第22話『世界連邦の活動背景と理念』
ここでフリーメーソンZ会が新国連を動かし、推し進めた改革のあらましとその意義を改めて説明したい。
しつこいほど幾度も重複するが、(この物語上の)人類史にとってそれくらい重要な意味を内包しているので、その意図を汲んでいただく必要があるから。
中国民衆の意識改革
とりわけ中国にはキツイお灸を据えなければならない。
その理由は過去からの行状にある。先進国の援助・技術供与を湯水の如く受けておいて、自立できる様になったら手のひら返しをする。特に日本に対し。
彼の国はいい気になってやり過ぎた。
力を持った途端、豹変、その本性を現し、今まで中国国内でやってきた国民に対する弾圧等の犯罪行為を、その範囲を拡大し、全世界に向け拡散した。他国・他地域の共産主義革命勢力支援を名目に武力による侵略を推し進め、他方、一帯一路という甘い餌をちらつかせ、債務の罠で周辺諸国を隷属化する劇薬を以て。
それらの被害は世界中に及ぶ。
そしてとうとう人類は気づいた。
あそこは私たちにとって危険な国であると。何とかしなくてはならない。
それが中国本国を除く、全人類の総意であった。
新国連は【AUKUSオーカス】(アメリカ・イギリス・オーストラリアの3カ国安全保障枠組が編成した特殊部隊)や、日欧共同の統治組織【 UNFORアンフォー】が送った部隊を派遣し、中国政府を制圧。強制的に中国共産党を解党し、人民解放軍の武装解除と解体、彼らから全ての軍務・警察権を解除させる。
その入れ替わりに、五分割した中国国内全地域の治安は、世界連邦から派遣する混成治安組織がそれぞれ担当し、警察として機能させる。
全ての一般民衆を対象に、儒教・道教等の古代中国に伝わり文革以降絶滅・途絶していた道義の教育を中心に据える。
特に他人を押しのけ、我が身の利ばかりを追及する風潮を厳に慎ませ、競争よりチームワークを大切にした社会運動を国全体に推進させる。
また、それらに特化した道徳授業の強化。
日常生活に共生と規範、他者への思いやりを意識づけさせる。
誰も見ていなくとも、天は見ている、即ち『天網恢々疎にして漏らさず』の戒めを普及させ、徹底的に意識の中に叩き込む。
卑怯な行為、犯罪、詭弁を使った自己を正当化し、開き直る態度を恥ずかしい事と自覚させ、他人に迷惑をかけない・貢献と正直を旨とする教育、社会規範を浸透・徹底させる。
また多くの者達によくみられる特徴として、ちょっとした事ですぐ感情を抑えきれなくなる『火病』を抑える目的に、カウンセリングと食・薬材をなるべく多く摂る生活習慣として浸透させる。
穏やかな性格の人間は、争いを好まない傾向があるから。
国家指導の最終目標
住民トラブルと犯罪率を10分の1以下に減らす。
最低限、国際標準の道徳観念をもてなければ、国際社会での平和共存・共生はできない。
これまでのように当たり前の様にエゴイズムな論法でのゴリ押しは、国際社会では通用しないと分からせる。
他者を尊重する意識への変革が、今後の生存意義を左右する。
その延長線上の最終目標として世界制覇の野望を打ち砕き、平和国家を標榜させる。
正義
中露の改革。
とりわけ新国連が進める中国民衆に対する意識改革は、人間の人格と尊厳に関わる重大な干渉である。それは新国連も重々自覚している。
しかし、フェーズ 2の決行がなければ、いずれ全人類は彼らの愚かな欲とプライドによって滅亡の道に引き摺り込まれただろう。
だからそれを未然に防ぐ私たちの行動は善であり正義である。
それって本当に善?
本当に正義?
例えばこれらの行動により、その後の人類が平和に、幸福に暮らせるようになったとする。
それは人類の幸福なのかもしれない。
そしてそれを『絶対的正義』と定義したとする。
でも、だとしたら、それって【人間の幸福は人間に都合の良い世界、人間のみが栄える世界】とは言えないか?
だがこの地球にはそんな人類以外にも多種多様な生物が存在している。
人間を含め、全ての生物はこの世に生まれた瞬間、必ずいつか死ぬ運命を背負わされている。
だが全ての生物は生きている以上、死にたくないと言う本能を持たされる。
何故なら、次の生命の継承を果たさなければ、その種は絶滅してしまうから。
この世に生まれ子孫を残さなければ、その種としての存在意義を成さない。
だから生まれた瞬間から自らの種を残すまで、必死で生き延びようとする。それが生命の連鎖の宿命であり、負わされた『この世に産まれて生きる者の責任』なのだ。
だがしかし、生き物がその生命を維持し続けるためには、生命維持のエネルギーが必要となる。
それは人間も他の生き物も避けきれない、必ず通る生きる過程である。
つまり自分が生き延びるため、必ず他の生き物を『食べ物』と位置付け、他者を殺し、食べるという行為を止める事はできない。
人は当然のように毎日の食事を楽しみ、明日への活力にしている。
特に人類は人より多くの食べ物を得ようと、戦争や殺し合いすら厭わない。
でもその争いの対象となる『食べ物たち』。それらは全て本来『生き物』である。
つまり牛や豚や鳥や魚たち。
そして穀物も野菜も同じ。
それだけでなく、人類にとっての食べ物の対象にならない害虫や害獣は、駆除され、人間の繁栄の仕組みから排除される。
牛の病気『口蹄疫』=『BSE』、鶏の『鳥インフルエンザ』等の疫病が発生すると、その家畜舎に飼われている全ての家畜はその発生地域から根こそぎ処分される。
彼らは自分が望んだわけではないのに、この世に産まされ(生産)という物扱いされたまま一生を終える。そんな不本意な存在に甘んじなければならないのに、不平は許されない。
人に食べられるために生まれ、食べられ(場合によっては廃棄され)この世を去る。
これをそれらの生物にとって、幸福と呼べるのか?
人間の幸福の追求は、家畜の不幸だとは思えないか?
人が存在しなければ、起こり得ない不幸。
人の正義は、家畜たちの不正義なのではないのか?
全ての生物は他の生物を殺して喰わなければ生きられない。
それがこの世の中の仕組みである。
もしも私たちの常識である『殺しは悪』であると定義するなら、自分が生き延びるために殺し続ければならない全ての生物に対し『普遍的な正義』など、存在しないと言えないか?
結論。私たちは、自分の行動を正当化する行為は、全て偽善であると常に戒めなければならない。真の意味での正しい行為など存在しないと言えるから。
人類は地球のご主人ではない。
人類がこの地球に誕生したのは、地球の45億年のうち、僅か数百万年に過ぎない。
はるか昔、微生物がこの星を席巻し、シダ植物が席巻し、恐竜が闊歩していた。
自分たち人類など、吹けば飛ぶような脆弱なでつまらない存在でしかない。
この地球上に暮らし、我が物顔で増長している場合ではないのだ。
地球という家の、今現在のただの間借り者。
故に人類がこの地球の主である様な錯覚は、厳に慎み排除すべきである。
そう考えたら今後も生きていかねばならない以上、私たちは自分たちの生存権を控えめに平和的に最低限の分量だけ確保し、無闇やたら他人を傷つけてはいけない。
今後も自分たちが生きるためには、たくさんの生物に多大な迷惑をかけざるを得ないが、その分慎ましく営んでいかねばならない。 彼ら他の生物たちの犠牲の上に、この世に生かしていただいているという立場に深く感謝し、謙虚に暮らす。
(自分たち人類が)平和に、幸福に生きるために。
それができないなら、人類は滅び去るべきである。
母
『母なる大地』とよく言われるが、この星に暮らす全生物にとって、この星『地球』は【母】そのものである。
そうやって脈々と生命の連鎖を育み、継承されてきた。
私たちはその一員として、この星の未来に生きる全ての生物に対し過不足なく引き継ぐ責任を負っている。
母なる地球を敬意と労りを持って接し、全生物の共有財産であるかけがえのない『母』として受け継がれなければならない。
遅まきながら、その責務を果たすため私たちは立ち上がった。
それがフリーメーソンZ会の理念であり、人類を平和に導くHALO君とエージェントたちに負託された役務である。
HALO君というAIコンピューターだけでは達成できないその仕事を、人類の能力を強化して共に共鳴し合い、連携し合い成し遂げる。
それが【母】に対する最低限孝行になると信じて。
そのためにこそ、友里恵や蓮たちが奮闘しているのだから。
つづく
何やら宗教めいた内容になってしまったが、私は特定の宗教を信じている訳ではなく、動物愛護の信奉者でもないので悪しからず。
特に今話題の『熊』に対しては。




