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未来AI HALO《はるお》君  作者: 米森充


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23/24

第23話『少年ハッカー』

『フェーズ 2』を遂行している間も、中露の抵抗勢力の暗躍が散発していた。


『ニューフリーメーソンZ会』が友里恵や蓮たちをエージェントとして養成している間も、同時進行として全世界からハッキングのエキスパートの発掘に奔走している。

 特に少年期の天才と呼ばれるハッカーを。

 彼らは大人になる前にその能力と才能を開花させ、活躍の場を欲していた。

 そしてその脅威の能力をアメリカ、ロシア、中国も欲している。

 いわば争奪戦状態だったのである。

 その結果、資金力に一番長けていたアメリカがこの争奪戦の勝者となり、中露の監視網をハッキングし、『ニューフリーメーソンZ会』から派遣された工作隊がクーデターを成功させ、現在の結果を生んでいる。


 だが、これらの天才少年たちには『HALOはるお君』と繋がるチップを埋め込んでいない。

 なぜなら彼らにはまだ[ものの善悪]を判断する能力を備えていないと評価されていたから。

 友里恵や連たちがエージェントとしてエントリーされたのは、厳格な基準をクリアしていると判定され、チップを通し『HALOはるお君』とのアクセスを許されている。

 それに対し少年たちのハッキングは、厳密に言うと犯罪である。

 ただ、国家(実質『ニューフリーメーソンZ会』の意向)の利益になるから彼らはその利用価値を見出され、庇護を受け国家の要請に応じ堂々と犯罪に手を染めている。

 だが、必ずしもその国家の役に立つからエージェントとしての資格もあるとは認められない。

 悲しいかな彼らは利用されるだけ。使い捨ての消耗品と同じ立場に過ぎないのだ。


 同様の立場の少年たちは、中国やロシアにも存在した。数でアメリカの遅れをとっていただけである。

 それら中露の天才少年たちは、もちろん中露の政府に囲われ、アメリカと同様の働きを求められている。

 彼らは『ニューフリーメーソンZ会』が放つ工作隊によるクーデターにただ手をこまねいていた訳ではない。

 彼らもまた全力で欧米日等にハッキングし、様々な犯罪に手を染め破壊工作、分断工作等を仕掛けてきた。

 ただ、その量、質に於いて圧倒的な差があったのは否めない。

 特に対日工作にスポットを当ててみると彼らがやったことは、日本政府部内の機密入手、大手企業への資金搾取、大手メディアやSNSを通じた世論誘導などである。だが、それらの工作で政府を転覆させるほどの効果があったか?と言うと、残念ながらその成果は微々たるものでしかなかった。

 特に日本のような混沌・雑多、様々な思想やライフスタイル、無気力・無関心層やファンタジー層がアニメのように雑然と存在する纏まりのない国家・国民には、破壊工作や分断工作など日常の三面記事に等しい、とるに足らない現象に過ぎない。

 つまりどんな卑劣で強力な工作も『のれんに腕押し』にしかならないのだから。


 例えば記憶に新しいア◯ヒビールハッキング事件。


 あのア◯ヒビールがハッキングされた!

 自社ビールが長期間出荷できない!

 店舗に陳列できるビールが品薄になった。

 他のビールメーカーが儲かった!


 日本国民にとっての影響はその程度なのだ。(もちろん、被害を受けた会社にとっては死活問題であり、決して許されるべきではない憎むべき【犯罪】なのは当然であるが。)


 それに引き換え『ニューフリーメーソンZ会』が集めた少年メンバーは、大いなる活躍をした。ただ単に人数を多く集められただけではない。ずば抜けた天才が多かっただけでもない。


 ターゲットの中露のような極めて張り詰めた高度な独裁国家は、体制の結束が締め付けられればられる程、致命的脆弱なバグを抱え易い。

 例えば『情報統制』。この情報統制が厳しければ厳しいほどその綻びを突けば崩壊に繋がるヒビが入り易いのだ。


 アメリカハッカー少年たちは、そこを絶妙に突いた。


 例えば中露独自のSMS。


 言論統制が厳格な彼らの【百度バイドゥ(baidu)】【 微博ウェイボー(Weibo)】(中国) や、【VKontakteフコンタクテ(VK)】【Odnoklassnikiオドノクラースニキ】(ロシア)も、彼らアメリカハッカー少年たちの手にかかれば、ハッキングによるセキュリティ突破など造作のない事。

 偽情報の大量発信攻撃による世論誘導と混乱は、国家・国民共々大いに動揺を引き起こさせた。

 そこに決定打となる中国中央電視台(CCTV)、CCTVの国際チャンネル、新聞社は人民日報社、通信社は新華社等、党機関、国営メディアを中心に光明日報社、中国日報社、経済日報社、ロシアは【Первый канал(第一チャンネル)】【Россия 1(ロシア1)】。

 新聞社・通信社は【Известия《イズベスチヤ》】紙、【Новое время《ノーヴォエ・ヴレーミャ》紙、【ТАСС《タス》通信社】、【РИА Новости《リア・ノーヴォスチ》(ロシア情報通信社)】等、各主要メディアを軒並みハッキング、同一内容の偽情報を大量に配信した。


 ここにきて中露両国は収拾がつかない大混乱が生じ、次の作戦段階である反国内勢力の協力によるクーデター成功に繋がった。

 どんなに盤石な政権基盤をもってしても、必ずと言っていいほど脆弱性は無くせない。

 そして抑圧が強いほど国民の離反も早く大きい。

 権力者の生活は贅を極め、反対に国民は困窮を極めているのに自らの無能な政治の失敗は顧みない。

 国民の不平不満の蓋をして反発し体制を批判する反体制活動家は次々に逮捕・処刑。プータンや習遠平を風刺したり、笑いものにしただけで驚くほど大人気おとなげない狭量さから、地の果てまで追いかけ処刑する。

 そんな独裁者を誰が尊敬する?崇拝する?

 抑圧された人々の心の底で彼らは蔑まれ、嫌われる。

 国の至る所で見られる彼らを称えるポスターや巨大な肖像は、一般国民にとって間抜けで醜い裸の王様としか見られない。

 更に端的に見られる現象として、軍や治安当局の支えが必要な側近の部署ほど粛清の狂気に怯え、忠誠心が希薄になり、人心が離れていく。例えば国防大臣とか、有能な軍隊のトップの失脚・粛清とか。それらを目撃した部下達はどう思う?

 バカでも分かるだろう。

 でも独裁政権では、そんな基本的な組織の人心掌握術さえ消滅する。その他の閣僚や財務・経済界の有力者たちも粛清され、独裁者の次に連なるNO2、NO3の側近が粛清され消滅すると、実質的な事務方の中間権力構造の空洞化が始まり、政府組織が硬直する。

 誰もが『明日は我が身』との粛清の恐怖から猜疑心に囚われ、思考が停止し独裁権力者の一挙手一頭足だけを注視するようになる。

 それ故にクレムリンも中南海もただの木偶の坊と成り下がったのだ。


 だからその隙に付け込んだ強力な作戦と言えた。

 そんな訳で驚く程スンナリ作戦は成功し、制圧できた。

 ただ中国方面の作戦に於いては、制圧直前の人民解放軍・東部戦区の反撃による暴挙・暴走の核ミサイル発射を止められなかったのは痛恨の極みだった。だがそれも日本に新規実戦配備されたレールガン、新開発電磁パルスマイクロ波(HPM)、及び高出力レーザー砲などの防空体制に阻まれ、実害を被る事は無かったのが、不幸中の幸いではあった。


 これらはHALOはるお君や、エージェントたちの膨大なデータ蓄積による未来予知の判断が下した緻密な計算の結果、その総合力で実行された史上最大の作戦であった。




 ここまでは・・・・。



 でもどれだけ精緻な計算の上で実行された計画も、想定外なエラーが出てくる。


 それが中露両地域で散発する抵抗勢力のテロだった。

 中国やロシアにも、残存少年ハッカーたちを抱えた反抗地下組織が暗躍する余地を残してしまっていた。


 もちろん、そんなパルチザン狩りも、徹底して治安組織が取り組んでいてはいる。


 解散し、新国連に新組織として編入された(旧)CIAの精鋭部隊やMI-6、日本の自衛隊内部組織(別班)から派遣された人員等、西側の諜報機関から多くの工作員が新国連内部機関組織『UNCOPアンコップ』として中露統治組織の内調を担当している。


 彼らはHALOはるお君のデータベースの圧倒的情報源をフル活用し、パルチザンの全容は元より、拠点、行動パターンを即座に予測、次々に制圧していった。


 そしてハッカー少年たちを確保、保護した。


 彼ら少年たちを使い捨てにしてはいけない。


 世界中から没収した核施設とハッカー少年たちは、人類の負の遺産と見做され、厳重に管理された。

 でも核施設はともかく、少年たちには人権がある。

 一般中露国民以上に人間教育・道徳教育訓練が施された。

 彼らの犯した罪は彼らの罪であり、同時に国家の罪であるから。 しかもそれだけではない。現代のイニシャチブを握る鍵は、いち早く正確な情報を得る事にある。だからハッキングはゲームチェンジャーとなりうるのだ。

 つまり、ハッカーの能力を持つ彼らが、その能力を行使する可能性(チャンス)がある限り、世界連邦がせっかく恒久平和を手にしても形勢逆転の可能性を否めない。



 だから国際連邦は『ニューフリーメーソンZ会』を通じてエージェントの派遣を求めてきた。


 ドイツ・ハンブルクと日本・東京に集められた中露、アメリカのハッカー少年の集団の厚生施設への教官として。


 そして意外な事に、その教官メンバーたちが蓮や友里恵たちであった。ウソ!!!


 何で彼ら???


 だって彼らって人類で最も先生に向かない人間たちだと思うが?

 これってHALOはるお君のバグによる人選ミスでしょ!!


 (失礼ね!)By友里恵and HALOはるお



 アーシャ・パテル、カミラ・ジェリンスキ、リンダ・フォード、マルシア・バルバローザたち女性陣と、劉太源、アレクセイ・カバロフ、ペーター・シュミット、ビシャイ・アブラヒムたち男性陣ももちろんセットとして蓮と友里恵についてきた。

(グリコのオマケみたいに言わないで!)


 彼ら一行は最初の一年をハンブルグの厚生施設の学校で、次の一年を東京校で教鞭を執ることになる。

 その次は別のエージェントグループに託され、数年に渡り徹底的に倫理教育が施される。


 だから初年度と次年度の躾が成否の鍵を握る。責任重大な任務を背負っていたのが彼らである。


 なのに・・・・。


「蓮、あなたが先生って悪い冗談よね!」

()()()()()()()言われたくない!」

「そうよ!友里恵!蓮の言う通りよ!」

「shut upシャラップ!!アーシャ!あなたも同じ教師欠格者じゃない!」

「みんな同じ穴のムジナよ!」

「同じ穴のムジナ?日本語の使い方を間違っているわ、カミラ。」

「そうよ、カミラ、こういう時にはね、一蓮托生って言うのよ。」

「マルシア、それも違うぞ。一心同体だろ?勉強不足だなぁ、なぁ蓮。」

「君たち!皆んなそんなで天才少年たちの先生が務まるのか?こんなときにはね、『似た者同士』って言うんだよ。」と蓮。

「俺は蓮なんかと似ても似つかないぞ!こんなイケメン捕まえて似てるって言うな!」

「ビシャイ!なんて失敬な奴!!僕の方が断然イケてるだろ!ドサクサに紛れて無駄で無意味なマウントをとるな!」膨れっ面の蓮。

「まぁまぁ、皆んな。やっぱり似た者同士で一蓮托生で同じ穴のムジナだな。仕方ない、俺が皆んなを正しく導いてあげるよ。」

「劉太原、何でお前が上から目線だよ!お前が一番人として教師としてどうかと思うぞ!」

「アレクセイ!うるさいゾ!!同じ穴のムジナのくせに!!」

「ドゥドゥ、劉!熱くならないで、抑えて抑えて。」とペーター。



 ここで恒例HALOはるお君の天の声

「君たち!相変わらず低次元な会話ですか。ヤッパリ君たちには教師は無理だったかな?私の人選ミス?もしもそうなら私にとっても初めての汚点になってしまいますね。」

(初めてじゃないでしょ!いつもじゃない?)と友里恵は心で思ったが、直ぐに『しまった』と思った。だってHALOはるお君は友里恵の心も筒抜けで読めるから。

「オッホン!友里恵さん。まぁ、いいわ。大いに不安は残るけど、ハッカー少年たちの再教育は国際連邦から受託した最重要課題だから、あなたたちの責任は重大です。

 あなたたちの再教育が不十分のまま彼らを世間に放り出したら、

世界は中露米クーデター前の元の木阿弥になる危険性があります。

 だから絶対に少年たちをおざなりにしたり、放置してはいけないです。

 彼らに必要なのは、新たな知識の習得ではありません。

 彼らが持つべきは、

 人としての善悪の判断と、慈しみの心と他人への敬意です。

 個が持つべき意義と責任、全体への謙譲と帰属意識の尊重です。


 それらをあなた達が彼らに教えるのです。


 あなた達の全人格と威信と尊厳をかけて。


 覚悟を決めてください。


 いいですか?






 ・・・・・「良いわけ無いじゃん!」(一同の心の声)






         つづく








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