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第21話「家康の目が怖い」

「秀長、あのお方は、信長様とは別の意味でいかんわ。目がちっとも笑っとらんがや! 死んだ魚の目だて」

小牧長久手の陣中。徳川家康という男を遠目に見た万作は、本能的な恐怖で鳥肌を立てていた。信長が燃え盛る炎なら、家康は底の知れない沼。万作の陽気な天下人という化けの皮が、その静かな眼光によって剥がされそうになっていた。

「兄上、怯えを見せてはいけません。家康殿はあなたの正体を探っているんです。 あなたは、ただ圧倒的な物量と余裕を見せつければいい。戦わずしてあの男が折れるのを待つのです」

秀長は、静かな声で万作を諭し震えるその手に黄金の采配を握らせた。

「折れるって……あんな岩みたいな奴、どうやって折るんだわ! 頼むて、わしの代わりに会ってきてちょうよ!」

「そうはいきません。あなたが豊臣秀吉として、あの男の前に立たねばならないんです」

万作は、無理やり整えられた髭をさすりながら、冷や汗でぐっしょりと濡れた装束を直した。

「……秀長。わし、アイツとだけは、死ぬまで仲良くなれる気がせんわ」

その直感は、皮肉にも万作が抱いた中で最も鋭い洞察であった。

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