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アルスダリアの祈り  作者: 瑝覇
???編

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36/51

第35話 扉の前

プロジオン

「珍しいですね。師匠も。ハルジオンも。ムキになるなんて」


ジーク

「…………。」


プロジオン

「いい話…ではないですよね…?」


ジーク

「俺は…今から人を殺しに行く」


プロジオン

「っ…!」


ジーク

「…きっと二度とない好機だ…今…今討たねば…」


プロジオン

「……それに、ハルジオンを巻き込みたくないと」


ジーク

「あの子の前で殺しはしたくない…プロジオンはもう大人になったが…あの子はまだ子供だ…。無論、プロジオンの前でもしたくないが」


プロジオン

「師匠は、いつでも俺とハルジオンを守ってくれますね」



プロジオンがわずかに目を細めた。



プロジオン

「…同じように、父と母のことも守っていてくれたのでしょうね」


ジーク

「………。」



ジークは言葉を飲み込んだ。

 

 

プロジオン

「…俺もついていきます」


ジーク

「え…?」


プロジオン

「人を殺めるなんて、正直やめてほしいです。反対です。でも、師匠が…意味もなくそんなことをするとは思えません。理由があるはずです。もしも貴方が間違えていたなら、俺は王子として貴方を止めましょう。それまでは、弟子として、貴方の力になりたいのです」


ジーク

「……っ…」


プロジオン

「きっとハルジオンも同じですよ師匠。貴方の力になりたくて仕方がないのでしょう」


ジーク

「プロジオン…」


プロジオン

「……家族なら、尚更です」


 

ジークが息を呑んだ。

 


プロジオン

「俺も、ハルジオンも貴方に育てられましたから」


ジーク

「っ…」



ジークは唇を噛みしめた。

プロジオンはそれを静かに見つめ、少しして目を逸らした。

 


プロジオン

「それにしても、城…ですか…」



プロジオンの顔つきが変わった。



プロジオン

「俺も、これを機に確認したいことがあります」


ジーク

「行方不明者のことか?」


プロジオン

「はい。弱者の失踪…行方を探していましたが…確証が得られなくて詰められませんでしたが…」


ジーク

「………そうか」


プロジオン

「ともかく、あれですね。ハルジオンをどうしましょうね」


ジーク

「そ…そうだ…。留守番はもう受け入れないだろうから、連れていくには連れていく。タイミングを見て、うまく離脱させられれば良いのだが」


プロジオン

「ハルジオンは俺が。きっと、ジーク様が俺の護衛をしてほしいとでも言えば、そばにいてくれるでしょうから」


ジーク

「そうだな…。ありがとう…」



 ✴︎



ジーク

「ハルジオン」


ハルジオン

「ジーク様…!プロジオン様!」



ジークとプロジオンが別室から出てきた。

答えが出たようだ。



ジーク

「ついてくることは許可する。でも、プロジオン様のそばを離れないように」


プロジオン

「ハルジオンには俺の護衛をお願いしたいんだ」


ハルジオン

「…っ!はい!頑張ります!!」


ヘスティア

「決まったようですね。先ほども申し上げましたが、わたくしたちが一緒にいるのは夕刻までです。お忘れなきよう」


ジーク

「はい」


ディン

「君も来るんだ?」


プロジオン

「城は私が詳しいので。色々とご案内できると思います」


ヘスティア

「そうですか。では早く参りましょう」



ジークの家を揃って出た。

聖騎士の詰所を横に、城に向かった。



 ✴︎


プロジオン

「戻ったよ」


使用人

「…!プロジオン様!おかえりなさいませ!あ…!ジーク聖騎士団長まで…!」


ジーク

「ご苦労」


ハルジオン

「お疲れ様です!」



城の使用人だろうか。

上品なメイドのような格好で城前で掃き掃除をしていた。

スカート丈が長くて少し動きにくそうに見える。

こちらに気づくと丁寧にお辞儀をしてくれた。

 


プロジオン

「清掃ありがとう。適度に休憩するように」


使用人

「とんでもございません。お気遣いもありがとうございます。お客様方、お足元にお気をつけてお通りください」


ルーク

「ありがとう!」


ヘスティア

「………どうも」


ディン

「………。」



ディンとヘスティアが使用人を上から下へ見て通りすぎた。

使用人を過ぎて、プロジオンが城の扉を開けた。



ディン

「あれは君の趣味?」


プロジオン

「趣味?なんのお話ですか?」


ディン

「いや、いい趣味してるなと」


ヘスティア

「彼女たちのような方が城の手入れを?」


プロジオン

「あぁ…そういう話でしたか。…そうですね。お願いしております」


ヘスティア

「……そうですか」



ヘスティアが使用人がいた方向を見てすぐ視線を戻した。

 


ディン

「随分と時間がかかりそうだけど」


プロジオン

「良いのです。時間はかかるかもしれませんが、みんな一生懸命、丁寧にやってくれますので」


ディン

「ふぅん…ただ働きさせてるの?」


プロジオン

「金銭はお渡ししていません…。代わりに部屋と食事を」


ディン

「へぇ…優しいねぇ。随分と。まぁ安上がりでいいわけだ」


ハルジオン

「…ディンさんって皮肉言わないと死ぬんですか?」


ディン

「思ったことを言ってるだけ。我慢しないで言うことにしてるのさ」


ハルジオン

「うわぁ…」


ジーク

「やめなさい2人とも」


ルーク

「あ、また使用人さん?だ」


使用人

「!プロジオン様!…と聖騎士団長様!と、お客様ですか?」


プロジオン

「走ったら咳が出るよ!歩いて歩いて…!」


使用人

「あぁ申し訳ありません…!」


プロジオン

「無理しちゃだめだ。適度に休憩を」


使用人

「ありがとうございます…!皆様どうぞごゆるりと」


ルーク

「どうもありがとう」



ルークがばいばーいと手を振った。



ヘスティア

「随分と、親しまれているのですね。グレンロックでもそうでしたが」


ハルジオン

「プロジオン様は優しいですから!」



えっへん!と自分のことのように誇らしくハルジオンがそう言った。



ディン

「身体が弱い人ばかりなんだ」


プロジオン

「外では働けない者が多いです。でも、些細な問題です」


ジーク

「………。」


 

ジークの眉がわずかに動いた。

 


ヘスティア

「………。(些細…)」


プロジオン

「彼らは一生懸命です。私はそれを尊重したい」


ルーク

「この階は全然人がいないね」



1階から2階へ移動した。

2階には使用人が全然いない。そもそも人気ひとけがない。



プロジオン

「2階は王室なので。決まった時間以外は人が出入りしないのです」


ルーク

「ぼくたち入って大丈夫なの?」


ジーク

「我々の客人だと言えば大丈夫だ」


ハルジオン

「僕もここ来るの初めてです…!」


ヘスティア

「……不気味ですね。静かすぎます」



あたりを見回しながら、大きな扉の前に着いた。

空気が重く感じられる。

 


プロジオン

「……この先に、国王と神官がいます」


ジーク

「………。」



ジークは拳を強く握った。

 


プロジオン

「……開けます」


 

プロジオンは一呼吸おいた。

そして、静かに扉を開けた。




 

『アルスダリアの祈り』第35話を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。


しーんとしたお城…不気味ですね…

ついに扉を開けてしまうのですね…!!

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