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第38話「秀長無きあと…」

「秀長……聞いてちょうよ……。鶴松が……あんなに小さい鶴松がわしを置いて死んでまったんだわ……」

万作は、誰もいない部屋の隅に向かって、すがるように声をかけ続けた。そこは、かつて秀長がいつも控えめに座り、万作のボヤきを静かに聞いていた場所だった。だが、どれだけ待っても返事はない。ただ、淀殿の泣き叫ぶ声が虚しく奥御殿に響くだけだ。

弟を失い、今度は希望の光だったはずの息子まで失った。天下のすべてを手に入れたはずなのに自分の腕の中には何一つ残らない。農民に戻りたいと言っても、もう叱ってくれる弟もいない。

「わし、もう天下人なんてやめてゃあて……。わし一人だったら、こんな金ピカの城もただの大きな墓場だがね!」

万作は、狂ったように自分の髪をむしり、叫んだ。かつては、この叫びを秀長が「兄上!」と力強く止めてくれた。だが、今は誰も万作を咎めない。周りの家臣たちは、ただ怯えた目で怪物を眺めるように自分を見ているだけだ。

「……そうか。わしの願いが叶わんのは、この日本が狭すぎるからだわ。海を越えて、もっと広いところを奪えば神様もわしに新しい子をくれるかもしれんわ」

涙で濁った万作の瞳に危うい光が宿り始めた。

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