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未来AI HALO《はるお》君  作者: 米森充


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13/17

第13話  『ハンブルクとビリニュス』

 三ヶ月の語学研修を終え、友里恵はグルノーブル山荘を後にする。

 しかし他のメンバーたちとここでオサラバだと思っていたら、意外にも次の段階でも一緒だった。

 それはドイツ・ハンブルクを拠点に、実際のエージェントとしての実習を兼ねた能力強化訓練だった。

 ハンブルクはドイツ北部、デンマークの南に位置し、古くから栄えた港湾都市である。

 中世のハンザ同盟の中心都市であり、古くからの自由都市としての気質を持ち、また、市の中心部、エルベ川から北海に抜ける重要航路上にあり、金融・造船業の中心都市でもある。

 また国際交流も盛んで、世界各国の総領事館等の外交施設が集結しているのも、友里恵たちエージェントの活動拠点としては最適だった。(因みに日本との関わりでは、大阪と姉妹都市である。)

 また、ヨーロッパでの最大懸案である対ロシア工作上、サンクトペテルブルクとも提携都市である縁は非常に使い勝手が良い。

 と言っても彼女らが対ロシア工作には直接関わらない。

 何故なら命懸けだから。ロシア工作に於いて失敗は死を意味する。

 そういう仕事はその道のプロ、アメリカCIAに任せるに限る。

(と言っても情け無いことに、歴史上CIAがやってきた対外工作の仕事で、最終的に成功したと言える事例は無いが。)


 ハンブルクはアメリカとも縁が深い。

 1700年代初頭からアメリカへの移民が多く渡り、シカゴとも提携を結んでいるくらいだから。

 アメリカに住むドイツ系移民の子孫との連携は今のところないが、ごく近い将来に大きく関わってくる事になる。


 さて友里恵と愉快な仲間たち、(ちょっと!愉快な仲間たちって何よ!失礼ネ!)即ち、ジェーン、アーシャ、カミラ、リンダ、マルシア一行は再びワンチームとなり、ハンブルクの公共TV局『北ドイツ放送(NDR)』と『第2ドイツテレビ(ZDF)』の外国人取材スタッフとして潜り込む。(外国人の視点で様々な問題に鋭く切り込む姿勢を売りに、覚えたての不慣れなドイツ語で突撃取材を敢行して話題となった。)


 特に友里恵はたどたどしいドイツ語に、言葉に詰まって困った時にチョットだけ日本語、英語、フランス語を織り交ぜ、チャンポンでユーモラスな独自の取材スタイルを確立、コアで特殊な嗜好を持つ視聴者の間で密かな人気者となった。(ちょっと!それってどう言う意味よ!私って特殊な変質者に人気が有るって言いたい訳?失礼にも程があるわ!)


 特に『突撃!お宅の晩ごはん!』(どっかで聞いた事ある?)で他人の迷惑顧みず、見ず知らずのウチに強引な取材を敢行。

 これが意外と視聴者の一部に受けているみたいだった。

 自分が料理を作る訳ではないので、本人にとって結構お気楽な仕事に思えたのだろう。

 自由闊達な言動が注目を集め始めてきたようである。


 友里恵はバラエティーコーナー担当として顔を売り、ジェーン、アーシャ、カミラ、リンダ、マルシアもそれぞれ政治部、事件報道部、スポーツ、芸能部に配属され、独自の地位を確立してきた。


 彼女たちの活動の意図。

 それはそれぞれの分野で顔を売り、工作対象のキーマンに取り入る事。



 ところで蓮は?


 可哀想に、また友里恵と離れ離れになり、リトアニアに派遣されていた。

 首都ビリニュスに居を構え、リトアニア語、ロシア語に取り組む。


 リトアニアにはソ連崩壊をキッカケにした独立回復後も、在留ロシア人が多く住み、蓮がロシア語を習得するのに便利な国であった。

(ロシア本国は例え一時的とは言え、蓮が住むにはスパイとして拘束されるリスクがある。だから隣国のリトアニアなのだ。)

 またリトアニアはロシアと国境を接し、ロシアの古都サンクトペテルブルクとも距離が近い。

 既にロシアに潜入したCIAエージェントたちとの接触も使命のひとつであった。


 今はロシアの困ったちゃん独裁者『プータン』の監視と、クレムリンの協力者スカウト・育成が蓮たち対ロシア要員エージェントの主な仕事。


 プータンの様な独裁者はいつも体制崩壊と自分自身の命を狙われ、保身のため国中に監視カメラ網を敷いている。

 しかし自らの保身の目的ために設置したはずの監視カメラが、アメリカCIAのハッキングにあい、情報が丸裸なのが分かっていない。



 知ってる?つい最近、アメリカのトランポリン大統領が実行したベネズエラ侵攻もイラン侵攻も最高指導者が最も簡単に拘束・あるいは殺害された事を。


 どうして居場所が突き止められた?


 現代は高度な情報戦。情報を制する者が勝敗を制する。


 そう、それは前述の通り、ロシアの監視カメラ網データをアメリカがハッキングしたため。

 CIAに雇われた天才ハッキング小僧たちの仕業なんですから。

 皮肉にも、自ら設置を指示した監視カメラのせいで独裁者自身の所在がダダ漏れなのだ。

 国民を苦しめる監視網が因果応報となり、自らの命取りになる。


 そうした事実から考えると、トランポリン大統領の次の標的は、おのずと見えてくる。即ち一番の敵であり目障りなプータンと習遠平の粛清。彼らを消せばもう、自分には敵は存在しなくなる。


 つまり現段階はその作戦の準備段階にあるという事。

 でも罷り間違えばその作戦は核戦争の導火線になり得る。そしてAI. HALO君の計算では、95%の確立でこの作戦は失敗、核戦争を引き起こし、人類は滅亡するというもの。

 仮にプータンと習遠平を殺害できても、軍や側近の判断で核のボタンを押されたら終わりなのだ。


 一方トランポリン大統領は大統領で、第二期大統領就任後、全世界を対象に無謀で異常な関税攻撃の銃を撃ちまくり、国内経済指標が悪化。更に今回の2度にわたる無謀で独りよがりの軍事作戦実行でEUや日本などの同盟国の反発と不評を買い、国際世論で孤立、更にお膝元である自国の国論を二分する差別政策で国民を分断、支持率も低下してきたという二重苦・八方塞がりの状況下では、今度の中間選挙で大敗の可能性大である。

 国の内外にワザワザ敵を作り、無闇やたらと増やす。そしてワザと(?)味方を減らす。誰がみても愚策も良いところだが、それが彼の能力の限界であり、とても大統領職に向いている人物とは言えなかった。

 つまりその器じゃない彼にとっても後が無いのだ。


 自ら招いた危機的状況にある彼の起死回生の一手、それは何か?

 蓮たちにとって自分たちの仕事として現在進行形の準備段階ではあるが、今は想像したくない。





 もう、この頃になると、友里恵と蓮は電話やチャットなど、特別な機器を使わなくともAI. HALOはるお君の通信機能と各々の脳に埋められたチップを通し、脳が異常に活性化しテレパシー機能が自在に使える様になった。


 そうなるとその便利さが逆に仇となることがある。


「ギャ〜ァァァァァァア!!、また今日も仕事から帰ってすぐにロシア語レッスンかよ!情報処理会社で鬼の様な仕事量をこなし、リトアニア語を介したロシア語レッスンって、寝る暇ないだろ!友里恵はいいなぁ〜!なぁんの悩みも苦労も無くて!」

「何ですって?蓮!聞き捨てられない言葉を聞いた様な気がするんですけど!」

「アワワ、友里恵!聞こえてた?HALO君!都合の悪い独り言はミュートにして!ってお願いしたでしょ!酷いよ!」

HALOはるお君のせいにしてんじゃないわよ!蓮が私の事、普段からそう思っていたなんて、大ショック!酷い!酷過ぎる!」

「そうじゃないよ!今、僕の置かれている状況がハード過ぎて、つい、弱音が出ちゃっただけなんだよ。だって僕の中の友里恵のイメージは、いつも笑顔で楽しそうで、思い出すだけで気持ちがほっこりするんだもん。仕方ないじゃん?」

「な〜んか私を上手く丸め込んで騙そうとしていない?そうはいかないよ!」

「そんなつもりはないよ!だって考えてもみてよ。ついこの前まで短期間にスペイン語にカタルーニャ語でしょ、やっと習得できて解放されたと思ったら、今度はリトアニア語にロシア語だよ!いつ気が狂っても不思議じゃないよ。そうだろう?少しぐらい息抜きが欲しいよ。最近、友里恵にも会えてないし。例えいつでも気軽に会話できたとしても、ヤッパリ直接友里恵に会いたいよ。友里恵はそうじゃないの?」

「私だって蓮と会いたいよ。でも今は仕方ないじゃない。」



 ここでAI. HALO君の天の声。


「君たち、随分フラストレーションが溜まってきたみたいですね。無理もない。今まで随分頑張ってきたのですから。」

HALOはるお君?ホントにHALOはるお君なの?」

「もちろん私です。何だと思いました?」

「だってキミが悪いほどの優しいお言葉。何か魂胆があるんでしょ?でなければHALOはるお君が私たちに優しく接してくるはずがないもの。」

「私をそんな風に思っていたのですか?いつだってこんなに優しく接してきたのに、がっかりです。」

「で?今回のご用は何ですか?」

「無視して受け流すんですね?・・・・まぁ、いいや。

 実はD- DAYが早まってきそうな情勢ですので、準備計画も予定より早めなければいけなくなってきたようです。」

(来たよ。と思いながら)「それで?」と友里恵。

「友里恵さんと蓮さんには一週間の特別休暇をあげます。」

「え!特別休暇?何で?嘘でしょ?冗談とか?」

「ホントです。(次のステップの機械的準備にそのくらいかかるので)その代わりその休暇が終わったら、友里恵さん、蓮さんには他のエージェントの皆さんと一緒に最終段階に入ってもらいます。」

「最終段階?」

「そうです。その最終段階に入ったらもう、ノンストップの決戦に突入します。

 だからその前に鋭気を養い、思い出作りに勤しんでください。

 お二人、または仲間の皆さんとご一緒に。ハンブルク名物のビールを飲むもよし、フランクフルトを頬張るも良し。どうぞお好きに。

 その代わり、休暇が終わったらすぐ、能力向上のカンフル剤を飲んでいただき、未来予知の最終段階と私HALOはるおとエージェントの皆さんの持つ情報を全て一元化し、離れていても遠くが見通せる『千里眼』を獲得できるステップにお進みいただきます。

 それらの能力が確認できたら、私たちが一斉に動き、トランポリン大統領の野望を砕きながらプータンと習遠平の排除を実現させるのです。しかも同時にペンタゴン、クレムリン、中南海を無力化する必要もあります。

 そのための予知能力であり、千里眼が必要となるのです。

 ホントは予備能力として、もし失敗しても修正できるタイムトリップ能力も欲しいところでしたが、その能力獲得まで待てないようですので。

 核戦争を阻止し、危険分子を排除する。

 これが私たちに与えられた使命です。

 失敗は許されません。

 分かりましたか?

 だから休暇終了後には、全エージェントと私の情報共有化の映像可視化処置が待っています。


 作戦終了まで心のプライバシーは無くなると覚悟してください。

 それではお二人さん、それまで楽しんで!

 それまでHave a good day!!」





 つづく




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