第48話 王妃の絵本
『遠い昔、色鮮やかな国で生まれたお姫様がおりました。
そのお姫様は、金を持っていましたが、それ以外は何も持っていませんでした。そのお姫様は何も見えませんでした。それを知った両親やお姉様、従者たちはお姫様を可哀想に思っていました。
お姫様は、周りに迷惑をかけないように、1人でいることがほとんどでした。
ある日、両親がお姉様のお見合い相手を探して手紙を出しておりました。遠い遠い国の暖かい国の王様に手紙を出していました。しかし、その王様は病気を患っており、迷惑をかけてしまうからという理由で、お断りのお手紙が返ってきたそうです。
お姉様は、病気の王様にはお姫様がお似合いだと、自分ではなく、お姫様を装ってお返事を書いてしまいました。
何も見えないということは書かずに出してしまったのです。
お姫様はお詫びのお手紙を書こうと思いました。
しかし、お返事を出す前にお姉様が送ってしまったお手紙のお返事が先に来てしまいました。
そこには、お姉様が書いたお手紙の内容に丁寧にお返事してくれていたのです。
どんなものが好きか、苦手か。
どんなことに感動するのか。
どんな本が好きとか。
些細なことにも丁寧にお返事していました。
お姫様はそのお手紙がとても嬉しくて、自分のことを隠して続けてしまったのです。
お城でひとりぼっちだったけれど、3日おきに届くお手紙が楽しみで、楽しくて仕方がありませんでした。
とある日のお手紙には、王様が自分のことについて書いていました。
病弱なことや、実は赤い髪がコンプレックスなことなど。
正直に書かれているそれを見て、胸が痛くなりました。
お姫様は、一度でいいから会ってみたいと思ってしまいました。たった一度だけ。元気をもらったことを直接お礼が言いたかったのです。
お姉様のときに、持病があるからとお断りしていたけれど、会ってくれるでしょうか。
もし会えたら、自分のことを話そうと思いました。
きっと、嫌われてしまうけれど。
祈るように待っていると、『私もお話してみたくなりました』とお返事してくださいました。
すぐに話が進んで、会えることになりました。
お姉様や両親に笑われたけれど、そんなことは気になりませんでした。
お姫様は王様に会えるのを心待ちにしていました。
王様の国にある、フレアブレイドという場所でお見合いをすることになりました。
馬車に揺られている間、どんなお話をしようか、想像を膨らませて。
約束の席に座っていると、王様がやってきました。
慌てている様子でした。
王様は燃えるような綺麗な赤色でした。
お姫様は、丁寧に挨拶をしました。
王様も丁寧に返してくれました。
優しい声色で、安心する人でした。
こんな人が王様だったら、国民達もとても優しいのだろうと思いました。
ご飯も美味しかった。
穀物や果物、スパイスの効いたスープ。
こんなに楽しい食事は初めてだった。
たくさんお話をして、笑って、楽しかった。
お別れの前に、王様がなぜ手紙を続けてくれたのかと聞きました。
お姫様は、全て正直に話しました。
姉が王様が病気だとしり、自分と見合い相手を入れ替えてお返事をしたこと。
謝ろうとしたけれど、手紙が楽しくて、そのまま続けてしまったこと。
そして、『何も見えないこと』も。
お姫様にとっては、王様の病気は些細なことだと思いました。それもそのまま伝えました。すると、少し驚いて、王様はお姫様のそれも、些細なことだとかえしてきました。
お姫様は驚きました。
自分の国で、そんなことを言ってくれる人がいなかったのです。
そして、王様はまた会いましょうと手を取ってくれました。
それから何度か会って、2人は結婚しました。
お姫様にとって、赤い王様は暖かいお日様でした。
王様の家族にも暖かく迎えられ、末長く、幸せに暮らしました。』
ロア
「……絵本っていうか半分日記…?」
ロアが手に持っていた絵本をぱたん…と閉じた。
ルシファー
「どれ?」
ロア
「この絵本。それになんか所々おかしいよ。盲目なのにまるで見えてるみたい。手紙も読めてるような書き方だし。王様も赤いってなんでわかるんだろう。不思議だな〜」
ルシファー
「絵本でしょ?半分本当で半分作り話なのかも」
ロア
「まぁ実話が元って書いてあるし…。お姫様って王妃様だった人かな?金を持ってるって…お金のことなのかもしれないけど金髪とも解釈できるよね〜。王妃様作の絵本読んだって思ったらちょっといいことありそう」
ルシファー
「目立つところに置いてあったし、国民からしても親しみのある絵本なのかも。手書き文字だし、素敵だよね」
話しながらロアは置かれていた棚に絵本を丁寧に戻した。
ロア
「手書き文字好きだね〜ルシファーちゃん。タイプライターのやつのほうが読みやすくない?」
ルシファー
「読みやすいけど、手書きの文字好きなの。癖とか見るの楽しいよ」
ロア
「不思議な趣味だね〜」
ルシファー
「アスくんにも言われる〜」
ロア
「んー!にしても、ソフィア姉さん集中力やばいね」
大きく伸びをしてソフィアに視線を移した。
ルシファー
「普通に会話はちゃんと聞いてるんだよねいつも」
ロア
「ほぇ…」
ルシファー
「わたしとラウルが話してたこととかちゃんと覚えてるの」
ロア
「聞いてないようで聞いてるやつね…。ん?」
ルシファー
「どうしたの?」
ロア
「ヘスティア姉さんが魔法使ってる…」
ソフィア
「ヘスが?」
ソフィアはすぐに顔を上げて立ち上がった。
ロア
「うん…結構強いやつ使ってる…!戦ってるのかも…!」
ソフィア
「っ…!行こう」
ルシファー
「う…うん!」
急いで本を片して図書館を出て行った。
ロア
「だから一緒に行くって言ったのに!」
ルシファー
「入口あそこかな!?」
ソフィア
「急いで!」
3人は内側への門の前に到着した。
ロア
「すみません!この中に入りたいんですけど!できれば急ぎで!」
ルシファー
「3人!3人入る!」
門番
「え…?」
ソフィア
「急いで手続きお願いできますか?」
門番
「あなた…あぁよかった…!無事に出られたのですね…!」
門番はソフィアの顔を見ると目を見開き、嬉しそうにしていた。
ソフィア
「え?」
門番
「本当によかった…!」
ソフィア
「っ…ヘスティアは!?私と同じ顔の!」
ソフィアは意味を理解した。
この門番はヘスティアが中から外に出てきたと思っているのだ。
門番
「え…?同じ顔…?」
ロア
「似た顔の人!態度がでかい金髪と優しい緑髪と一緒にいなかった!?」
門番
「い…いましたけど…え?違う人…?」
ルシファー
「やっぱりなにかあったんだ…!急ごう!中入るね!」
門番
「お…お待ちください…!この中に入るには誓約書にサインをいただく必要が…」
急にぺらぺらと話し出す門番。
ルシファー
「あの…!急いでて…!」
ロア
「(………契約魔術の術式…?)たぶんこの人の意志じゃない。言わされてるのかも…!」
ロアが目を凝らすと首元に鎖のようなものが巻かれている。
ソフィア
「書くから急いで!」
門番
「ぅ…印を拝見します」
門番の表情と行動が合っていないように見える。
ロアの言っている通り、自分の意志とは違うのだろう。
ロア
「筆借りるね!はい!次!」
ルシファー
「はい!」
ソフィア
「書いた。行くよ!!」
置いてある筆を取り、中身も読まずにサインした。
そしてすぐに行ってしまった。
ロア
「僕たちロスターだから!何かあっても知らんふりすれば大丈夫だからね〜!ごめんね〜!」
遠くから謝罪の声。
一瞬の出来事であった。
門番
「(あぁまた…また行かせてしまった…。私は何人見殺せばいいんだ…)」
机の上を転がる筆を見つめてまた自分を責めた。
ここを見送った旅人が戻ってくることは1度もなかったのだ。きっと今回も…。
ロア
「やっぱりここ何か術かかってるよ。そこ通った時変な感じした」
ソフィア
「ロアが黒いって言ってたの、術がかかってたからなのね」
ロア
「うん…。っ…!ディンも魔法使ってる!かなりやばいかも…!」
ルシファー
「プロジオンって人なのかな…あの時会った人…」
ロア
「ルークって危ない人には近寄らないし、違う人だと思うけど…」
ルシファー
「それもそっか…。っ!出口!」
門から続くトンネルを抜けた3人。
ロア
「(水路…こんなにたくさん水が…)」
ソフィア
「ロア!どこにいる?」
ロア
「お城の方!たぶんディンはダウンしたね…魔力があんまり感じない。ヘスティア姉さんとは離れてる。姉さんは一旦、魔力収まったから大丈夫かな」
ルシファー
「お城まで意外と距離あるね…!」
ロア
「ルシファーちゃん捕まって!上から行こう!」
ルシファー
「うん!」
ソフィア
「(ヘスティア…)」
ロアがルシファーを掴んでふわっと浮かんだ。
ソフィアもそれを追いかける。
ロア
「?なんか人が…避難してるのかな」
ルシファー
「離れて行ってるね」
ソフィア
「っ転んだ。揺れてるのかな」
空から見ているとどうやらお城の近くにいた人がお城の反対側にぞろぞろと移動していた。
一斉にしゃがみこみ、悲鳴をあげているようだ。
ロア
「っ…姉さんの魔力が遠ざかってる気がする。下に行ってるのかな…」
ソフィア
「地下があるのね…?」
ロア
「たぶん…!地揺れがあったのになんで地下に行くかな〜!もう!」
ルシファー
「っ!ロア!あそこ!!」
ロア
「ん?」
ルシファー
「襲われてる!!ヴァイスかも!」
ロア
「(こんな人が多いところに…?)」
ソフィア
「……ロア!先に行って!」
ロア
「え?」
ソフィア
「早く!絶対助けて!」
ロア
「っ…うん!約束する!」
ソフィア
「ルシファーは私とあっち!」
ルシファー
「わかった…!」
ロアはルシファーをソフィアに預けて城の中に向かった。
ソフィアとルシファーは襲われている国民を助けに向かう。
ルシファー
「よかったの?」
ソフィア
「私が言っても役に立たないから…ロアなら絶対守ってくれる。大丈夫…!」
ルシファー
「……うん」
『アルスダリアの祈り』第48話を最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
作者のミスで、48話を47話で投稿してしまいました…。
47話、48話同時公開ということで目を瞑っていただけたらとおもいます…!
戦闘中に急に絵本になって困惑した皆様、お詫び申し上げます…!




