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第15話「勝家は面倒くさい」
「……秀長、勝家様が酒を持ってこいだなんて言っとるがね。今から腹切る人が、なんでそんなに元気なんだね!」
北ノ庄城を包囲した万作は、本陣で頭を抱えていた。柴田勝家、信長時代からの恐ろしい先輩は死に際にあってもその威圧感で万作を圧倒していた。万作は、かつて叱られた記憶が蘇り足が震えて止まらない。
「兄上、怯えないで下さい。あの方は、滅びの美学を演じているんです。あなたはそれを涙ながらに称える情け深い勝者を演じればいい。それが武家では一番の供養なんです」
秀長は、悟りきった微笑を浮かべ、万作に最高級の酒樽を用意させた。
「勝家様ーっ! わしゃあ、本当は戦いたくなかったがや! なんでこんなことになってまったんだわー!」
万作は、秀長の指示通り号泣したふりをしながら城へ叫んだ。燃え盛る城から勝家の豪快な笑い声が響く。
「……猿よ、最後まで見苦しい奴。だが、その涙に免じて連れて行かぬ!お前に預けるわ!」
「……秀長。お勝様、死ぬ間際まで怖かったがや。わし、あんな風には死ねんわ……」
万作は、先輩の壮絶な最期に、天下を取ることの重責を改めて思い知らされるのだった。




