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第12話「お市の方、美しすぎて絶句」

「……秀長、あの方は本当に人間かね? 天女様が間違えて降ってきたんじゃにゃあか?」

清須会議の合間、信長の妹お市の方を遠目に見た万作は、持っていた湯呑を落としたことにも気づかず呆然としていた。農民時代、村一番の美人と騒がれたおヨネさんとは次元が違う。万作の天下人の演技は、あまりの美貌を前にして脆くも崩れ去った。

「兄上、口が開いたままですよ。鼻の下も伸びすぎています。……今のあなたは兄信長公を亡くした彼女を励ます頼れる男でなければならないんです」

秀長は、冷徹な微笑を浮かべ万作の脇腹を強くこづいた。

「い、痛てて! 分かっとるがね……。お市様、この度は…その…大変だったがや。わしが……わしが全力でお守りするもんで……」

お市の方が冷ややかな、しかし凛とした瞳で万作を見つめる。

「……猿。相変わらず薄汚い顔をしておるな」

その罵倒さえ万作には、極上の音楽に聞こえた。

「……秀長、わし、あの方に叱られるなら天下なんていらん気がしてきたわ」

「馬鹿なことを言わないでください。兄上のその下心を私は織田家への忠誠として宣伝しなきゃならないんですから」

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