第百四十七話
「ああ、そっか―――魂喰らい狩りをしてもその被害者は秘密の為に記憶を消されるからお礼も言えないんだっけか―――なんていうかお金も出ないのに慈善事業やボランティア活動よりも命がけよね」
千明がそう言って、畳んだお弁当を時雨に返す。
「早いとこ赤い雨の事件を解決しなきゃね」
「そうだね。でも事件が解決したらみんなとも天文部も解散と思うと少し寂しいけどね」
時雨がカバンに二つの弁当箱を入れて、そう寂しそうに話す。
「そんなことの為だけに入部したわけじゃないわよ。少なくとも私はね」
「え? そうなの? ってきり強制で入部させて悪いかなとは思ってたけど―――」
「魂喰らいとの成り行きでサークルに入部したけど、こういうサークル活動ってのも事件が終わったらしてみようとは思ってわね」
千明の意外な言葉に時雨が少しだけ嬉しそうに黙る。
二人のどこか心地よい無言の間に―――。
「私ね。天文部で普通の部活動もやってみたいとは思ってるんだ。星を望遠鏡で眺めたり、写真を取ったりしてね。いつもは空いた時間にメンバーで普通の部活動してるんだけど、控えめでね」
「確かに天文部の活動もしなきゃ部としてサークル自治委員会が廃部にするだろうしね」
千明が厳格そうなイメージの北沢のメガネ姿の顔を浮かべる。
「サークル活動って、友達作りや社会性を付けるために必要だよね?」
「そんな堅苦しく考えすぎよ。高校の部活と一緒でいいんじゃない?」
千明がそう答えると―――。
時雨が憂い顔になる。
「時雨? どうしたの?」
「私―――高校まで友達の付き合いがよくわからないんだ」
「へっ? こうして普通に話してるけど友達いないって感じには見えないわよ? 現に大学でも佳代子や金辺がいるしさ。後輩なら素子がいるでしょ? それにドレッドと真城も男友達としているじゃない?」
「そうだけど、あんまり高校の頃までの記憶がぼんやりしてて思い出せないんだ。友達の顔も浮かばないし卒業式もうろ覚えなの」
時雨の言葉に千明が考え込む。
「それって大型の魂喰らいって奴に襲われて記憶が消されたんじゃないの?」
千明が心配そうに尋ねる。
「ううん、確かに大学一年の頃には大型の魂喰らいと何度か戦ったけど逃げられたことが多いけど無気力病にはならなかったな」
「まだ人数少ない時期でよく無事で済んだもんね。そっちのが驚きよ」
「それはそれとして―――サークルの部長として天文部も活動として真面目に活動したいんだ」
時雨が顔を向けて、真剣な面持ちで話す。
「去年の学園祭とかで出し物とかしてたの?」
「ドレッド君が星座のこととか調べてそれを壁に貼ってるくらいで後は喫茶店してたくらいかな」
「そりゃあちと寂しいわね」
「そうでしょ? だから部費で望遠鏡もあることだし、星座の写真とかプラネタリウムを出展・上映を今度の学園祭でやりたいんだ」
「へー、いいじゃない。暇な時にメンバー集めてやろうよ。なんか青春の一ページみたいで楽しそうだしね」
「うん♪ レンズ式の恒星投影機とアマチュア最大級の直径約12メートルのエアドームを大学で借りれる申請出せるから学園祭に各種投影機や流すソフトとかでプラネタリウム出来るから楽しみだよ♪」
時雨がニコリと優しい元気な笑顔を見せる。
その時に彼女の頭上に13の球体の王冠の紋章の魔法陣が浮かび上がる。
そして13の球体の1つが輝いた。
「あれ?」
「時雨、どうしたの?」
「今なんだかレガシーウエポンが強くなったような気がしたんだけど、どうしてだろう。千明ちゃんも解る?」」
「い、いやどうだろう? 気のせいかもね。日頃の瞑想や訓練がここに来て強化されたんじゃないの?」
千明が慌てて、その場で嘘をつく。
(13の球体の王冠の紋章の魔法陣による絆の力がバレたらその効力がなくなるから言えないわね。しかし時雨もその辺は敏感ね)
千明が冷や汗をかいて、机に置かれている気温と日付も表示されたデジタル時計を見る。
「時雨。楽しくなってきたところ申し訳ないけど―――そろそろ瞑想しない? バスの最終便は八時だよ? 瞑想してもギリギリの時間だし、守衛さんにも鍵渡さないいけない時間もあるでしょ?」
「あ、そうだね。それじゃあそろそろ瞑想して、守衛さんに鍵渡して、家に帰らないとね」
時雨が納得したのか、千明をジッと見る。
(こうして時雨とも話していかなきゃね。特訓で身体能力も鍛えないといけないし―――)
「じゃあ、千明ちゃん。前に説明した通りに自分の持つレガシーウエポンをイメージして目を瞑ってね」
時雨に言われるままに千明が無言で目を瞑り―――。
暗くなった夜空よりも目を閉じた暗い世界で武器をイメージしていく―――。
千明は頭の中で思い浮かべる。
自分のレガシーウエポンとなる武器―――魂喰らい狩りの事件を追うことに繋がる手掛かりで探しの一つでもある槍。
黄金のような槍のエルドラドランスという黄金郷の槍を武器としてイメージする。




