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第11話「清須会議の裏カンペ」
「秀長!あんな怖いおっさま達に囲まれて、わし一人で喋れるわけにゃあがや!」
清須城の控室で万作は半泣きで秀長の袖を引っ張っていた。対峙するのは、織田家の宿老柴田勝家。万作の嘘を見抜こうと、虎のような目で睨みを利かせている。
「まあまあ兄上、落ち着いて。あなたの座る席のすぐ後ろ、あの屏風の隙間から私がすべてカンペを出します。 あなたはそれを読み上げるだけで織田家を牛耳る稀代の策士に見えるはずです」
秀長は、自信にあふれた完璧な微笑みを崩さない。
会議が始まると万作は冷や汗を拭いながら屏風の裏からチラリと見える秀長の指示に目を凝らした。
『強気に三法師様を担げ』
「ええい、勝家殿! 跡継ぎは信忠様の遺児、三法師様に決まっとるがね! 文句があるならわしが相手だて!」
秀長の書いた台詞を絶叫する万作。その芝居がかった熱量に圧倒されて並み居る宿老たちは言葉を失う。
「……次はなんて書いてあるんだね。字が小さくて全く見えんがや!」
万作が目を細めて屏風を凝視する姿は、勝家たちの目には敵を値踏みする冷徹な眼光に映っていた。




