第31話 聖騎士長の契約
ヘスティア
「契約魔術ですね…どんな取引を?」
ジーク
「……っ…!」
ディン
「……結構強くかかってるんだね。そんなに信用している相手と口封じの契約結んだの?」
ヘスティア
「……まぁ、いろんな事情があるんじゃないですか」
ジーク
「……貴方は…これが…と…解けるのか…?」
ヘスティア
「解けますよ」
ジーク
「……っ!なら…是非解いていただきたい…!あぁこんなことが起きるなんて…神よ…感謝します…」
ヘスティア
「…解きませんけど」
ジーク
「っ!?なぜ…」
ディン
「こっちにそんな義理ないし」
ジーク
「それは…そうですが…」
ディンが冷たく冷静に言い放った。
ディン
「あんまり首突っ込まないほうがいいよぉヘスティア姉さん。ルーくん説得して早く帰ろうよぉ。この人も国から出て〜って言ってるじゃん」
ジーク
「状況が変わりました…もう少し話させていただきたい…!ヘスティア殿、解けるのに解けないとは…?」
ヘスティア
「無理やり解除すると、何が起こるかわかりませんから」
ディン
「姉さんってば」
ヘスティアとジークがディンをそっちのけで話を続けた。
ジーク
「……自力で解除する方法は…ありませんか…?」
ヘスティア
「状況的に強制契約でしょうから、契約者が自力で解除するのは無理でしょうね。術者が解除しないと」
ジーク
「術者が解除する以外は…」
ヘスティア
「更に強い術者が契約を上書きするかですね。保険をかけていた場合が面倒ですが…わたくしが懸念しているのがその保険の部分です。まぁ、一番手っ取り早いのは術者を殺してしまうことですね」
ジーク
「何度か試みたことがありますが、攻撃できませんでした…」
ヘスティア
「でしょうね」
ディン
「(空気扱いですかそうですか…。ルーくんのとこ戻ろうかなぁ)」
✴︎
ハルジオン
「……ジーク様たちお話長いですね…」
ルーク
「ハルジオン、さっきのお茶また飲んで良い?」
ハルジオン
「え?あ、はい。もちろん…!喉乾いてるんですか?」
ルーク
「ちょっとだけ」
ハルジオン
「……あの…ルークさん、さっきの…火傷とか本当に大丈夫でした?」
ルーク
「ほ…本当に平気だよ!びっくりさせてごめんね」
ハルジオン
「平気ならいいんです…!」
ルーク
「……火傷…苦手?」
ハルジオン
「ん…?あぁこれですか?」
ルークが控えめにハルジオンの腕を見てそう言った。
よく見ると少しだけ腕の色の変色している。
ハルジオン
「確かに火傷なんですけど…ふふ…これは良い火傷なので!単純にルークさんが心配でしつこく聞いたんですよ」
ハルジオンが少し誇らしげにそう言った。
ルーク
「良い火傷…?」
ハルジオン
「はい!良い火傷です」
ルーク
「……良い傷ってあるの…?」
ハルジオン
「僕にとってはって感じですね。ちょっと色々あって、火傷させられちゃったんですけど、僕にとっては良い傷なんです。お相手はすごく気にされるんですが…。何度も気にしないでって言ってるけどなかなか折れてくれなくて」
ルーク
「そうなんだ…。……ハルジオンとその人は、今は仲良し?疎遠になっちゃった?」
ハルジオン
「仲良しです!ふふ」
ルーク
「仲良し…そっか…そうなんだ」
ハルジオン
「はい!お茶入りましたよ!どうぞ。ゆっくり飲んでくださいね」
ルーク
「…ありがとう。…わぁ…ハルジオンのそのマグカップ綺麗な柄だね」
ハルジオン
「そうでしょう!"ハルジオン"っていうお花があるらしくて…本物は見たことないんですけど…。そのお花の柄なんです!ジーク様がお誕生日にくれたんです。ずっと気に入ってて大事に使ってます!」
ものすごく嬉しそうに話すハルジオン。
ルーク
「そうなんだ!君と同じ名前のお花があるんだね。良いお父さんだね」
ハルジオン
「え?あぁいや。ジーク様はお父さんじゃないですよ!僕、孤児で…ジーク様が拾ってくださったんです」
ルーク
「えぇ??そうなの…?お父さんじゃない……??似てるのに…?」
ハルジオン
「そうですか?でもほらジーク様、黒髪だし…。独身だし…。え?でも似てる?ジーク様お顔隠れてるのに」
ルーク
「臭いがすごく似てるよ?あと雰囲気も」
ハルジオン
「臭い?ルークさん鼻いいんですか?あはは!犬ちゃんみたいですね!」
ルーク
「あ…うん…!ちょっと鼻いい!」
ハルジオン
「でも臭いかぁ…同じお家に住んでるからじゃないですか?お洗濯も一緒にしますし」
ルーク
「そっか」
ハルジオン
「僕は父のように思ってますけどね!でもジーク様からしたらただの居候ですよ…大きくなったのでそろそろ聖騎士の寮に入りたいのですが、まだ見習いだからお許しが出ないんです」
ルーク
「そうなんだ…。聖騎士さんって大変だね」
ハルジオン
「大変ですけど、他のお国に比べたらお仕事が少なめだそうですよ!犯罪も全然ないから…。郵便局の警護と、あとはレブラ地方の見回りを少々って感じで。近年は式典とかがないので、国王様の警護もありませんし…」
ルーク
「ここの国の人たちすごく優しいもんね」
ハルジオン
「はい!お仕事は少ない…みたいですけど、僕、ジーク様とプロジオン様に憧れてて…おふたりのように、いるだけで誰かを安心させられるような人になりたいんです」
ルーク
「すごく素敵だと思う!」
ハルジオン
「ありがとうございます!日々精進します!」
2人で盛り上がっているとディンが別部屋からとぼとぼ1人で出てきた。
ディン
「ルーくぅん」
ルーク
「あ、出てきた。お話終わった?」
ディン
「なんか途中から除け者にされ始めたから戻ってきた。酷いでしょ?ボク可哀想…。あ、ボクもそれもう一杯飲む。ハリーくんだっけ?ボクにも淹れてよ」
ハルジオン
「ハルジオンです…」
ハルジオンは困った顔をしながらもディンにもお茶を淹れてくれた。
ルーク
「ヘス(ヘスティア)は?」
ディン
「なんかずっと話してる。あ、そうだルーくん。ペンダント2人に預けて帰らない?2人ともあの人と仲良いっぽいし?同じ聖騎士だしお願いしてもいいんじゃない?」
ルーク
「え?ここまで来たのに?」
ディン
「それはそうなんだけどさぁ。今日中にこの辺に戻ってくるかもわからないし。今日の列車で帰るんだよボクたち。デュオンたちも心配しちゃうんじゃないかな!」
ハルジオン
「ま…待ってください!」
ディン
「なに?」
ディンがハルジオンに低い声で聞き返した。
ハルジオン
「うぅ…(ディンさん怖い…)あの…ルークさん出来れば直接プロジオン様に渡してあげてほしいです…!」
ディン
「何急に」
ディンがハルジオンを睨みつけた。
冷たい表情にハルジオンが少し怯んでしまう。
ハルジオン
「……お願いします…きっとお昼過ぎには戻ってくると思います…ジーク様もそうおっしゃっていましたし…」
ルーク
「……ギリギリまで待っちゃだめ?」
ディン
「ちょ、ねぇ可愛く言わないで」
ルーク
「だめ…?ディン…」
ディン
「うぅ…だめです」
ルーク
「……わかった…ごめんねハルジオン…」
ハルジオン
「ルークさぁん…」
ディンがルークを見ないようにそっぽを向いていたが、悲しそうな声に耐えきれなくなったのか…
ディン
「わかった!わかったよルーくん!じゃあお昼過ぎに帰ってこなかったら帰るからね!わかった?」
ルーク
「ほんと?わーい!やったねハルジオン!」
ディン
「くそ可愛いな」
ハルジオン
「ありがとうございます!ディンさん!」
ディン
「はいはい。(ヘスティア姉さんもなんか興味津々になっちゃってるっぽいし、もう少しだけここにいよう。遅すぎるとロアたちが入ってきちゃいそうだし)」
✴︎
一方、その頃の図書館サイド。
ロア
「小さめの図書館だね」
ソフィア
「植物学…植物学…」
ルシファー
「ソフィ、これは?レブラ地方の植物の本」
ソフィア
「ありがとう」
ロア
「なんか思ったより分厚いね」
ソフィア
「うん…前は雨が降ってたことあったって言ってたからその時になってた植物もあるのかも…」
ソフィアがパラパラとページを捲って流し見をしていく。
ロア
「(あれで読めてるのすごい…)」
ソフィア
「……。(花精がいた森の植物の記録はない…)」
ルシファー
「ラウルも来ればよかったのに〜」
ロア
「ラウルくんは普段何読んでるの?よく3人で図書館行ってるよね」
ルシファー
「よく恋のお話の本読んでるよね」
ロア
「うそ!?なんで!?あ、やっぱりソフィア姉さんと…恋を…!」
ロアが目を輝かせて反応するが…
ソフィア
「ないない。なんか追体験できる!とかなんかよく言ってる。作り話の本が気に入ってるみたい」
ソフィアが植物学の本を見ながらロアに返事をした。
ルシファー
「神族の人って本は記録用にしか書かないんだって。だから物語がすごく面白いって言ってた」
ロア
「でも、恋愛のお話選んでるあたりやっぱりソフィア姉さんと結婚したいんだよ!」
ソフィア
「結婚はしないってば」
ロア
「でもでも結婚したほうがいいよ!結婚して!ラウルくんと!」
ソフィア
「しょっちゅう結婚させようとしてくるのやめて」
ロア
「うぅ…!こんなに口説いてるのに…!」
ルシファー
「ロアが言っても意味ないよ…」
ロア
「あんなに仲良いのに!」
ソフィア
「ラウルとはそういうのじゃないってば。この話何回目」
ロア
「50回はしてる…」
ソフィア
「ロアも何か読んだら?せっかく王都の図書館来たんだし」
ロア
「文字ばかりの本つまらないよ〜」
ルシファー
「絵本読んでみたら?」
ロア
「絵本って子供向けじゃん」
ルシファー
「大人が読んでもいいんだよ」
ロア
「それはそうだけど…」
ロアはいくつか並んでいる絵本を眺めた。
その中で1冊の絵本を手に取った。
『もうもくひめとおひさま』
ロア
「もうもく…?目が見えないってことかな」
ルシファー
「どんな絵本?」
ロア
「…ん〜と…。あ、実話…?実話を元にした絵本なんだって。ちょっと読んでみたいかも」
ルシファー
「あっちで座って読もうよ!」
ロア
「ルシファーちゃんは何読むの?」
ルシファー
「わたしはね…これ!」
ロア
「歴史書…?しぶいね」
ルシファー
「結構面白いよ」
ロア
「ラウルくんが読んでそう。逆にルシファーちゃん恋愛の本読んでそうなのに」
ルシファー
「そう?ソフィアも座って読もうよ!」
ソフィア
「はぁい」
ソフィアの手には植物学の本が3冊あった。
随分と分厚いがあっという間に読んでしまうのだろう。
ロア
「よいしょ…そういえばラウルくんたち家で何してるんだろうね。メンバー的に静かそうだよね〜」
ソフィア
「会話してなさそう」
ルシファー
「みんなでお散歩行ってるかも!」
ロア
「それはそれで可愛い」
ソフィア
「どこにも出かけなさそうじゃない?アスベルとゼナが一緒だし」
ロア
「確かに」
お留守番組は今頃何をしているのだろうか…。
と少し頭に思い浮かべて本を読み始めた。
✴︎✴︎✴︎
【小話】
ソフィア、ラウル、ルシファーは本好き仲間です。
前にデュオンの両親が人間界に来た時も、3人で少し距離のある町の図書館に行っていました。
帰りにシオンとグレイスを見かけたみたいです。
ソフィアは主に植物学の本。
ラウルは作り話の本。(恋愛系が多い)
ルシファーは歴史の本を好んでいます。
『アルスダリアの祈り』第31話を読んでいただきましてありがとうございます。




