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第36話「アイツだけは許せんがや」
「秀長、あのお人はいかんわ。わしがせっかく黄金の茶室を作ったのに美しくないって鼻で笑ったんだて! わしの茶室の何が気に入らんのだね!」
病床の秀長に万作は怒りと悔しさで顔を真っ赤にして訴えた。千利休、かつては万作の派手好きを面白がっていた茶人が最近は妙に冷たい。農民出身の劣等感を突くような利休の静かな否定が今の万作には刃のように突き刺さる。
「兄上、落ち着いて下さい……。 利休殿は、あなたの力を認めているからこそ、厳しく言うのです。あのお方と争ってはいけません。彼を失えば、豊臣の品格が崩れてしまいますよ」
秀長は、荒い息をつきながら必死に万作をいさめた。だが、今の万作には弟の言葉さえ、自分を馬鹿にしているように聞こえてしまう。孤独と不安が、万作の心を猜疑心で塗りつぶしていく。
「品格だの美学だの、そんなもんでお腹はいっぱいにならんがや! 何が侘び寂びだわ、ただの地味な茶碗じゃにゃあか、わしは天下人だぞ。わしが黒と言ったら、カラスも黒なんだわ???」
「……秀長。わし、あのお人の前に出ると自分がただの泥臭い農民だって、思い出してまうんだわ。それが、死ぬほど腹が立つんだがね…」




