第14話『一週間の休暇〜フェーズ4 最終決戦へ〜』
蓮と友里恵は思いがけないご褒美『休暇』に狂喜乱舞した。
「ねぇ、蓮!何処に行きましょうか。考えた?」
「もう、嬉しくて身悶えしそうだよ!でも、一週間って、長いようであっという間だよ。いつまでも悩んでちゃ、すぐ休暇が終わっちゃうし。どうだろう?近場の温泉とか・・・どう?」
「日本じゃあるまいし、温泉?そんな施設無いでしょ?」
「有るよ!近場と言えるかどうかは距離的に微妙だけど。」
「エ?有るの?何処に?ヨーロッパに温泉饅頭とかあったっけ?」
「流石に温泉饅頭は無いでしょ!でも温泉ワッフルとか、温泉バームクーヘンくらいはありかも?」
「まぁ、温泉タマゴはありそうね。で?何処に有るの?」
「意外に結構アッチコッチにあるけど、僕のお勧めは『バーデンバーデン』かな?温泉といっても日本のような、ひなびた温泉を想像したらダメだよ。スパとか、テルメだからね。サウナもあるし。
基本、水着着用で混浴温水プールって思った方がいいかも。
特に『バーデンバーデン』は大型で有名みたいだし。」
「それって何処?」
「南ドイツなんだけど、距離にして650キロくらいかな?地理に疎い友里恵にはピンと来ないか?東京を起点にして考えると、北なら青森県南部くらい。西なら岡山県と広島県の県境くらい?尾道市とか、しまなみ街道あたりとか・・・。車なら休み休みで所要時間8時間くらいだと思うよ。」
「それくらいなら十分可能ね。」
「ただ、僕の運転でだとアウトバーンを通っても9時間は見た方がいいと思う。いくら制限速度無しの無制限レーンがあったとしても、時速200キロ以上とかスピード出すの怖いし、外国で長距離運転は絶対疲れるだろうし。650キロかぁ・・・それだと僕にはちょっと過酷かな?そこで提案だけど、途中で一泊してフランクフルトに立ち寄るってどう?」
「そこでソーセージを食べるって事?それも良いかも?」
「フランクフルトはソーセージが有名だけど、それだけじゃ無いしサ、他にも有名どころが満載な観光地なんだ。国際金融の中心地でもあるし。一見の価値があると思うよ。
ソーセージを食べながら本場のビールを飲む!!クゥ〜!いいねぇ〜!」
「へ〜、蓮って意外に物知りね。見直したよ。でもね、ビールが飲みたいのは蓮の方でしょ?」
「キミねぇ〜、せっかくだもの、本場の名物を楽しまきゃ!それから君も選ばれしエージェントなんだから、もうそろそろ自分のいる所の地理や産業の知識に目覚めてもいいんじゃない?」
「シッ!!HALOに聞かれるでしょ!」
「もう、聞こえてるよ!」とAI. HALO君の声。
「アチャ〜!聞こえちゃった?」
「何ですか?これまでの低次元の会話は!温泉饅頭だの、温泉バームクーヘンだの、温泉タマゴだなんて。無知もここまできたら懲罰ものですね。ちゃんと学習してください!」
「ハイハイ、分かりました!!勉強します!
(HALOさん、)ハイ!退場!!」
「私を公衆トイレのトイレットペーパーのように粗雑に扱わないでください!何ですか!はい!退場!!って。」
「他意はありません。ね、蓮?」
「そうです、他意はありません。ところで休暇が終了したら、次の目的地って何処になりますか?」
「シレッと話題を変えましたね?次はもう実戦に移行する『フェーズ4』です。ワシントンとモスクワと北京で同時進行の作戦に移ります。
その事前準備として、エージェントの皆さんは全エージェントと私の情報共有化の映像可視化処置のため、ジュネーブに行って貰います。覚悟してください。」
「映像可視化処置って手術とかされんの?」
「いいえ、手術なんてそんな面倒くさい事しますか!」(え!面倒くさいんだ?)
「センブリ茶味の強化剤ワクチンを飲んでいただきます。それじゃ、その時に。have a nice day!」
※ここで言うワクチンとは、細菌が作り出す毒素を不活化したり弱めたりしたものという意味ではない。あくまで強化剤の効能を司る媒体薬という意味である。悪しからず。
「何だ?『センブリ茶味』って?」
「知らない。でもお茶を飲むだけでしょ?楽勝ね。
それじゃ、決まり!フランクフルト経由で、バーデンバーデンにいきましょう。わぁ、楽しみ!!」
「他の人たち、ジェーンさんたちはどうするの?」
「それも知らな〜い。彼女たちもきっとそれぞれ別行動でしょ?ねぇ、蓮、レンタカーの手配はできてるの?」
「もちろん、今の今ならまださ、でも・・・(スマホ画面で検索しながら)ポチッと・・・これでヨシ、バッチリすぐ手配したよ。」
「そう、じゃ、当日楽しみにしているわね。」
そして休暇当日。
蓮はベンツのレンタカーを借りて、颯爽と車を走らせる。(流石ドイツ!レンタカーがベンツだなんて!!贅沢!)
所々のドライブインで休みながら疾走するアウトバーンは快適だった。
蓮と友里恵にとって久々の旅行。
楽しい思い出をいっぱい作れると信じていた。この時までは。
フランクフルトで予約したホテルに到着した友里恵と蓮。
そこに見慣れた4人の集団が・・・。
「何であなた達がここに?」友里恵は絶句した。
「あら、友里恵、偶然ね。」
「何が偶然よ!こんな偶然ある訳ないじゃない!」
そこにはジェーン、アーシャ、カミラ、リンダ、マルシアのルームメイトたちが立っていた。と言うか、待ち構えていたと言った方が適切である。
「あら、私達だって休暇を楽しむ権利はあるわ。この世の中はあなた達ふたりだけのものじゃないのよ。」
「そうよ、抜け駆けは狡いと思わない?ねっ!蓮、私達と一緒に楽しみましょ!」
「蓮!どういう事?」
「エッ?僕は知らないよ!何であなた達がここに?どうやって来たの?」
「どうやってって、ICE(インターシティ エクスプレス (InterCity Express)ドイツ高速鉄道)で来ました。」
「そうじゃなくて!何で、どうしてここに来たの?」
「どうしてって、私達は全員エージェントよ。その私達に内緒の話が通用すると思って?筒抜けだって考えなかった?私達全員知ってる気づかなかった?」
「そうだった!僕らは皆んなそういう集団だった!」
「分かったらさぁ、行きましょ!」
「エッ?何処へ?」
「何処へ?って決まってるでしょ!ここはフランクフルトよ!ビールとソーセージの本場よ。
あなた達ふたりは何をしに来たの?まさかふたりだけでイチャイチャするためだけに来たんじゃないでしょ?」
「イチャイチャって・・・。分かったわ。それじゃ、一緒にいきましょ!ね!蓮、大勢の方が楽しいでしょ?」
「そうだね・・・。」と苦笑いした蓮だったが、結果、女性群に囲まれて多勢に無勢の男は居場所がなくなるのは必定。
案の定、哀れ末席で縮こまる蓮であった。友里恵と久々に甘〜い夜が過ごせると思っていたのに。可哀想な蓮。
当然それから友里恵と蓮が二人きりで過ごせる夜は一度もなく、翌日フランクフルト観光をした後はバーデンバーデンに移動、テルメとスパを水着で過ごし、夜はカジノを楽しんだ。
と言っても、彼らは超能力を持ったエージェント。
本当の能力を使ったら絶対に勝てるし、それは私利私欲に任せた反則であり、ニューフリーメーソンZ会の規則違反になるので、お金を賭けた賭博には参加できない。
それぞれが傍らで内緒のエアゲームを楽しむ事にした。
お金を賭けずにゲームの結果を見守る。
その結果は・・・。
全員的中率脅威の98%。
本気で賭けていたら、一夜で大富豪になれるところだった。
残念だったね。
しかも友里恵と蓮は結局別々の部屋。
何でこうなるの?
まぁ、女性陣一行の水着姿は拝めたが。
こうしてあっという間に休暇は終わり、全員が集合先のスイス・ジュネーブに集結した。
そこでAI. HALO君の予告通り、センブリ茶味の映像可視化処置用ワクチンを飲まされた。
「ワッ!! 何!この味!!オェ!」
「これがセンブリ茶味?口の中がおかしくなりそう!」
このワクチンが喉を通った次の瞬間、脳内シナプスが通る毛細血管が光ファイバーのアウトバーンのように膨張し、行き交う情報量が天文学的に増えたような気がした。(シナプスって毛細血管を通るの?さぁ?よく知らんけど。私しゃ医者じゃないし。)
実際これを飲んだ者たちは、まるで別人の様な能力強化がなされた。つまり、本当の超人になってしまったのだ。
で、どれくらい能力が上がったの?
それは次回のお楽しみ。
ところで、こんなセンブリ茶味の能力強化ワクチンを飲まされるだけだったら、何もジュネーブまでやって来る必要はあった?
多分、無かった。ドンマイ!!
つづく




