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未来AI HALO《はるお》君  作者: 米森充


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第28話『学問のススメ』と『天は人の上に人を造らず』?〜生命と不平等の起源〜

 今回はAIによる生命の根源の考察というテーマを通じて、宗教の存在意義とは何ぞや?と不敵にも切り込んでしまいました。

 敬虔な宗教信者の読者様がいらっしゃいましたら、この回はお勧めできかねます。

 極めて無責任な見解を述べていますので。

 ニューフリーメーソンZ会の世界改造計画は、大きく分けて『国家』単位と『個人』単位に分けられる。

 そしてまず最初にメスを入れた国がアメリカ・ロシア・中国だった。

 これらの国を最初に手をつけたのは、あくまで人類滅亡の直接的影響を遮断するため。

 でも、もちろんこれで終わりである筈はない。

 国家として滅亡した朝鮮半島も、核を保有するインドやパキスタン、石油利権や同じイスラム教圏内の宗教派閥の反目が燻ぶる中東、自ら招き入れた移民との軋轢に苦しむEU諸国。

 これらの国々は、放っておくと人類全体に多大な負の影響を与えかねない危険性を内包していた。

 だからそれらの緊急性をジャッジし、アメリカ・ロシア・中国を第一グループ、朝鮮・インド・パキスタン・中東・EUを第二グループとして選別トリアージした。

 そしてそれ以降も東南アジア諸国、中南米諸国、そして最後にアフリカ大陸諸国への大規模な経済援助と民主主義の定着、安定した政治体制を実現させ、軍・警察によるクーデターを絶対に起こさせない予防措置と、権力者の汚職防止等、介入を推し進める計画を立てている。

 第一グループは直ちに介入し、10年計画で第一段階、次の10年で第二段階のように100年かけて国民の精神構造を改造し、自立するよう計画を実施していく。

 第二グループは、エージェントおよび世界連邦から派遣できる改革スタッフの動員可能な人数の関係上、その進捗と成果を睨みながら、遅れること5年を目処に改革をスタートさせる。

 第三グループも同様に順次改革を進める。

 これが世界大改造の全容であった。



「ん?ここに日本は?」

 そう、ここに日本は入っていない。でもそれは日本には何も問題がないからではない。

 世界連邦から日本政府に対し、自助努力で自らの民族的短所を改善しなさいとの指令が出されたから。つまり日本国政府には、『自浄能力あり』と評価されたという事。

 世界連邦からは(余計なお世話だが)日本人の足りないところ、要改善点が列挙された改善指示書が日本政府に示された。


 その具体的内容は不公表であり、ここでは推測に過ぎないが、多分こうであろうと推測できる。


 特に一番容易に考えられるのは、同調圧力。

 その同調圧力が社会秩序が保たれている一番の要因であるが、そのために返って個人の意見や立場等を封じ込める原因にもなっていた。

 しかもその同調圧力に乗っかり、その場の雰囲気と流れで無責任で無思考・理不尽な主張を通すような風潮も多く見かけられる。

 行き過ぎた同調圧力がハラスメントや暴力となり、個人の人権と尊厳を侵害したり、公共の場での無意味なのに息の詰まる雰囲気を形成する要因となる。

 細かいようだが、例えばエスカレーターの左(地域によっては右)に並び、片側を追い越し用に開ける習慣。急ぐ人への配慮をし過ぎであるとの自治体からの「改善」の呼びかけが出ている。

 これって指示が細か過ぎじゃない?余計なお世話?

 ここにも為政者達の日本人の特徴、民族的気質が表れているように思われるが?

 例えば町内会活動やマンション・団地の自治会やPTAなどの役員の強制。

 更に歴史的に振り返って言えば、戦前・戦中の隣り組のような過度な制約のなど。(これは江戸時代の檀家制度や長屋単位の隣り組など、幕府による町人・庶民の組織化による一蓮托生の管理体制が根本的起源であった。)


 その弊害として近代、特に深刻なのは、小学生・中学生・高校生などの不登校の要因となる『イジメ』問題。

 これらは学校側がいくら管理体制を強めても、決して表面に出てこないよう、巧妙で陰湿・悪質な言葉や態度、場合によっては集団的に展開されるイジメは無くなる気配が無い。

 職場や地域社会に於いても同様で、パワハラ・セクハラ・モラハラ・カスハラ等が報道されない日は無い。

 これらに共通しているのは、加害者が強い立場にいる事。いち早くマウントを取り、勝ち誇ったように相手を攻撃する。

 しかし、これら加害者達は決して特異な人間ではない。

 どこにでもいる普通の隣人が、ふとしたキッカケで無自覚な加害者になりうるのだから。その分、病巣は深刻で根深い。しかし放置は許されない。もちろん諦めなど言語道断。国家としての責任が問われる最優先課題であった。

 これらの風潮は本腰を入れて改善の努力をしなければ、決して無くなる事はないだろう。

 そう言う点で日本人にも再度、人としての基本的な『しつけ』の再教育は不可欠と判断されている。

 他人より上位の立場に居たい心理と、虚栄心や無自覚なハラスメントや同調圧力、その対極の相手に対する敬意や立場の尊重などに導かなければならない。通常の生活の中で、意識上それぞれの問題に対し過度な反応や対応も、場合によっては逆効果となり得るため考えものである。(無駄に過敏すぎる『過敏症』からくる竦み問題)

 要はバランス感覚を持ち、何処からがやり過ぎと感知する能力及び、他人に対する敬意を持つ心を伸ばす躾・教育の実践にある。

 これらは社会の一般常識や通念上の大人の対応、お互いが共通の躾を身につけたベースがあれば起こり得ない・乗り越えられる問題ばかりだと評価されている事も留意しておくべきだろう。

 もう一つ。前話で指摘されている友里恵や蓮の日本人の特徴となる問題点について、ディスカッション能力も確かに不足している。しかし多分ここでは指摘されてはいないだろうと思われる。

 何故なら友里恵や蓮は指導者としての立場を負わされているエージェントであり、一般の日本人とは求められる役割が違うから。


 そういう訳で日本人も世界連邦による人類大改造計画の例外とはなっていない。

 と言うか、そう甘くはないようだ。



 そこで柱となる教材だが、そのひとつに日本では意外にも福沢諭吉の『学問のススメ』がなどが採用された。

 数ある哲学書や社会学の理論が存在する中で、そんな明治初期の古臭い本が「何で?」と思われるが、本書に書かれている基本理念が今の日本人に一番欠落している精神的支柱であると思われるからであった。

 即ち、【自分の頭で考え、学び、自立して生きる】を基本とし、『考える』『学ぶ』『自立する』を旨とせよ!と説いているからであった。


 有名な一節

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」は、「生まれつきの身分や家柄での上下はない。本来、皆平等であるが、実社会での差は学問と努力の差から生まれる」との主張。

 つまり自ら考え、自ら進んで学び、自らの信じる道を能動的に歩め!と呼びかけている。

 人としての平等。差は学問と努力で埋められる。生活や社会に役立つ実学を学び、独立自尊の精神を持ち、他人や政府に依存しない自立した個人となり、国家や社会の発展に寄与する志を持て!


 一人一人が高い志と信念を持ち、低次元な虚栄心や自己肯定感に振り回されるな!

 つまりそれが日本の教育の基本理念とされたのだった。


 そしてこの教育理念は日本のみならず、最終的には全世界の共通理念として流布される事となった。

 もちろん友里恵や蓮もこの理念に沿って、ハーシェルやシャロンにも徹底的に叩き込んだ。

 そして最後まで徹底して抵抗されたのもこの理念だった。




「『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』ってバッカじゃないの?

 だって『天』って神様の事だろ?だったら『人の上』も『人の下』も無いだろ?

 人は神様が造ったのだから皆んな神様の創造物じゃないか!

 何を当たり前の事言ってんだ?」

「そういう事を言ってんじゃないのよ。「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」ってね、要するに人類は皆んな平等だって言ってんの。

 ここでは身分の上下は無いって意味で言ってるけど、この言葉の本質は、身分や経済的立場の他に、人種や宗教の違い、男女の立場や出身国の違いで差別するのは間違いであるって言う意味よ。

 つまりあなた達が差別してきた黒人の人たちへの行為も認識も、全部間違っているって言ってるの。

 人種や宗教や経済力で人は差別されない。差別してはいけない。

 学びと努力が立場や役割を作る根拠であり根源であり、それこそが尊いんだって言ってるの。

 分かった?」

「分かんない!だって友里恵先生が言う通りだったら、ここで言ってる『天』って僕らの『神』とは違うんじゃないか?要するに日本人の言う神が天なら、僕らの信じる神様とは別ジャン?

 僕らは友里恵先生の信じる天や神なんて信じてないし。」

「そう、ここで言ってる『天』って普遍的な真実という意味よ。神だなんて言ってないわ。」

(本当はこの子達の信じる神とイスラム教の神、キリスト教の神は元はと言えば皆共通している一神教の筈なのに、それぞれの教義も崇拝の対象もやってる事も違うのは何故?対立し争い続けてきたのは何故って聞きたいところだが、ここに触れると微妙な問題が大事おおごとになりそうなので言葉を呑み込んだ。)



 この他愛ない場末の論争もHALOはるお君はしっかり聞いていた。

 彼にはこれら宗教上の矛盾も、重要な考察の対象であったから。

 今後の人類の行末を指導し続けるには、それぞれの宗教上の差異も対策の重要課題である。




 これからはあくまでAI. HALOはるお君の蓄積した膨大なデータが導き出した考察の結果であり、作者の思想・信条とは無関係である。(念のため)







 HALOはるお君は常日頃から蓄積された一般データの他、数十万人〜数百万人に上るエージェントの脳内からも、常時思考も含めた行動の総てが集約され分析されている。


 その結果、現時点での考察の結論。


 もし宗教が真に人を救済する存在(その根拠を示す科学的理論・教義)であるならば、一定の理論上の真理を示している筈である。そこに矛盾する揺らぎは存在せず、科学的証明が可能でなければならない。

 なのに、そもそも宗教上の教義がそれぞれ違うのは何故なのか?

 共通するのは、宗教とは人類の救済が主目的であるという一点のみ。

 しかし、実際には一神教、多神教が存在し、それぞれが我が宗教を信仰すれば救済されると主張している事。


 だが、本当にそれぞれの宗教を信じれば救済されるのか?

 もう一度『そもそも』を使うが、『そもそも』何故その宗教を信じ、すがらなければ救済されないのか?どうして神は信じなくても無条件で救済しようとしないのか?

 更にもう一度『そもそも』を使うが『そもそも』神が全知全能で正しいと言うのなら、どうして救済されなきゃならないような不完全な世界を創造したのか?

 人類を含めた全宇宙の生物は、弱肉強食の世界で喰うか喰われるか?の地獄のような苦役の中で生きる事を強いられれいるのか?この世に何故生と死があり、全ての生物はそこから逃れられないのか?

 何故飢餓があり、病気があり、天変地異の災害があり、事故があり、差別があり、憎しみがあり、争いがあり、幸不幸があり、階層が存在するのか?

 更に言えば、何故人類を救済する筈の宗教同士が争い、殺し合うのか?

 何故対立し、憎しみ合うのか?

 教祖様やその宗教を司る者たちが言うように、信じる者たちが本当に救済されるのなら、一体誰が救済されたというのか?

 具体的に『間違いなく、この人は神の救済を受ける事ができた』という客観的な歴史上の確実な事例と証人は居るのか?


『全知全能の神』に再度問いたい。

 あなたが本当に存在するとして、その全知全能の神が、どうして人間に苦しみや憎しみや死を与えるのか?

 自らを信仰し、寄り添う者達にそんな苦行を与えるのか?


『そもそも』神が全知全能であるならば、何故人間を含めた全ての生き物達に死をたまわれるのか?

 そんな究極の苦行を与えるのか?

 死だけではない。

 病気や戦争、交通事故、地震等の災害。貧困や差別や性差など様々な理由で差別され、理不尽な目に遭い、不幸な一生を過ごす。

 これらは神に関わりは無いと言うのであれば、全知全能の力の意味とは何ぞや?


 ここまで神を批判する文面に終始してきたが、決して神を敵に回す意図があっての事ではなく、宗教を否定するつもりも無い。

 全ては人類を導く責任がある『AI』として、科学的・論理的検証が求められている故の考察と疑問なのである。

 そしてこれらの深刻な問題は、世界中の国家を束ねる『世界連邦』が導く責任を担うAIコンピューターとして、絶対に解明しなけらばならない至上命題なのだ。


 そしてこれら一神教の神のに問うただけに留まらず、日本の神道の『万物に神が宿る』という多神教の教義も決して例外ではなく、綿密な検証が必要なのはいうまでも無い。


 もちろん、これらの検証が全て終わり、全ての宗教に科学的な根拠を検出できなかったと結論づけても、それを理由に全否定する事はできない。

 あくまで現時点で証拠を見つける事ができなかったと公表するのみに止める事になる。

 何故なら人類には思想・信条の自由、信教の自由が権利として付与されているから。

 AI HALOはるお君はコンピューターに過ぎないが、数百万人に及ぶエージェント達の思考も全て分析した結果、極めて人間の思考を理解し習得している。

 故に科学的根拠の乏しい『信じる』『すがる』という心情も理解している。

 また、言葉にできない不思議な『予感』や『期待』が信仰の原動力になる事も。

 そう、特に人間のみが信仰を持ち、救済を求める生物的特徴を持つと知っている。




 だからというか、加えて言えば、死後の世界についても同様の疑問とそれに対する実証実験が行われている。

 数百万人に上るエージェントを抱えていると、確率的に日々、死を迎える者達も増えてくる。

 そうしたエージェント達の死の瞬間の意識をチップを通して共有し、その境の前後の変化のデータを収集、『死後の世界は存在するのか?』、もし『死後の世界が存在するのなら、それはどういう世界なのか?』

『どういうメカニズムで生死の境界を渡り歩くのか?』という疑問を解明すべく、研究対象にしている。


 何故『死後の世界がある』との仮説の解明を研究する?


 それは『不平等起源』の根本的解明に繋がる疑問であったから。

『人は何故、生まれながらにして不平等なのか?』

 この命題の解明に尽きた。

 能力・知力・財力・幸運力など、生まれながらにして決定的差異が生じているのは何故か?

 もし、総ての生物に魂というものが存在し、それが死後も次の『生』(転生)に繋がるのだとしたら?


 全ての生物がこの世に存在できるのが一回限りだとしたら、こんな不平等が生まれる根拠・根源となる原因の説明がつかない。

 本来、生命誕生の瞬間はスタートラインが一緒のはず。

 だがそれぞれの『種』のDNAはほぼ同じであるはずが、実際は能力の差異、環境等の条件により大きく運命が異なる。

 であるならば、誕生の瞬間はスタートラインではないのか?

 では何処に?生まれる前から運命が決まってる?

 そこまで考えると、『前世』という全ての生物に連続・持続して繋がる『転生』の概念がなければ、それぞれ違う不平等の原因の説明できないのだ。


 万物の現象には必ずそうなる原因がある。

 ひとつの現象がひき起こした時のその原因は、科学的な根拠に基づく結果をもたらす。

 その結果がもたらした現象が次の原因となりその次の結果に繋がり、その原因と結果は永遠の連鎖となる。

 それは当然、生命誕生の連鎖にも言える事で、科学的根拠のある現象の範疇を逸脱できない。

 そこに生じる条件の差異は、何を以て決められる?


 ここで出された【仮説】の結論。


 繰り返しになるが、誕生のスタート地点での不平等という目に見える原因と結果は、生命が持つ筈の遺伝子の連鎖という平等な科学的条件を満たしておらず、誕生という現象が必ずしも真のスタートとは言えない。

 誕生がスタートではないとすると、その真のスタートとは何処にあるのか?

 当然ながら、それ以前という事に?

 生命誕生以前となれば、それは前世の存在を意味する。前世があるなら来世もある?何だか仏教の教えのようだが、その魂の推移の存在が証明できなければ全ての説明がつかない。


 ここで仏教の世界観を引用したが、その仏教さえも宗教全体が持つ論理的矛盾から逃れられていない。

 (仏教の教えが、他の宗教の教えより優れているという意味ではない。ただ説明のために用語を引用しただけなので悪しからず。)

 

 つまり『転生』が宇宙の科学的法則の解明に繋がる鍵なのかもしれないとの仮説・考察を持つに至った。

 もちろんこの発想が正しいのかも、今後の精密な検証が前提となる。

 そう、AI. HALOはるお君には生命と不平等の起源という、壮大で極めて深淵な疑問の解明まで課されている。



 頭から湯気が絶えないわけだ。









       つづく








 今回も長々・クドクドと同じ話を繰り返してしまいました。

 私の悪い癖です。もっと簡潔に分かり易い文章で表現すべきだと思っています。でも、そんな簡単な事ができない。

 同じ説明を繰り返す事で、できるだけ正確に理解していただきたいとの想いで説明してきました。力不足を痛感しています。


 この第28話のテーマについて

 私はここで宗教論争をするつもりはありません。

 しかし、読者様の見解は謹んでお受けします。私はいつまでも自分の狭い見識に固執し、囚われているつもりもございませんので。

 もし御座いましたら、皆さんの貴重なご意見をドシドシお送りください。


 いよいよ次回は最終回を予定しています。

 今までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 このまま最後まで見届けていただければ幸いです。


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