第28話「キリシタンは、ややこしい」
「秀長、あのお人らは何を拝んどるんだね? 牛を食べちゃあいかんとか、神様の前ではみんな平等だとか……。そんなこと言われたら、わしの天下がめちゃくちゃになってまうがや!」
九州平定の帰り道、博多に滞在中の万作は、南蛮から来たキリシタン宣教師たちの教えを聞いて、これまでにない種類の未知の恐怖を感じていた。力でねじ伏せてくる武士よりも心の中に入り込んでくる宣教師たちの方が農民出身の万作にはよほど不気味に思えたのだ。
「兄上、その通りです。彼らは領地よりも民の心を奪おうとしている。 日本を南蛮の国にさせないためには今ここで、あなたが日本の神仏を守る主君として振る舞わねばならないのです」
秀長は、長崎が教会に数々の物を寄進したという報告を受け、静かにしかし断固とした口調で万作に説いた。追放令という厳しい決断も秀長にとっては豊臣の平和を守るための事務的な手続きの一つに過ぎない。
「追放って……鉄砲やお菓子をくれたのに急に追い出すなんて、わしが薄情な男だと思われんかね?」
「いいえ、あなたは異国の魔の手から国を救う英雄になるんです。ほら、筆を持って。この紙に一気に書いて下さい」
万作は、震える手で追放令の書面にサインをした。
「……秀長。わし、神様を敵に回して地獄に落ちたりせんにゃあかね?」
「大丈夫です。地獄へ行く時は、私もご一緒しますから」




