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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編

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第49話 凍りつく地下水路

デューレブラッド城 城内。



ロア

「(ヘスティア姉さん…!!)」



ロアは地面すれすれを滑るように浮遊し、城内を凄まじい速度で駆け抜ける。



ロア

「(どこだ…!?地下への道…!!姉さんの魔力は下…!どうやって行くの…!?)」



ヘスティアの魔力は下から感知しているのに、地下への道が見つからない。



ロア

「あとはこっちの道…!!」



長い通路が奥へと伸びている。

1階で調べていない場所は、もうここしかない。



ロア

「ここか…!(これルークか…?ぶっ壊したの….。いや今はそれどころじゃ…!地下へ…!)」



ロアは凄まじい速度で地下への入口へ飛び込んだ。



ロア

「……っ」

 


地下の闇を見た瞬間、ロアはぴたりと動きを止める。

すぐさま入口から身を翻した。


キィン!


水色の魔法陣が展開し、無数の結晶が宙へ舞う。

城内の光を集め、結晶が淡く輝き始めた。


 

ロア

「よし……!」


 

再び地下へ飛び込む。


地下への道は螺旋階段になっていた。

光が届かなければ、とても歩けたものではないだろう。

ロアは浮遊したまま、階段を無視して一気に降下する。

やがて地下水路へ辿り着いた。



ロア

「水…!」



透明度の高い水が広がっていた。

ロアはそのまま、水面すれすれを滑るように速度を落とさずに駆け抜けた。



ロア

「……っ!」


 

水面が揺れた。


グォォオ………


 

ロア

「低い音…何かの鳴き声…?」



ィン…



ロア

「っ!姉さん…!そんなに魔法使わないで…!」



ロアは強い魔力を感知した。ヘスティアの魔力だ。

明らかに戦闘中の魔力の使い方だ。



ロア

「(間に合え…!)」



さらに進んでいくと光が見えてきた。

ヘスティアもそこにいるはずだ。



ロア

「っまた…!どんだけやばいの相手にしてるの!?」



先ほどよりも大きな魔法を撃っている。

ヘスティアの他にも魔力を感じる。

1つはやや大きい。そして弱め魔力が複数。


ロアの軌跡をなぞるように、水面が飛沫をあげた。



 ✴︎



大きな水流がヘスティアたちを飲み込もうとしていた。


ザバァアアアアン!!!!


地下水路を震わせる轟音が響く。

ものすごい量の水だ。身体に当たれば凄まじい衝撃になる。生身の人間が耐えられるものではない。



神官アーディス

「はぁ…はぁ…(次は…聖騎士長とプロジオン…)」



キィィン…



神官アーディス

「は…?」



ヘスティアたちを綺麗な結晶が覆っていた。



ヘスティア

「………。(ロア…)」


神官アーディス

「(あれだけの水流に耐える防壁…?ありえない…!)」


ハルジオン

「……?助かった…?」


レヴィス

「ヘスティアちゃんか…?」


ヘスティア

「……いえ…」


レヴィス

「じゃあ…誰が…?まさか…」



レヴィスは、眉をひそめた。

そしてたどり着いた答えは。



レヴィス

「ハル…?」


ハルジオン

「そんなわけないでしょ」


ロア

「ヘスティア姉さん!」


レヴィス

「おぉ?どちら様…?」


ハルジオン

「姉さん…?もしかして弟さん?」


ロア

「大丈夫!?しっかり…!薬は!?」


ヘスティア

「平気です…」


ロア

「平気じゃないよ!」


ハルジオン

「(ヘスティアさんと似た髪型…)」

 

神官アーディス

「次から次へと…」


ロア

「この辺りの水は飲めないね…水無しで飲んで…!」


ヘスティア

「…水無しは…吐きます…」


ロア

「いいから飲む!!お口開ける!姉さんってば!」



ヘスティアは口を一文字に閉ざして開けない。

必死に顔を逸らしている。



ロア

「苦くて嫌でも飲む!早く!」



ロアが必死に口に押し当てるが口を開けない。



神官アーディス

「無視…?」


ロア

「……ソフィア姉さんに言ったらどうなるかな〜」


ヘスティア

「飲みます」


ハルジオン

「え…」



ヘスティアは渋々、薬を飲み込んだ。

相当まずいらしく、すごい顔をしている。



ロア

「ちゃんと飲んだ?」


ヘスティア

「………うん……」


神官アーディス

「話は終わりましたか」


ロア

「まだ。もうちょっと待って」


レヴィス

「え」


ロア

「本当に心配したんだよ!馬鹿みたいに魔法使うし!だから僕も一緒に行くって言ったのに!しかもこんな地下に!危ないでしょ!今の間に合わなかったらどうするの!」



ガミガミガミとヘスティアを叱った。



ロア

「ほらもう帰るよ!ディン!ディンも起きて!ルークはどこ行ったの?」



バサっ!!


神官アーディスが翼を広げて再び攻撃を仕掛けた。

刃物のような羽がロアたちに向かって放たれる。



レヴィス

「!まず…」


 

キィン!!



ロアは神官の方を一切見ていないのに、晶魔法を展開した。まるで自動で展開されたように思えるほどの反応速度だ。



神官アーディス

「(……見てもないのに防壁が…)」


ロア

「…………。?誰。君」


ハルジオン

「(さっき会話してたのに…)」


神官アーディス

「貴方こそ。なんですか」


ロア

「ん…?鳥…?人間じゃないのかな」


ヘスティア

「妖です…。おそらく…げほっ…鴉天狗ってやつです…」


ロア

「え!?え!?妖!?姉さん妖相手にしてたの!?妖は相手にしちゃダメって昨日話したばっかりだよね!?」


ヘスティア

「……知らなかったんです…人に化けてて…」


ロア

「と…とにかく逃げよう!ディン起きて!気絶してる場合じゃ…」


神官アーディス

「(なんだこいつ…)逃しませんよ」


レヴィス

「また来る…!」



鋭い羽が無数向かってくる。


キィン!!


結晶がロアの周りを大きく囲んだ。

すごい威力で羽がぶつかるが、ヒビは入らない。



ロア

「え…?なに…?羽…?」


レヴィス

「すごい強度…」


神官アーディス

「(あれだけの強度を広範囲で…)」


ヘスティア

「(魔法を撃たなくなった…魔力枯渇か…)」


神官アーディス

「(防御特化か…攻撃してこない…。妖力で一点を集中攻撃し続ければ…!)」



バサっ



ハルジオン

「っ!羽の数が…!」



ヘスティアがロアの服の裾を掴んだ。



ロア

「………。ヘスティア姉さん、僕にどうしてほしい?あれはわざと動けるようにしてるの?」


レヴィス

「(情報把握能力やば…)」


ヘスティア

「生け捕り」


ロア

「生け捕り、ね…。生け捕りにしたら僕と一緒に帰ってくれる?」


ヘスティア

「まだやることがあります…」


ロア

「……それってどうしても、姉さんがやらないといけないこと?」


ヘスティア

「いいえ。でも、手を貸したいと思ったのはわたしです」



ロアはヘスティアを見つめた後、ハルジオンとレヴィスの方へ振り返った。



ヘスティア

「お願い、ロア」



ロアは少しだけ目を伏せた。

 


ロア

「……わかったよ。えっと、君たちは味方でいいんだよね?」


レヴィス

「おう」


ハルジオン

「は…はい!」



防御魔法に雨のように鋭い羽で攻撃されているが、ヒビは入らない。

カンカン!!と弾かれる音が響く。



ロア

「…………。」



ロアは神官に目をやった。

そして。


 

神官アーディス

「っ…!」


 

身を翻そうとした、その瞬間だった。


キィィィイイン!!!


青色と白色の魔法陣が交差した。

地下水路一帯が、一瞬で氷に閉ざされる。



レヴィス

「う…わ…一瞬で…」



あたりがしんとした。水の音も止まり、空気が冷たい。



ハルジオン

「(一体何が…??)」


神官アーディス

「あ…あのヘスティアと…同等レベルの…?」


ロア

「女って…ヘスティア姉さんのこと?僕とヘスティア姉さんが同じレベルなわけないでしょ」


神官アーディス

「(防御特化が…これだけの複合を…)」


ロア

「僕はヘスティア姉さんより火力弱いんだよ。何を勘違いしているのか知らないけど」


神官アーディス

「ありえない…」


ロア

「本当だよ。いくら妖相手でも、ヘスティア姉さんが勝てないなんてことありえないし。『加減しないといけなかった』だけ。ヘスティア姉さんが意味もなくそんなことしないだろうし。条件があったんじゃないかな、きっと」


神官アーディス

「(加減…)」



神官はため息を吐いた。



神官アーディス

「(これを相手には…絶対にもう勝てない…)……参りました。もう戦う気力はありません」


レヴィス

「絶対嘘だね。何か考えてるだろ」


神官アーディス

「いいえ。残念ですが、ここまで力量差のある相手は初めてです。さすがに、私がどうこうできる相手ではないと判断しました…。」


ヘスティア

「……よく喋りますね…」


神官アーディス

「えぇ…まぁ…。どっちにしろ、そちらも私を殺せないのでしょう?」


ハルジオン

「……負けた人の態度とは思えません…」


ロア

「……口塞ぐ?」


ヘスティア

「妖って窒息で死にましたっけ…?」


 

神官は小さく肩をすくめた。


 

神官アーディス

「さぁ…どうでしょうね。やってみては?」


ロア

「……裏がありそうだけど」


ヘスティア

「そうですね…」



ィ…ィイン…



ハルジオン

「っ…!?な…耳が…!」


レヴィス

「頭が痛い…!」


ロア

「っ…!」



キィン!!


青色と白色の魔法陣が交差する。

神官の顔が氷漬けになる。



ロア

「まだ聞こえる!?」


レヴィス

「いや…治った…」


ハルジオン

「すごい…耳鳴りみたいな…」


ヘスティア

「……何かしましたね。わたくしには聞こえませんでしたけど…」


ロア

「僕も聞こえなかったよ…でも…」



ザァ…


水面が揺れた。


 



『アルスダリアの祈り』第49話を最後まで読んでくださいましてありがとうございます。


ロアくん、ヘスティア姉さんにめっちゃ弱いんですね〜。

神官様も、往生際が悪くて好きです。

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