第30話 デューレブラッドの内側
トンネルをだいぶ歩いた後、ルークが立ち止まった。
ルークが鼻をひくつかせた。
ディン
「ルーくん?どったの?」
ルーク
「水の匂いがする」
ヘスティア
「水?」
3人で並んでトンネルを抜けた。
そこには…
ディン
「まぶし…」
ルーク
「わぁ…」
ヘスティア
「……水路…ですか」
トンネルを抜けるとそこには水路が広がる美しい景観が広がっていた。
城が少し高い位置あり、そこから水が流れているようだ。
ルーク
「観光に向いてないって言ってなかった?」
ヘスティア
「言ってましたね。花も咲いている…。ディン、魔法解いてみてもいいですか?」
ディン
「いいよ」
ヘスティアが氷魔法を解いた。
暑さは残るが、水路のおかげで気温が下がっているようだった。
ディン
「暑いけどまぁなくても我慢できるね」
ヘスティア
「そうですね。いい場所じゃないですか」
ルーク
「なんかすごい叩いてる音がする」
ディン
「何か作ってるのかもね。鍛冶屋とかさ」
水路の周りは小さな露店のようなものが出ており、各々仕事をしているようだった。鉱物をハンマーで叩く音、水で洗う音。汗を流して、笑い合って仕事をしている人や、休憩に水を飲んでいる人もいた。
ルーク
「こんにちは!これは何をしているの?」
ディン
「ルーくんってば」
ルークは興味を持つとすぐふらっとどこかへ行く。
国民
「おやこんにちは!旅人さん?珍しいね。久しぶりに見たよ」
ディン
「(普通にフレンドリー…余所者に当たりが強いようには見えないけど…)」
ルーク
「ここの国の人はみんな知り合いなの?なんですぐわかるんだろう」
国民
「あっはっは!見た目で判断しちゃいけないけど、ほら、この国の人は日焼けしている人が多いからね。日焼けしてないと国外の人かなって思っちゃうんだよ」
ルーク
「日焼け」
ヘスティア
「染織ですか」
国民
「そうだよ。硬度が弱くて道具には出来ないけど、色が綺麗な石は砕いて染粉にするのさ」
ルーク
「へぇすごいね!綺麗…!」
ヘスティア
「……この水は?」
国民
「そこの水路の水だよ。地下水を引き上げてくださっているおかげで涼しいしありがたいよ」
ヘスティア
「なるほど…地下水ですか」
ディン
「ふぅん」
国民
「お?お嬢さん金髪なんて珍しいね。しかも2色髪だなんて。帽子で隠すなんて勿体無いなぁ。よく見るとそっちのお嬢さん(ヘスティア)もか。姉妹かい?」
ヘスティア
「弟です」
ディン
「誰がお嬢さんだ。眩しいんだよ帽子ないと」
国民
「いやぁお妃様を思い出すなぁ。素敵な金髪のお方で」
ルーク
「おきさきさま?」
ヘスティア
「プロジオン王子のお母様」
国民
「プロジオン様を知っているのかい?」
ディン
「グレンロックで会ったんだよ。ボクのこと母親と勘違いして話しかけてきたんだ」
国民
「グレンロックまで行ったのか…何もないだろうに…。プロジオン様が幼い頃に行方不明になられたから金髪がお妃様に見えたんだろうよ」
ルーク
「そのプロジオンに会いたいんだけど、お城に行けばいいのかな?」
国民
「プロジオン様なら、お城近くの聖騎士様の詰所にいらっしゃることが多いよ。王子なのに聖騎士様なんだ」
ディン
「それで護衛がいなかったのか」
ヘスティア
「まぁ良かったですね。詰所にまずは行ってみましょう」
ルーク
「うん!ありがとうおじさん!」
国民
「あいよー!会えるといいな!」
✴︎
ルークたちは城の近くにあるという聖騎士の宿場に向かっていた。
ルーク
「いい人だったね」
ヘスティア
「……そうですね」
ディン
「変に突っかかってくる奴もいないし、動きやすくていいけどさ。逆に不気味だよねぇ」
3人は商業区域で仕事をしている人たちを遠目に見ながらも移動を続けた。
ディン
「あ、ルーくんあそこじゃない?銀鋼鎧着てる人いる」
ディンが指をさした方向には鎧を着た集団がいた。
あの赤髪の王子はいるだろうか。
ルーク
「こんにちは」
聖騎士
「?おや旅人さんか?珍しいなここまで入ってくるなんて」
ディン
「プロジオンって人どこにいるか知らない?」
聖騎士
「おぉ!金髪の君!美しいね!あ、もしかして候補生かい?」
ディン
「なんでそうなる…」
聖騎士
「いや失礼!腰に剣を刺しているからもしかしたらと。大歓迎だ!金髪で縁起もいい!」
ディン
「違うわ」
ヘスティア
「プロジオン王子はどちらにいるのでしょうか。謁見したくここまで来たのですが」
聖騎士
「やぁ綺麗なお嬢さん。プロジオン様は今日はお見かけしていないが…あのお方はいろんなところに行っているからどこかでお会いしたのかな?」
ヘスティア
「そんなところです」
ルーク
「落とし物を届けに来たんだ。できれば直接渡したくて…」
ルークがそっとポケットから橙色の石がついたペンダントを取り出した。
聖騎士
「プロジオン様がこれを?……随分と年季が入っているように見えるな…」
???
「なんの騒ぎだ?」
聖騎士
「あぁボス。旅人の方がプロジオン様を探しておられまして」
???
「……旅人…。っ…!それは…」
ルーク
「プロジオンが落として行ったんだ。大事なものだと思って…直接渡したくて探しにきたんだ」
ディン
「王子だけど聖騎士らしいね?ここにいたら戻ってくるかな?できれば今日中」
聖騎士
「連日空けているところは見たことがないから戻ってくると思うのだが…」
???
「ジーク様〜!待ってください〜!ガントレットをお忘れで…わぁ旅人さんですか!?久しぶりにお客様ですね!」
ディン
「子供…?」
???
「た…確かにまだ子供ですが…!これでも聖騎士見習いです…!」
ジーク(聖騎士団長)
「悪いなハルジオン。失礼。旅のお方。私はデューレブラッド聖騎士団、団長ジークと申します」
ジークと名乗る聖騎士団長。
頭には騎士帽を被り、布で顔半分が隠れている。
帽子から黒い髪が覗いていた。
ハルジオンという聖騎士見習いは小柄で年齢も若そうだ。橙色味がする金髪をしていた。
ルーク
「ぼくはルーク!こっちがディンとヘスティアだよ!」
ディン
「どうも」
ヘスティア
「どうも…」
ジーク
「………。皆、連絡が入るまで、詰所で待機しているように。少々、抜けさせてもらう。ハルジオンは私と」
聖騎士
「はっ!」
聖騎士団長が指示をすると聖騎士たちは詰所に入って行った。
ディン
「…………。」
ジーク(聖騎士団長)
「…ルーク殿、もしよければ我が家でお待ちください。昼過ぎには戻ってくるでしょうから」
ルーク
「いいの?やった!」
ハルジオン(聖騎士見習い)
「お客様ですね!ルークさん!こちらへ!」
ディン
「待った。目的は?」
ハルジオン
「え?」
ジーク
「…中で話します」
ヘスティア
「行きましょうディン。どうにでもできます」
ディン
「……うん」
✴︎
ハルジオン
「お茶お淹れしますね!」
ハルジオンはどこに何があるかわかっているらしく、手際よくお茶を淹れる準備をし始めた。
ディン
「君の家なんじゃないの?」
ジーク
「一緒に住んでおります」
ディン
「ふぅん…」
ハルジオン
「どうぞ!」
ルーク
「わぁありがとう!いい匂いする!」
ルークは良い香りに食いついた。
湯気と香りが立つお茶に瞬時に口をつけた。
ディン
「あ、ルーく…!」
ジーク
「?」
ハルジオン
「あ!熱いですよルークさん!」
ディンやハルジオンが静止させる前にルークが飲んでしまった。
ルーク
「すっごく美味しい!とうもろこしみたいな味がする!」
ハルジオン
「ルークさん!火傷!火傷は大丈夫ですか!?」
ルーク
「ん?やけど…?あ…!?…へ…平気平気!」
ハルジオン
「へ…へいき…?本当に大丈夫ですか…?」
ルーク
「平気平気…!そ…そんなに熱くなかったかも!」
ヘスティア
「(無理がありますよそれは…)」
淹れたてのお茶をすごい勢いで飲んでも火傷なしなんてありえるのだろうか…。
少し気まずい空気が流れた。
ヘスティア
「……美味しいですね。これはなんのお茶でしょうか」
ヘスティアがルークから注意を逸らすために質問した。
ハルジオン
「あ…えっと…唐黍茶と言います…!」
ヘスティア
「…いい味ですね。気に入りました」
ハルジオン
「それはよかったです!おかわりもありますので!」
ジーク
「……それで…ルーク殿」
ルーク
「はい…!?なにかな?」
ジーク
「先ほどのペンダント…拾っていただき、ありがとうございます。プロジオン様も大事にされているものでして」
ルーク
「ううん!でもよかった。ちゃんと会えそうで」
ジーク
「失礼ですが…取ってしまおうとは思わなかったのでしょうか…」
ディン
「まじで失礼だな」
ヘスティア
「ディン」
ヘスティアがディンを肘で小突いた。
ルーク
「思わないよ!金具が切れちゃうくらい大事に持ってたものだろうし…どうして?」
ジーク
「その付属している石は売れば大金になりますから…」
ルーク
「えー!そうなんだ!すごいね!」
ジーク
「なんて純粋な…あなたが優しい方でよかった」
ディン
「詳しいんだね」
ジーク
「石には詳しいんです。国柄ですよ」
ディン
「ふぅん」
ジーク
「…………。」
ヘスティア
「それで、言いたいことはなんですか?」
何か言いたげな表情を続けていたジーク。
ヘスティアがそれを突いた。
ジーク
「………。ハル、少しルーク殿とそちらの部屋に」
ハルジオン
「ジーク様…?」
ルーク
「……大事なお話かな?行こうハルジオン」
ハルジオン
「はい…」
ディン
「………。」
ディンは2人が出ていくのを目で追った。
ジーク
「………。」
ディン
「なんのつもりかな?」
ジーク
「……この国から直ちに出ていただきたい…」
ヘスティア
「……この内側で何が起きているのです?」
ジーク
「っ!?貴方は…知って…」
ヘスティア
「何も知りませんよ。ただ、門番の方が内側に入らないように必死に促そうとしてくださったので。優しい人でしたね」
ディン
「どうにかして入らないようにね。そんなにやばいことしてるの?あ、そういえば薬品って言ってたなぁ。さっきのお茶がそうだったりして?」
ディンがニヤッと笑いながらジークにそう言った。
ジーク
「ハルジオンはそんなことはしない…!」
ディン
「カマかけただけだよ。薬ならルーくんが気づくし。なに?そんなことって」
ジーク
「………。殺す…ことです…」
ヘスティア
「記憶を消す薬は嘘ですか」
ジーク
「……はい…」
ヘスティア
「なるほど…。貴方と門番の方以外は知らないのでしょうか。聖騎士の皆さんも、ハルジオンもそんな反応ではありませんでしたが」
ジーク
「私と…この国の数人…だけです…。あいつの…せ…で…」
ヘスティア
「?」
ディン
「なんて?」
ジークがだんだん口調が吃り始めた。
ヘスティア
「………。」
ヘスティアが目を凝らす仕草をする。
ヘスティア
「……口封じですか。また厄介な物をつけられていますね」
ジーク
「……っ…!わかるのか…!?」
ヘスティア
「わかる…というか。見えてますよ。それ」
ヘスティアがジークの首元を指をさした。
空気がシンとした。
ジークからは見えないが、鎖のようなものが首に巻き付いているらしい。
ジーク
「貴方は…一体…」
✴︎✴︎✴︎
【ワード集】
ロスター(無所属)
どこの国にも所属していない人や、ロスト地方で
生活を送っている人のことをそう呼びます。
手の甲に所属国の国紋が特殊な技術で刻まれており
門番(国政師)はそれを確認することができます。
『アルスダリアの祈り』第30話を最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
ジークさんは一体何を知っているんでしょうねぇ。
ハルジオンくんは可愛いです。




