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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編

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43/51

第42話 王の不在

ドォン!!!



レヴィス(若い聖騎士)

「っ!?なんだ…!?」



レヴィスがヘスティアを抱えて城の方へ歩いていると大きな音が鳴り響き、地面が少し揺れた。


 

ヘスティア

「………城の…ほうですね…」


レヴィス

「起きた…?具合大丈夫?」


ヘスティア

「はい…薬が効いてきました…」


レヴィス

「それはよかった…。……城にジーク様やプロジオンたちもいるんだよね?」


ヘスティア

「そのはずです…。あの…自分で歩きます」


レヴィス

「嫌じゃなかったらこのままでいいよ?」


ヘスティア

「……ありがとうございます…」



ヘスティアはそのまま体重をレヴィスに預けることにした。呼吸は整ってきたものの、具合が悪そうだ。



レヴィス

「……今日は何が起きてるんだか…。こんなに忙しいのは初めてだよ」


ヘスティア

「そうですか…」


レヴィス

「俺たちが暇なのはいいことなんだけどね。いつもが割と暇だからさ」


ヘスティア

「案外…焦ってないですね」


レヴィス

「まぁ…ジーク様もプロジオンも俺より全然強いし…ハルはめっちゃ心配だけど。どちらかが守っているだろうからきっと大丈夫」


ヘスティア

「……この国に来て、初めて人と話した気分になりました」


レヴィス

「?どういうこと?」


ヘスティア

「この国の人はその…いい意味でも悪い意味でも人間味が薄いと言いますか…」


レヴィス

「……あー…言いたいことはなんとなくわかる」


ヘスティア

「貴方はこの国の人ではないみたいです」


レヴィス

「おーわかる?俺この国出身じゃないからさ」


ヘスティア

「え?なんかすみません…」


レヴィス

「いいのいいの。外国から来ると結構この国は不気味に見えると思うよ。俺はだんだん慣れちゃったけど」


ヘスティア

「どうしてこの国に?」


レヴィス

「どうして…ねぇ…観光?なんつて」


ヘスティア

「言いたくないならいいです」


レヴィス

「冗談冗談!…本当言うと子供ん時、ジーク様に拾ってもらった。俺の故郷、クロスベックっていう小さな村だったんだけど、アンデッドに襲われちゃってさ」


ヘスティア

「クロスベック…初めて聞きました」


レヴィス

「今はもうないところだし。喪失?だっけ。村があったところはもう穴が空いちゃってて跡形もない感じ」


ヘスティア

「……そうですか…お気の毒でしたね…」


レヴィス

「俺最低でさぁ…なんか、半分すっきりしたんだよ。クロスベックって人身売買で成り立ってた村だからさ。大人たち大っ嫌いだったし。俺ちょうど売られかけてて、檻みたいのに入ってたから助かったんだよね」



眉を下げて少し困った顔で笑いながらレヴィスは話していた。

 


ヘスティア

「そうでしたか…」


レヴィス

「初対面なのにさ、俺のこと大事そうに抱きしめてきてさ。俺もチビ(子供)だったからさ、流石にアンデッド怖かったわけ。年齢相応に泣きついたよ。まぁ今でもアンデッド出てきたら腰抜かす自信あるけど」


ヘスティア

「……(ジークは子供が好きなのでしょうか…ハルジオンのことも大事にしていましたね…)」


レヴィス

「まぁそれで保護されて。なんか大人に抱きしめてもらったの初めてだったからさ。嬉しかったんだよねたぶん。それからジーク様に懐いて今に至るって感じ」


ヘスティア

「命の恩人的な」


レヴィス

「そうそれ。だから国に恩があるっていうよりはジーク様本人にってところ。ハルもプロジオンも歳近いから馴染みもあるし」


ヘスティア

「あぁそれで…呼び捨てだと思ってました」


レヴィス

「やべ…呼び捨てにしてた?外だと気をつけてるんだけど…ヘスティアちゃん聞き上手だからつい」


ヘスティア

「一方的に貴方がお喋りなだけです…」


レヴィス

「そうとも言うな」


ヘスティア

「神官様についてはどうだったのですか?」


レヴィス

「神官様ねぇ…俺昔からあの人苦手でさ…」


ヘスティア

「そうなのですか?」


レヴィス

「今日初めて顔見たけど…なんかこう…視線?みたいなのが怖かったし…。なんか気持ち悪いなぁって…でもあんなかわいい系の顔してるとはなー。でも俺がチビの時から大人の人だったし…先代国王様の時から神官してるって話だからあの若さは可笑しいよな」


ヘスティア

「貴方以外に違和感を持っている人はいないのでしょうか」


レヴィス

「んーどうだろ。まぁ見たっしょ?神官様がこうだって言ったことに疑問を持たないんだよ。長い間苦しんでた水不足を解決したり、国民なら金も取らずに供給したり。神様みたいに思っちゃってるんじゃない」


ヘスティア

「なるほど」


レヴィス

「ジーク様は…ヘスティアちゃんのこと待ってたんだよ。ずっと」


ヘスティア

「……何か知ってる口ぶりですね」


レヴィス

「まぁ、少し…ね」


ドォン……


また城の方から音が響いた。

レヴィスは足を速める。



ヘスティア

「……レヴィス…」


レヴィス

「なに?」


ヘスティア

「……緊張してます?」


レヴィス

「……めっちゃしてるよ。普段こんな大胆なことしないんだよ俺」


ヘスティア

「随分と饒舌だなと思って…」


レヴィス

「ごめんね!?」


ヘスティア

「別に責めてません…」


レヴィス

「あ、そう?」


ヘスティア

「えぇ」


 

ドォン……


再び城の方から轟音が響く。

レヴィスの表情から笑みが消えた。


 

レヴィス

「急ごう」


ヘスティア

「はい」



デューレブラッド城 場内



ハルジオン

「ルークさん…ディンさんに会えたかな…」


プロジオン

「きっと会えてるよ」


ハルジオン

「……プロジオン様…」


プロジオン

「うん?」


ハルジオン

「……ディンさん…大丈夫かな…」


プロジオン

「きっと大丈夫だよ。ハルジオンが急いで知らせに来てくれたから、ルーク殿もすぐに行けたんだから」


ハルジオン

「……はい…」


プロジオン

「俺たちは大叔父上を探すんだ。玉座にいないとなると…」



ふと嫌な考えが脳裏をよぎる。



プロジオン

「ご無事だといいんだけど…」


ハルジオン

「……心配ですか?」


プロジオン

「もちろんだよ」


ハルジオン

「でも…プロジオン様…国王様に…」


プロジオン

「うん。それでも、無事でいてほしいとは思うよ」


ハルジオン

「……ごめんなさい。変なこと聞いて…」


プロジオン

「ううん。気にかけてくれてありがとう」



3階の廊下の最奥。

重厚な扉の前で、プロジオンは足を止めた。



プロジオン

「(玉座にいないならここにいらっしゃるはず…)」



プロジオンは深呼吸をして扉をノックした。



プロジオン

「陛下…失礼します」


 

ギィ……


プロジオンとハルジオンが部屋へ入る。

背後で扉が静かに閉まった。



プロジオン

「陛下…?いらっしゃいますか?」



プロジオンとハルジオンが部屋の奥へ進む。


だが。


部屋は静まり返っていた。

ベッドにも。執務机にも。人の姿はない。

 


プロジオン

「いない…」


ハルジオン

「一体どこに…」


プロジオン

「(ここでもない…本当にどこに…?他の部屋にいるところはあまり見たことがない…他の部屋に…?)ハル、移動しよう」


ハルジオン

「っ!はい…!……ん…?あれ…?」


プロジオン

「?どうしたの?」


ハルジオン

「あ…開かないです…!開かな…!開かない!!」


プロジオン

「え?」


 

ハルジオンがドアノブをひっぱったり、扉を叩いたりするがびくともしない。



プロジオン

「ほ…本当に?貸して!」



プロジオンが代わって扉を開けようとするが開かない。

やむを得ず、剣で扉を壊そうとしても壊れない。



プロジオン

「どうなってる…!」

 


ガタガタガタ…

 


ハルジオン

「っ!?プロジオン様…!あれ!あそこ…!」


プロジオン

「……?」


 

振り返る。部屋の隅。いつの間に現れたのか。


1体ではない。2体。3体…

玉座の間で戦ったヴァイスと同じ死体が、そこに立っていた。

いや、違う。

足元の影から、さらに腕が這い出してくる。

 


プロジオン

「っ…!さっきの…!」


ハルジオン

「また…!?神官様が近くにいるのでしょうか!?」


プロジオン

「わからない…!ハル!!俺の後ろへ!」


ハルジオン

「…っはい…!援護します…!」



ミシッ。



ヴァイスが這い出る。




ハルジオン

「来ます!」



最初に飛び込んできた1体へ槍を突き出した。



ドッ!!



胸を貫く。だが止まらない。


 

ハルジオン

「っ…!」

 


槍に魔力を込める。槍先が赤く変色した。



ボォッ!!



炎が死体を焼き、動きが鈍った。



ハルジオン

「プロジオン様!」

 

プロジオン

「っ!次だ!!」



プロジオンがさらに切り込む。

すぐに次の1体を倒しに動いた。



ハルジオン

「はい!」


 

プロジオンが前へ出た。剣が赤く発光する。


ザンッ!!


一閃。ヴァイスごと炎が走った。


ドォッ!!


死体が燃え上がる。



ハルジオン

「(すごい…!!)」


プロジオン

「(あと2体…!)」



プロジオンがヴァイスからの攻撃を交わし、剣を振った瞬間…!


ガッ!!



プロジオン

「っ…!」



狭い部屋での戦闘。

プロジオンの剣先が部屋に引っかかってしまった。



ハルジオン

「プロジオン様!」



ハルジオンが槍をヴァイスに突き刺して援護する。



プロジオン

「助かった!」


ハルジオン

「はい!」



ハルジオンが止めている間にプロジオンが体勢をすぐに整えて切りつける。


次で最後の一体だ。

でも、もしかしたらまだ這い出てくるかもしれない。



プロジオン

「ハル、魔力を思い切り込めるから、時間を稼いでほしい。扉を壊す。城内中央は人がいない」


ハルジオン

「っ!わかりました…!」



プロジオンは手元に集中する。

強く持ち手を握り、剣に魔力を込める。



ハルジオン

「(変に突っ込んじゃダメだ…向かってきたのを的確に去なす…!!)」


 

ヴァイスが床を蹴った。


 

ハルジオン

「っ!」



槍を握り直す。

突くのではなく、払う。


ガンッ!!


横薙ぎに振った槍がヴァイスの肩を叩き、軌道をずらした。


倒せない。

でも、それでいい。



ハルジオン

「(顔は見るな…!絶対に僕より後ろにいかせるな…!)」

 


ハルジオンはすぐに槍の石突きを床へ叩きつけた。


ドンッ!!


床板が跳ね、ヴァイスの腕が一瞬止まる。


 

ハルジオン

「(熱い…!!)」


 

背後で熱が膨れ上がる。

プロジオンの剣が、眩しいほど赤く染まっていた。



プロジオン

「………。」

 


空気が熱い。

肌が焼けるようだった。



プロジオン

「っ…!」



プロジオンが扉に向かって剣を振り下ろす。

びくともしなかった扉が砕け散った。

 

プロジオンが瞬時に向き直る。

ヴァイスはなおもハルジオンへ食らいつこうとしていた。


プロジオンの身体が熱を纏う。

 

 

プロジオン

「はぁあ!!」

 


ザンッ!!


炎を纏った剣が死体を両断した。



プロジオン

「………ふぅ…」


ハルジオン

「……はぁ…はぁ…はぁ…」


プロジオン

「ありがとうハル。おかげで扉が壊せたよ。……?ハル?」



プロジオンはそこでようやく、ハルジオンの顔が真っ赤になっていることに気づいた。

息も上がっている。

熱に当てられたのだ。



プロジオン

「い…急いで部屋を出よう!」


ハルジオン

「はい…!」



先ほどのが最後の一体だったらしく、また湧き出てくることはなかった。



プロジオン

「(入ったら作動するような罠だったのだろうか…。陛下がよくいる部屋に細工されてたとなると…)」


ハルジオン

「プロジオン様大丈夫ですか…?」


プロジオン

「え?あ…あぁ…大丈夫だよ」


ハルジオン

「国王様…どこにいるんでしょうね…」


プロジオン

「うん…」



『アルスダリアの祈り』第42話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


国王様がいずこに…?

ディンくんがダウンしてしまっていますが、ヘスティアちゃんが回復してきましたね。みんなどうか無事で…

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