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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編

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45/51

第44話 生きているなら

デューレブラッド城。

玉座にて。


ハルジオンが落下し、すぐにディンが後を追った。

ジークはそれを見ているしか出来なかった。


 

ジーク

「(届かなかった…!代わりに俺が落ちていれば…!なぜハルジオンなんだ…!!)」



ジークは急いで玉座を出て落下した2人を追った。

階段に向かい、降りようとした時にヴァイスが発生して邪魔をする。



ジーク

「退け!!!!」



ジークはランスに思い切り魔力を流す。

ランスは赤く染まり、ヴァイスを貫いた。



ジーク

「(アンデッドなど相手している時間などない…!急げ…!!1秒でも早く…!!!)」



らしくもなく、ランスを振り回し、乱暴に何度もヴァイスを突き刺した。

本来ならば確実に急所を狙う。

だが今は違う。焦りのまま何度も何度も突き刺す。

 

少しずつヴァイスの身体が焼け始め、塵となった。

階段を駆け下り、2人が落下した場所へ。



ジーク

「ハルジオン!!!ハルジオン!!!ディン殿!!どこだ!?ハルジオン!!!」



抜けた床の瓦礫を必死に退かした。

あの高さから落ちて無事では済まないことなんてわかっている。



ジーク

「ハルジオン!!返事をしてくれ!!ディン殿!!ハルジオン!!」



返事など返ってこない。下敷きになってしまったのか。

せめて生きてさえいてくれれば…そう祈って瓦礫を退かし続けた。

重すぎて動かない瓦礫をたった1人で。


籠手が割れ、爪が割れようと構わない。

今は一刻も早く2人を見つけなければ。



ジーク

「(俺はまた…また守れないのか…約束したのに…絶対に守ると約束したのに…!無理矢理にでも留守番させていれば…プロジオンと…ハルジオンを留守番させていれば…!俺は…)ハルジオン…!!ハル…!!」



プロジオンだって無事じゃないだろう。

ルークも、ディンも。巻き込んだのはジークだ。

ヘスティアも戻ってこない。

自分のせいで、5人が死んでしまったかもしれない。



ジーク

「(死ぬべきなのはいつも…俺なのに…!)」



血の滲んだ手で瓦礫を退かす。

痛みなど感じない。ただひたすらに瓦礫を退かした。

後悔が襲い、音も聞こえない。視界も涙で見えなかった。



レヴィス

「ジーク様!ジーク様!!やめてください!手が…!」


ジーク

「(俺は…)」


レヴィス

「師匠!!やめろって言ってるだろ!!」


ジーク

「っ…!?」



レヴィスがジークの腕を掴み、静止させた。

流石に掴まれたからか、レヴィスに気づいた。



ジーク

「レ…レヴィス…?」


レヴィス

「そうだよ!何やってんだあんた!!」


ジーク

「っ…ハルジオンがっ!!ハルジオンが瓦礫の下にいるんだ!!ディン殿も!!」


ヘスティア

「ディンもですか?」



ヘスティアがゆっくりこちらに向かって歩いてきた。

 


ジーク

「へ…ヘスティア殿…!?」


ヘスティア

「質問に答えてください」


ジーク

「ディ…ディン殿が…ハルジオンを追うように落ちてしまった…俺が…俺が代わりに落ちるべきだったのに…!」


ヘスティア

「ディンが一緒だったのならほぼ無事でしょうから、落ち着いてください」


ジーク

「え…?」


ヘスティア

「そこに2人はいないってことですよ。わかりますか?」



ヘスティアは言葉が理解できているか確認した。

 


レヴィス

「ですって師匠。だから大丈夫ですよ」


ジーク

「でも…確かに落ちたんだ…」



落下したのを直視したためか、そんなことはないと強く信じ込んでしまっているようだった。

 


ヘスティア

「……。(切り替えさせるためにも、見せたほうが早そう…)わかりました。離れてください」


レヴィス

「師匠、離れましょう」



レヴィスがジークの腕を取り、瓦礫から離れた。


キィン…


黒色の魔法陣が展開し、瓦礫を浮かせた。



レヴィス

「わぁすご」


ジーク

「瓦礫が…」


ヘスティア

「いないですね。だから大丈夫です。ディンも似たようなことができますので」



ヘスティアが魔法を解き、勢いよく瓦礫が落下した。

床に瓦礫がめりこむ。



レヴィス

「(ヘスティアちゃん結構雑だな…)」


ジーク

「よか…った…」



ジークはハルジオンとディンの姿がなかったことに安堵したのか、座りこんだ。

 


レヴィス

「(こんな師匠なかなか見れないよな…)ずっと声かけてたのに全然気づかないんだもん師匠」


ジーク

「すまない…」


ヘスティア

「げほっげほ…じゃあいきま…すよ」


レヴィス

「ヘスティアちゃん大丈夫!?」



魔法を使って疲れたのか、ヘスティアがまた咳き込んだ。

 


ヘスティア

「…大丈夫です」


ジーク

「……ヘスティア殿…ありがとうございます」


ヘスティア

「いえ」



ヘスティアがレヴィスの方を見た。



レヴィス

「ん?え?あ、運ぶ?」


ヘスティア

「はい」


レヴィス

「仰せのままに」



レヴィスは笑って快くヘスティアを抱き上げた。



ジーク

「2人はなぜ一緒に?」


ヘスティア

「外で会ったんです。話がわかる人で助かりました」


レヴィス

「詰所でジーク様がハルと一緒に家に連れて行ったでしょう?なんかあるんだろうなって思ってさ」


ジーク

「そうか…」


レヴィス

「ヘスティアちゃんから、ちょこっと聞きましたよ。あとはまぁ…色々見ました」



ジークはレヴィスを見て困ったように眉を下げた。

 


ジーク

「……そうだ…あいつはどうなった…?」


ヘスティア

「今はどこかに逃走中です。生きてますよ。それと契約に関してですが、貴方の契約相手は神官ではなさそうです」


ジーク

「そうですか…」


レヴィス

「契約?とかそういうのってすぐわかるもんなんです?」


ヘスティア

「契約魔術の仕組みがわかっていれば。契約魔術というのは条件を強くすればするほど、対価と魔力が必要なので。わたくしと戦闘になった時に戦えすぎていました」


レヴィス

「あんま詳しくないけど、魔力が使えすぎてたからおかしいってこと?」


ヘスティア

「そんな感じです。ただの口封じだけじゃなくて、周りにバレにくいように行動させるくらいなのでかなり強い契約に思えます」


ジーク

「でも…俺は……。……っ…」



ジークの口がごもる。



レヴィス

「ジーク様?」


ヘスティア

「口封じですね。何か言いたいのでしょうけど」


レヴィス

「そっか…(本当に喋れないんだ…)」


ヘスティア

「関与はしているけど、契約自体は交わしていない…って感じですかね」


レヴィス

「ややこしい感じ?」


ヘスティア

「そんなところです」


レヴィス

「……え?終わり?」


ヘスティア

「え?今のでわかりませんか?」


レヴィス

「俺らにはちょっと…ねぇ?ジーク様」


ジーク

「そうだな…」


ヘスティア

「…………めんどくさい…」


レヴィス

「……ですって」


ジーク

「ざっとでも良いので…」



ヘスティアは少し考えてから口を開いた。

 


ヘスティア

「可能性が極めて高いのは、多重契約です」


レヴィス

「(説明してくれるんだ…優しい…)」


ジーク

「多重契約?」


ヘスティア

「はい。神官がすでに契約している相手と強制的に契約を結ばされた…ってところですかね。今のでわかります?」


レヴィス

「なるほどね…じゃあその相手って…」


ジーク

「……陛下…」


ヘスティア

「神官とグルでしょうね。どんな取引をしたのか気になります」


レヴィス

「国王様と神官様からするとジーク様は邪魔…ってことだよな」


ヘスティア

「口封じするほど隠したい何かがあるのに、危険因子を排除しない理由…国民を信用させるためでしょうか。国の重要人物がみんないなくなったら、疑われますもんね」


レヴィス

「先代国王様たちのこと?」


ヘスティア

「はい。私もグレンロックで聞いただけですが。行方不明なのでしょう?」


ジーク

「っ……っ……!!」


レヴィス

「ジーク様…?大丈夫?また喋れないのか」


ヘスティア

「この国で、このジークだけが真実を知っていて、でも誰にもそれを伝えられない。何もできない状態なのでしょう」


レヴィス

「ジーク様…」


ヘスティア

「疑う者がいなければ、それについて聞かれることもないでしょうから。ジークの口封じも不思議に思われない。他人と接触していて口封じが発動する機会すら少なかったのでは」



プロジオンの落とし物がなければ、それをルークが届けようと国の奥まで入ってこなければ、それにヘスティアがついて来なければ、ジークの契約について誰かが知ることはきっとなかっただろう。

ジークが頭を下げてヘスティアに頼み込んだのも、これから先、こんな奇跡は起こらないと思ったからだった。




レヴィス

「亡くなられていない可能性は?」


ヘスティア

「本当に行方不明でどこかに逃亡でもしているのなら、それはそれでいいでしょう。でも、それなら最も近くにいた従者を口封じしている理由がないかと」


レヴィス

「確かにそれもそうか…。でも会ってみたかったな」


ジーク

「…………。」


ヘスティア

「そういえば、プロジオンには聞かれなかったのですか?両親がいなくなったら流石に気にしそうですけど。形見を持っているくらいですし」


ジーク

「っ………。」


レヴィス

「あーえっと。俺がわかる範囲だけど。行方不明になったのはプロジオンが小さい時だったから、プロジオンはあんまり覚えてないらしい。なんとなく、髪の色とかは覚えてるらしいけどね。あと、ジーク様の姿を覚えていたらしくて、詰所に小さい時に遊びに来てたりとか」


ヘスティア

「なるほど…。両親よりジークのほうが覚えてるんですね」


レヴィス

「ジーク様、先代国王様たちの騎士だった時も頭から足の爪先までずっと鎧姿だったから印象的だったんじゃない?」


ヘスティア

「まぁ…確かに印象的ではありますね…」


レヴィス

「先代国王様は、プロジオンと同じ赤髪だったらしいよ。王妃様は金髪でさ。絶対綺麗だったよなぁ」



そうしてしばらく歩いていると。

足音が近づいてきた。



ジーク

「っ…!」



ジークが目を見開いた。

 


レヴィス

「お?」


ハルジオン

「っ!!ジーク様!!」



曲がり角の視界からハルジオンが出てきたのだ。


ジークは周りを気にせずハルジオンの元に走り出した。



ハルジオン

「わ!?」


ジーク

「よかった…無事で…あぁ本当に…!怪我はないか…?痛むところは!?」



ジークがハルジオンを思い切り抱きしめた。



ハルジオン

「大丈夫です…!ディンさんが助けてくれて…ごめんなさい…心配かけて…。ジーク様を待っていようと思ってたんですけどディンさんがスタスタ歩いて行っちゃって…でもジーク様ならひとりでも大丈夫だと思って…」


ジーク

「いい…生きているならいい…」


ハルジオン

「ジーク様いつも心配症ですけど今日はすごい心配性ですね」


レヴィス

「瓦礫の下敷きになったって思ったらこうなるだろハル」


ハルジオン

「レヴィス兄ちゃん!」


ヘスティア

「にいちゃん?」


レヴィス

「可愛いでしょ」


ハルジオン

「あっ…えっと…!レヴィスさん…!ヘスティアさんも…!なんで抱っこ?」



ハルジオンは顔を赤くして、もしょもしょと呼び方を変えた。

 


レヴィス

「ちょっとお疲れなんだよ」


ヘスティア

「ディンはどうしました?」


ハルジオン

「っ!こっち!こっちです!ルークさんもいます!プロジオン様も!」


ジーク

「っ!プロジオンも…!ディン殿も、ルーク殿も無事か…!?」


ハルジオン

「はい!ディンさんだけぐったりしてるんです…。ルークさんがヘスティアさんに会えれば少し良くなるって…!」


ヘスティア

「発作ですか。どこかで戦闘にでもなりましたか?」


ハルジオン

「はい…と…とにかくこっち!」



ハルジオンが早く早く!とジークの腕を引っ張り、その後ろをレヴィスがヘスティアを抱えながら追いかけた。

『アルスダリアの祈り』第44話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


レヴィスさんはハルジオンくんからすると、お兄ちゃん的存在みたいですね。可愛がられてます。

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