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第37話「最強の弟秀長、逝く…」
「秀長、そんなに静かにならんでちょうよ……。おみゃあさんがおらんと、わしゃあ明日から誰に怒られればええんだね。誰がわしと一緒に笑ってくれるんだね!」
大和郡山城。万作は、もう動かなくなった弟の体を揺らしながら子供のように泣き崩れていた。尾張の土にまみれていたあの頃から、二人で一つの人生を歩んできた。万作を天下人という神輿に乗せ、落ちないように支え続けてくれたのは、秀長の冷徹なまでの知恵だった。天下を欺き続けるという、この果てしない嘘の重さを黙って一緒に背負い続けてくれたのは、世界中で唯一秀長のみだった。
「兄上、あとは……お一人で……」
最期に秀長が遺した言葉が万作には呪いのように重くのしかかる。自分を秀吉という役柄に繋ぎ止めていた鎖がプツリと切れた音がした。
「秀長、おみゃあさんはずるいわ。わしをこんな高いところに一人で置いてって……一人でさっさと村へ帰らっさる……。わし、もうお芝居を続ける自信がにゃあがね……」
冷たくなった秀長の頬をさすりながら、万作は暗闇に放り出されたような恐怖に震えていた。黄金の城に万作の孤独な慟哭が虚しく響き渡った。




