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第19話「秀長、故郷に錦を飾る」
「秀長、あんた地元じゃあ凄い人気者じゃにゃあか。わしが関白だってこと、みんな忘れとらんかね?」
紀州征伐の最中、万作は少しへそを曲げていた。今回の主役は、完璧な軍略で難所を平定していく秀長だ。
「私が慕われるのは、兄上が信頼して任せてくれているからです」
秀長が爽やかに笑う横で軍師の黒田官兵衛が鋭い眼光を向けてくる。万作は「……あ、あの官兵衛殿の目は、わしの悩み(夕飯の献立)まで見抜いとるようで怖いがや。秀長、あの人だけはわしの近くに寄せんようにしてちょ」と震えながら耳打ちした。
「何を言ってるんです。あの男の知略があるから勝てるんですよ。ほら、もっと堂々と胸を張って」
万作は促されるまま、不自然なほど威厳たっぷりに手を振った。
「……秀長。おみゃあさんも官兵衛殿もしっかりしすぎて、わし本当は必要にゃあ気がしてきたわ」
「そんな寂しいことを。あなたは私の最高傑作なんですから」




