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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編

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第45話 匂いに導かれて

ハルジオンに連れられて行くとルークとプロジオンが手を振って迎えてくれた。

ルークの膝もとにはぐったりとしているディンがいる。



プロジオン

「師匠!ご無事でしたか」


ジーク

「プロジオン…!よかった…」



ジークはプロジオンの頭をがしがしと撫でた。

プロジオンが慌てて身を引こうと動く。

 


プロジオン

「わっ!?し…師匠!火傷します…!」


ジーク

「そのまま」


プロジオン

「……あまり長い時間は…」


ジーク

「いいから。……でもよく無事で…」


プロジオン

「はい…!その、ルーク殿が上手く着地してくださって…!とにかく俺は大丈夫です。本当に不思議なんですがルーク殿もお元気です」



ジークは少し遠く、レヴィスたちと話すルークを見た。

あの爆破を受けても確かにけろっとしていた。

 


ルーク

「ヘスティア大丈夫?」


ヘスティア

「大丈夫ですよ」


レヴィス

「緑の子も無事だったんだな。良かった良かった」


ルーク

「うん!ありがとうヘスティアと一緒にいてくれて」



ヘスティアがレヴィスから降りてディンに声をかけた。



ヘスティア

「ディン?大丈夫ですか?……気を失っているんですね。それなら放置しましょうか」


レヴィス

「え!?放置?大丈夫なの?」


ヘスティア

「逆に意識がないほうが楽なんですよ。この子の場合。起きたら教えてください」


ルーク

「うん」


ハルジオン

「本当にごめんなさい…僕のせいでディンさんが…」


ヘスティア

「さっきも散々謝っていたでしょう。聞き飽きているんです、ごめんなさいは」


ハルジオン

「うぅ…」


ルーク

「大丈夫だよハルジオン」


レヴィス

「2人もこう言ってるんだ。本人が起きたら直接お礼を伝えればいいさ」


ハルジオン

「うん…でも僕、嫌われてるみたいだから話しかけられたら嫌って思うかも…」


ルーク

「喧嘩したの?」


ハルジオン

「してないですしてないです!たぶん…僕はそんなつもりないんですけど…。終始冷たいというか怒っているというか…」


ヘスティア

「ディンは基本的に他人嫌いなので…あとは余裕がなかったんでしょう」


ハルジオン

「そうなんですか…?2人きりの時とか怖かったんですから…!恩人だけど!!」



それぞれの無事を確かめ合い、ようやく一息つけた。



プロジオン

「それでルーク殿、大叔父上の…いえ、陛下の居場所はわかりますか?」


ジーク

「見つかったのか?」


プロジオン

「先ほど、ルーク殿が偶然にもお会いしたようで」


レヴィス

「捕まえなかったの?あ、捕まえるは失礼か…?」


ルーク

「うん。逃げちゃった」


プロジオン

「リリィ(使用人)が一緒にいて、リリィの救出を最優先してくれたんです」


ジーク

「リリィも無事か…!他の使用人たちは?」


プロジオン

「この時間に城内にいたのはリリィだけだったみたいです。現在は他のみんなも先ほど声をかけて城外に避難させました」


ジーク

「よかった」


レヴィス

「そんじゃ、気兼ねなく動けますね」


ヘスティア

「……待たなくていいですか?」



ヘスティアがディンを見てルークに問いかけた。

 


ハルジオン

「待つ?」


ルーク

「ディンがこの状態だし、できれば待ちたいけど…」



ルークが城の外を見て返事をした。



レヴィス

「誰を?」

 


その時。



ゴゴゴゴゴ…



ハルジオン

「揺れてます!!うわぁ!?」


ジーク

「伏せろ!」


プロジオン

「はいっ…!」



ジークがハルジオンに覆い被さるように抱き寄せた。



レヴィス

「揺れが大きくなってないか!?」



レヴィスはヘスティアの頭を守るように抱えた。

ルーク以外は立っていられず、体勢を低くして揺れが弱くなるのを待った。



ルーク

「(下だ…!)」


ヘスティア

「移動させます。ルークは案内を」


ルーク

「わかった!」



キィン…!

ヘスティアが黒色の魔法陣を展開し、プロジオンたちを浮遊させた。



プロジオン

「うわ!?」


ジーク

「なんだ!?」


ハルジオン

「またっ!?」


レヴィス

「(さっき瓦礫に使った時と同じ魔法か…!)このまま行く感じね!?」


ヘスティア

「これ以上、事が大きくなる前に原因を叩くべきでは?」



ルークはディンをしっかりと持ち、揺れの中走り出した。

城の奥へ、奥へ。



プロジオン

「ルーク殿!そっちは行き止まりです!!」


ルーク

「っ!でも、臭いが続いてるんだ!」



プロジオンが言う通り、行き止まりだ。

でも、臭いが続いている。

ルークはディンを一瞬浮かせ、臭いが強い場所を右脚で蹴った。



ドォン!!



レヴィス

「うぉ!?えぇ…!?脚で!?」


ハルジオン

「っ!見てください!あれ!」


プロジオン

「階段…なぜこんなところに」


ジーク

「いつのまにこんな場所が…」



地下階段の踊り場でヘスティアが魔法を解いた。


ゴゴゴゴゴ…

 

グル…ル…


奥から不気味な音と雰囲気が響いた。



レヴィス

「ヘスティアちゃん大丈夫?」


ヘスティア

「はい。今は」


レヴィス

「よかった。助かったよ。いやぁまじですごいね」


ハルジオン

「下…行きます…?」


ジーク

「………。(ハルジオンはここに残すべきか…?)」



ジークが不安そうな顔でハルジオンの方を見ていた。

それをまた、プロジオンが見ていた。

 


プロジオン

「全員固まっていきましょう。ここも崩れてしまうかもしれません」


ルーク

「ぼくが先頭歩くよ」


ハルジオン

「ディンさん抱えたままで大丈夫ですか?」


ルーク

「うん」



ルークを先頭に階段を下って行った。



レヴィス

「暗いっすね」


ハルジオン

「だいぶ下ってきたから明るさが…足元見えないです」


プロジオン

「ルーク殿、よく平気ですね?」


ルーク

「音が返ってくるから、なんとなく階段とか壁の場所とかはわかるよ」


プロジオン

「すごいですね…!」


レヴィス

「なんかこう、明るくする魔法とかってないんです?」


ヘスティア

「光があれば晶魔法で照らせますが、ここは光源が少ないです。炎魔法で照らすこともできますけど、爆発しても責任取れませんよ」


レヴィス

「晶魔法ってなに?」


ヘスティア

「あー…防御魔法のことです」


レヴィス

「あー!あれね!意外と魔法って結構制限あるんだね。ぽん!って光とか出せたりしないんだ」


ヘスティア

「そこに存在しないものを0から作れるわけないでしょう。井戸も川もない場所で水を汲んでこいと言われても無理なのと同じです」


レヴィス

「わかりやすい。魔法って万能なわけじゃないのね」


ヘスティア

「よくお分かりで」



しぃんと重たい空気がレヴィスとヘスティアの会話で少し和らぐ。

 


レヴィス

「……ヘスティアちゃんもだいぶだけど、ルークくんめっちゃ超人じゃない?」


ヘスティア

「……そうかもですね」


レヴィス

「脚で壁ぶっ壊すし、鼻も耳もいい。まるで獣みたいだ」


ヘスティア

「そう見えますか」


レヴィス

「え?まぁ…。でもどう見ても人だよな…?」



レヴィスが不思議そうに呟いた時だった。

 


ルーク

「ん?」


プロジオン

「どうしました?」


ルーク

「水の匂いが強くなった…国王様の匂いも」


レヴィス

「水?」


ルーク

「うん。あ、ここから水がある」



ぽちゃ…

ルークが足を水面に入れたようだ。



ルーク

「……変な匂いはしない…けど…」


プロジオン

「けど?」


ルーク

「国王様はどうやってここを通ったんだろう。すごく目がよかったのかな」


プロジオン

「確かに…」


ハルジオン

「それに結構深さがありますね。お年配がここを進むのはかなり大変そうです…」


 

膝ほどまで水に浸かる深さだった。

入るだけならばさほど大変ではないが、進もうとすると体力が削られる深さだ。

ルークに続いてみんなも水に足を入れた。



じゅ…しゅう…



ルーク

「ん?プロジオン?」


プロジオン

「わ!?あ!?これは…!」



プロジオンの方から、しゅう…っと水が蒸発するような音が聞こえた。



ヘスティア

「どうしたんです?」


レヴィス

「知らない感じか」


ヘスティア

「何がです?」


プロジオン

「すみません…」



元気のないプロジオンの声が響いた。

それからなかなか水に入ってこなくなってしまった。

 


ハルジオン

「プロジオン様…」


ヘスティア

「体温が高いくらい気にしませんよ」


プロジオン

「え!?」


ヘスティア

「図星ですか?適当に言ったのに」


レヴィス

「おぉ…」


ヘスティア

「理由は知りませんけど。合流した時もジークに火傷すると慌てていたでしょう?あと地下なのに妙に暖かいと思っていたんです」


プロジオン

「すみません…」


ヘスティア

「ここの国の人は謝り癖でもあるんですか?」


レヴィス

「いや、普通に性格」


ヘスティア

「いいじゃないですか。寒いの苦手なので助かります」


プロジオン

「え…?」


ヘスティア

「感謝してるって言ってるんですよ。早く行きましょう」


ジーク

「良かったな。プロジオン」


ルーク

「プロジオン?大丈夫?」



プロジオンが動かないのでルークが声をかけた。

 


プロジオン

「う…心臓が痛いです…」


ハルジオン

「え!?大丈夫ですか!?」


プロジオン

「わからない…こんなの初めてで…胸がすごく痛い…!」


レヴィス

「(うわぁ…ちょろすぎる…)」


ヘスティア

「なんかわたくしが悪いみたいな感じになるじゃないですか」


プロジオン

「ヘスティア殿は全く悪くありません…!あぁ動悸が…!」


ヘスティア

「なんですか。喧嘩しますか?」


ルーク

「しないしない」


ジーク

「ふふ…」


レヴィス

「なぁに笑ってんすか?」


ジーク

「いや…似ているなと」


レヴィス

「先代国王様とか?」


ジーク

「あぁ。とても」


 

レヴィスにそう返しながらジークは小さく笑った。

暗くて見えないが、きっとプロジオンの顔は赤くなっているに違いない。



ハルジオン

「プロジオン様しっかりー!」



一悶着あったが、プロジオンもとりあえず水面に足を入れた。しゅう…と音が続くが誰もそれを気にするそぶりはなかった。



プロジオン

「う…うるさくないでしょうか…」


ルーク

「全然」


ハルジオン

「プロジオン様の近く、水が暖かくていい感じです」


レヴィス

「結構水冷たかったし、ちょうどいいよな」


プロジオン

「……呪いを感謝されることがあるなんて」


ヘスティア

「わざわざ聞かなかったのに言うんですか」


プロジオン

「あ」


レヴィス

「もうこの際だから言っちゃえば?」


プロジオン

「………俺…私には『陽の呪い』がありまして…。こうして体温も高く、触れれば人の皮膚を火傷させてしまいます」


ヘスティア

「陽の呪い?陽って、空の?」


プロジオン

「ですかね。私も詳しいことはわからなくて…」



グル…ル…



ルーク

「っ!止まって」


ジーク

「どうした?」


ルーク

「なんか…いるかも。声みたいなのがした」


ハルジオン

「さっきのお化けみたいなのが出てくるんでしょうか…。ここで襲われたら何も見えないですよ…!」


ヘスティア

「ルーク、どう思いますか?」


ルーク

「遠くの方からだったから距離はありそう。…でも、少し先が深くなってるから、暗いと危ないかも」


ヘスティア

「そうですか」


レヴィス

「ヘスティアちゃん、さっきみたいに俺ら浮かせたりできないの?」


ヘスティア

「できますけど、その辺に顔面ぶつけても知りませんよ。わたくしもほとんど見えていないので」


レヴィス

「えぇ…それは痛そう」



ユゥン…



ジーク

「っ!波が…」


プロジオン

「大きいですね」


ハルジオン

「怖すぎませんか…!」


レヴィス

「このままルークくん頼りに進むか…?」


ルーク

「波があると逸れちゃった時が怖いよね…」



誰も決め手を見つけられずにいた。

ここまで来たら進むしかないのはみんなわかっているが、問題を解決する前に誰かがいなくなってしまうリスクを上げたくはないのだ。

 



ヘスティア

「……。じゃあみなさん一瞬、潜ってください」



ヘスティアがレヴィスから離れて声をかけた。

 


レヴィス

「え?」


ヘスティア

「顔までですよ。わたくしが水面を叩いたら上がってくださいね」


レヴィス

「ちょ、待って。鎧脱ぐから」



レヴィスとジークは胸当てや籠手を外し始めた。

 


ジーク

「…………。」



ジークは一瞬だけ兜に触れたが、結局外さなかった。

全員急いで水位が深くなっている場所へ移動する。



ハルジオン

「わ!深い…!」


プロジオン

「急に深いですね」


ルーク

「ヘス!準備いいよ!」



ルークはディンの口と鼻を手で覆って潜る準備をした。

『アルスダリアの祈り』第45話を最後まで読んでくださいましてありがとうございます。

地下に水が…!そしてプロジオン王子、少しずつ特徴が出てきていましたが、身体がめちゃくちゃ熱いです。

呪いを抱えていたみたいですね。

この会話、真っ暗闇で行われています。笑

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