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未来AI HALO《はるお》君  作者: 米森充


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第12話 蓮の来訪

 友里恵と蓮が語学訓練のため遠距離恋愛になってから2ヶ月が過ぎた頃、突然蓮から友里恵に電話がきた。

「友里恵、元気?」

「蓮!!!

 元気も何も、毎日ズームで話してるじゃん?どうしたの急に電話なんかしてきて。」

「いや〜ぁ、急に電話で友里恵の声を聞きたくなってさ。どうしてるかな?って思って。」

「どうしてるもこうしてるもないわよぉ。毎日ジェーンとアーシャがね、私に筑前煮の作り方を教えろだの、あの時の日本旅行で食べた豚の角煮や肉ジャガが美味しかっただの、豆腐ってどうやって作るのだの、聞いてくるのよ。私が知る訳ないじゃん?」

「そうだね。友里恵は料理づくりの日本代表じゃないし、友里恵に聞く話じゃないよね。聞く相手を最も間違えていると思うよ。」

「蓮にそう言われると、それはそれで腹立つんですけど。何か感じ悪!!私だってね、やるときゃやるんだから!」

「それは失礼しました。だって友里恵ってカラオケの次に料理が下手じゃん?もっと人見て話をふらなきゃ、って思ってサ。友里恵には友里恵の得意分野がある訳だし。」

「そうよね〜、・・・・って、さりげなく私の歌まで貶してない?私の歌ってそんなに変?」

「そんな事ないさ!個性的で味のある歌い方だと思うよ!『のど自慢』に出場したら特別賞間違いなしだと思うし。」

「な〜んか嬉しくない!・・・・・で?何の用?」

「ゴメン、怒った?友里恵を怒らせるために電話したんじゃないんだ。ちょっと玄関まで来てみてくれる?」

「玄関まで?何?」

「ドアを開けてみて。」


「蓮!どうしたの?何でここにいるの?もしかして幽霊?」

「んな訳ないだろう?チャンと足も有るし。」

「そうね、足が有るみたい。でも蓮は今、スペインにいるはずじゃない?え!もしかして訓練がキツすぎて逃げ出してきた?それともクラスメイトに虐められた?」

「違うよ!」

「じゃぁ、私が恋しくて居ても立っても居られないくなった?ん〜もう、しょうのない人ね。お・ば・か・さ・ん!」

「会いたいと思ったのはホントだけど、子供じゃあるまいし、我慢が出来なかったから来たんじゃないよ。

 実は一週間前にマドリードの研修を終えてね、バルセロナに研修拠点が変わったんだ。前より近くなって土日の休みを利用してやって来たんだよ。」

「え!だってマドリードもバルセロナも同じスペインじゃない?ここはフランスよ!一泊二日で来られる距離じゃないでしょ?」

「それが来られるだなぁ。友里恵ってカラオケと料理の他に地理も苦手だった?」

「失礼ね!どれも得意よ!」

「あ、そう。(そういう事にしておこう)今日、実はレンタカーを借りて車で来たんだ。TGVもいいけど、乗り換えが面倒だし。

 実はバルセロナとここグルノーブルは、距離がたったの550kmなんだ。」

「550km?」

「そう、550km。そういっても地理が苦手な友里恵にはピンとこないか?550kmってね、例えば東京からなら、北は盛岡までくらい、西なら大阪くらいかな?車で休み休みだけど8時間程かかったよ。

 まぁ、どうせなら友里恵とプチ観光もしてみたかったからね。」

「え〜そうなの?(顔が自然にニヤけてきたよ。)

 はるばる遠くから私に会いに?疲れたでしょう?さあ、入って。」

「いいの?」

「ここは女子寮だけど、別に男子禁制ではないし、皆んなに紹介するわね。」

「ありがとう。へ〜ぇ、素敵な建物だね。山荘と言うか、ロッジと言うか、最高ジャン?僕たちの所とは随分待遇違うな〜。」

「皆んな〜、ちょっと集まって!」とフランス語で召集をかけた。

「こんな短期間に随分フランス語が堪能になったね。」

「当然よ!私を誰だと思ってんの?」


「料理当番の時、つい最近まで麺類しか作れなかった友里恵。」

「カラオケで『天城越え』をフランス語で、しかも振り付きで歌う友里恵。」(上手いのか、下手なのか、よく分からないわ。)

「刺繍や手芸みたいな繊細な作業が苦手な友里恵。」

「ベルばら(ベルサイユのバラ)を自慢する友里恵。」(フランスでは絶大な人気を誇る日本アニメ。作者は池田理代子であって友里恵ではない。念のため。)


「そうそう、友里恵ったら涙脆いの!いつも同じ場面になるとティッシュが手放せなくなるほど涙を流すんですもの。」



 2階からジェーン、アーシャ、カミラ、リンダ、マルシアたちが階段を降りながら一言づつ友里恵の辛口人物像を蓮に暴露する。


「ちょっと!!」


 ルームメイトからの手荒な暴露合戦の洗礼を受けながらも、ひとしきりメンバー紹介をする友里恵。


 蓮は自分たちの宿舎がマドリードからバルセロナに移った理由を説明する。

「僕たちが履修するスペイン語ってね、普通語と言うか、標準語と言うか、マドリードで習った言語の他にカタルーニャ語があるんです。そのカタルーニャ語の中心地がバルセロナなんです。

 だからカタルーニャの人々にとってスペイン語は外国語扱いでもあるんです。そんな訳でスペイン語とセットで覚えなくちゃ、スペイン語を話せるとは言えないんです。同じ国なのにね。」

「そう、それは大変ね。」と他人事みたいにカミラが形だけ同情する。

「でも、蓮がここグルノーブルに来てくれたと言う事は、私たちがバルセロナ観光に行った時は案内してくれると言う事ね。」

(え?そうなるの?)と蓮は思った。)

「私、サグラダファミリアが一度見てみたいと思ってたの!ラッキー!」

「私、本場のパエリアが食べてみたいな〜!」(パエリアの本場ってバルセロナなの?知らんけど。)


 結構、自分勝手で自由な面々みたいだ。



 応接間に案内された蓮は、長時間のドライブで少々疲れていたので一休みしたかった。


 しかし、友里恵の恋人がワザワザやってきたというのに、皆んなの好奇心を満たさでおくべきか!察して遠慮するとか、二人だけの世界を作ってあげるとかの労りは皆無の人たち。

 容赦なく質問責めにした。

 でもその具体的な内容はプライバシーに深く関わるので、ここでは割愛する。


 やがて話題はAI. HALOはるお君と自分たちエージェントとの関わり方や自分たちが目指す世界の救済、正義ってなんだろう?というテーマが討論の議題に上がる。


 人類全体の利益ってなんでしょう?何が正義で何が悪?

 それを誰が決めるの?

 私たちが正しいと思う正義って立場が逆の人たちにとっては悪じゃないの?

 私たち一部の人間が裁定を下すのは不遜じゃない?

 私たちは神じゃない、普通の人間よ。


 ここでいつも議論が壁にぶつかる。



 と、ここで珍しく HALOはるお君の声がする。

「皆さん、悩んでますね〜!」

「あ!. HALOはるお君!」

「お!今日は私をあだ名で呼ばないのですね?」

「あなた、どんだけ根に持ってんの?ところで何の用?」

「冷たいな〜!私は皆さんの手助けをするために声をかけているのですよ。」

「そう?私たちを助けてくれるの?嬉しいわぁ〜!」

「何か心のこもっていない、感じ悪い言い方!」

「そんな事なくってよ!で、どう助けてくださるの?」

「助けると言うか、アドバイスと言うか、今後のヒントになれば、と思いましてね。」

「そう、聞きましょう。ね、皆んな。」カミラの言葉に一同頷く。


「その前に友里恵さん、今日は蓮さんの来訪を予知できませんでしたね。まだまだだなぁ〜。」

「私に予知なんて無理!今日、蓮が来るなんてどうして予知できる?私は超能力者じゃないんですからね。」

「それでは困ります。常にその次を予測する訓練を積んでくださいって言いましたよね?皆さんはエスパー予備軍なんですから。分かってます?」

「今、HALOはるお君のお小言がありそう、って事は何となく予知できました!」(だから「咄嗟にHALOはるお君のあだ名を口にするのを避けました!」とは言えず、面白くなさそうな表情の友里恵が少し投げやり気味に言う。)

「ホントかなぁ〜。まぁ仕方ない、今後も頼みますよ。

 それでは本題です。皆さんが言う様に私AI. HALOはるおもここにいる皆さんも神ではありません。何が正しく何が間違いであるかを決める権限は勿論ありません。ですが、誰かが強い意志を持って世界を、人類を導いて行かねば、早晩滅びる運命にあります。

 私の計算では残り僅かです。

 だから急がねばならぬのです。誰かが立ち上がり、滅亡から救わねばならぬのです!それはお分かりですね?だったら今、私たちが立ち上がらなければいけないと思いませんか?

 人任せでは何も解決しないとは考えませんか?

 私はそういう強い危機感を持つ人たち、とりわけギルモア博士の執念が生んだAIコンピューターなのです。

 でも、私一人が学習して得た結論で世界を動かして良いのでしょうか?

 私はコンピューターという機械に過ぎません。

 ここに居る皆さんの命運を全て私に託して良いのでしょうか?

 それはあまりに無責任というもの。

 皆さん、人類の運命は皆さんが主体になって切り開かなければいけないのではないのですか?

 しかし人類の歴史は悲しいかな、愚かな失敗と過ちの連続でした。


 でも次の失敗は許されません。

 次は人類全体の死を意味するのですから。

 だから人類の持てる叡智を最大限結集し、力を合わせて克服して行かねばならんのです。

 だから私が経験と学習のデータベースとなってエージェントの皆さんと情報共有し、一緒に学習しながら叡智を結集するのです。

 正しい判断能力を皆んなで身につけて、過ちを回避するのです。

 誰か一人が誤っても、それに気づいた他の者たちが力を合わせてカバーする。

 私が誤ったらエージェントの皆さんが正し、全力でカバーする。

 そのための能力と体制づくりを、今私を含めた皆んなでやっているのです。

 できるだけ過ちを回避する。

 そのための能力向上を目指して、皆さんはここまで修行してきました。

 その結果、あと一歩で予知能力が身につきます。

 それは私だけでなく、能力を共有する皆さんにも言える事です。 私が完璧な予知能力を身につけるという事は、皆さんも同等の能力を持つという事。

 その意味が分かりますか?

 私たちは運命共同体です。

 各々が責任を持って世界を動かすのです。

 そのために今では十数万人に膨れ上がったエージェントたちが身につけた能力で最大限尽くすのです。

 世界各地に活躍の場を広げて自らの責任と使命を果たすのです。

 Dディは目前に迫っています。

 迷っている暇などありませんよ!」



 こんなところでAI. HALOはるお君に煽られた蓮たち。


 どうやら遊んでいる暇は無いらしい。






 つづく

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