぬ朝鮮出兵」

「皆の衆、海を渡るで! 唐の国まで行って、わしの名前を轟かせてやるんだわ! 秀長、見ててちょうだい。わし、日本だけじゃ満足できん大物になってまったがや!」

万作は、肥前名護屋城の波止場で水平線の向こうを指差して叫んでいた。だが、その声は空虚に響く。秀長を失い、鶴松を失い、心の穴を埋めるには、もはや異国の地を奪うという途方もない狂気しか残されていなかったのだ。農民だった頃の身の丈に合った幸せは、遥か海の波間に消えて久しい。

「戦だ、戦だがや! おみゃあさんら、わしに続け! 恩賞はいくらでも出すでよ!」

集められた大名たちは、互いに顔を見合わせ戸惑いを隠せない。冬の玄界灘は荒れ、言葉も通じぬ国への遠征。現場の苦労を知るよしもない万作は、豪華絢爛な軍船の上で、ただ独り踊るように指揮を執る。

「……でもよ。本当はわし、海なんて見たくもにゃあんだわ。秀長、おみゃあさんがおったら『兄上、寝言は寝てから言いなさい』って止めてくれとったわな……」

ふとした瞬間に漏れる本音。万作は、誰もいない夜の海に向かって届かぬ独り言を呟いた。その背中は、天下人という名の重い鎧に押し潰されそうだった。

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