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THE TRICK TRAP HUNTERS  作者: 水原翔(みずはら・しょう)
TRICK5 「Suspect」
19/23

TRICK 5-5

 藍沢からの電話の後。

 車は進路を変え、藍沢の家の方面に。

 場所は、藍沢が位置情報を送信してくれた。

 二ノ宮はその目的地を車のAIに伝える。

 モニターには目的地までのルートと、最短距離が表示された。

「間に合えばいいが」

 二ノ宮はそうつぶやきながら、アクセルを踏み、車を加速させる。

 モーターの回転数が上がる。加速による衝撃を感じるほど、急加速をしていく。 さすが電気だけあって、モーターが無理するような感じがしない。ミヤビはガソリン車のバイクに乗っていた経験があるから、それに比べて加速感が段違いに違うことに驚いていた。

「やっぱり、早いですよねこの車・・・」

「まあな。減速時にも充電できるし、アクセルを話しただけでも回生ブレーキがかかるから、エネルギーのロスが少ない・・・まあ、今はこんな事を話している場合ではないがな」

 次々と先頭車を軽やかに追い抜く。首都高速はあまり直線的な道は少なく、アップダウンが激しいから、上下左右に体がとられる。ミヤビはとっさに左手で天井にあるつかみをつかんだ。

 この感じなら、間に合うはず。そう思った矢先だった。

 テールランプの列が、目の前いっぱいに広がっていた。

 車は急減速し、停止する。

 ナビゲーションにはこの先で事故が発生し、そのせいで渋滞していると情報が流れた。

「くっそ!!こんな時に」

 車の流れが止まってしまった。

 これじゃ、藍沢の家にたどり着けない。

 ミヤビはとっさに判断し、シートベルトをはずした。

「二ノ宮さん、俺、先に行きます」

 助手席のドアをあけ、二ノ宮に話しかける。

「・・・わかった。気をつけていけ」

 扉を閉じ、路側帯を走る。

 幸い、100m先に非常階段を視認したため、ミヤビはそこから駆け下りる。

「カエン、藍沢のところまでどれくらいだ?」

 ミヤビはハンターフォンの中のカエンに質問する。

《あと3kmってとこだな》

「わかった。タクシーを捕まえよう」

《いや、タクシーでも難しいだろ。この渋滞の影響で、下道も大渋滞してる》

「マジかよ・・・バイクでもあれば」

《そんなこと言うと思ってよ、つれてきてるぜ》

「は? どう言うことだ」

《喜べミヤビ。さっきお嬢に電話した瞬間、俺がバイクをここまで持ってきたぜ》

 非常階段を駆け下りた先には、ミヤビのバイクがエンジンかかった状態で、おいてあった。双眼のヘッドライトが光り、すぐに乗れる状態となっていた。

「そんなことが出来るのか、お前」

《まあな。てかこれ、自動運転機能ついてるからな。ブレイクアバターが操縦できる機能もあるし》

「初耳だな・・・まあいい、いくぞ!!」

 ミヤビはバイクにまたがり、ヘルメットをかぶる。

 ギアを1速に入れ。後方確認をし、アクセルを入れ加速を始めた。

 大渋滞の中を、駆け抜ける。

 バイクでしか出来ないやり方だ。

《この感じだと、あと5分ってとこだな》 

「十分だ。急ぐぞ」

《ああ!!》

 カエンのナビに従い、ミヤビは住宅街を駆け抜ける。

 しばらくすると、モスキート音が鳴り始めた。最初は小さな音だったが、次第に音が大きくなっていく。

 近い。

 ガーディアンが、ミヤビを認知し始めているということなのだろうか。

 瞬間、何か空気が変わった。

 あたりにいた人は消え、ミヤビとミヤビのバイクだけが道に残った。

 ただ一つの家以外、電気が消えた。

 品川駅と、茨城の研究所襲撃と、同様の感覚だ。

 間違いない。二ノ宮の言う通りにするならば、ここは完全に、ガーディアンに認知されている空間ということになる。

 ミヤビはハンターフォンを取り出した。五芒星のアイコンをタップする。

[BREAK OUT SYSTEM Ver.α]

[Loading…]

[使用者生体認証システム作動]

[認証完了。ユーザー名『ミズナシ・ミヤビ』、登録済みユーザーです。BREAK AVATOR -Flame Blade-,の設定ユーザー一致を確認。アバターデータをサーバーより読み込み中です。]

[読み込みが完了しました。ハンターセレクト画面を起動します]

《Select of Hunter!!》

テンションの高い機械音声とともに、表示されるアイコンをタップする。

《Flame Blade READY?》

「ブレイクアウト」

ミヤビはハンターフォンを高く上げ、呟き、床にたたきつけた。

《OK! Break Out!! 》

 ハンターフォンは粉々に砕け散り、人形の形を形成する。

《Flame Blade Version1 燃エル・ココロ・叫ブ・アッツイターマーシィ!!》

 ノリのよい音楽とともに召還される人型。

 燃えるような赤い髪。黒いマント。

「いくぞ!!」

《ああ!!》

 ミヤビはカエンとともに、家の中に入った。

「・・・藍沢は?」

《恐らく上だな。気配がする》

「わかった!」

 ミヤビとカエンは階段を駆け上がり、カエンの察知した気配を元に、探し出す。

 すぐに見つかったので、そのまま部屋に入る。

 そこには、ガーディアンに首をつかまれ、苦しんでいる藍沢美月の姿があった。ガーディアンがつかむ首を、力一杯はがそうとする抵抗を続けている。

 まだ、意識はあるようだ。

「カエン!!」

《言われなくとも!!火炎斬ッ!!》

 藍沢の首をつかむガーディアンの右腕を切り落とす。

 ガーディアンはその瞬間後ずさりし、距離を取り始めた。藍沢はそのまま床に倒れ、横たわる。

「大丈夫か!?」

「え、ええ。なんとか」

 咳をし、息が上がっているが、意識はあるようだ。

 火炎はそのままガーディアンとの戦闘に入ったため、ミヤビは藍沢に肩を貸し、部屋から離れた。

「・・・ごめんなさい。あなたには助けてもらってばかりね」

 藍沢が口にしたのは、そういった謝罪の言葉だった。

「気にしないでくれ。とりあえず無事でよかった」

「ええ」

 ガーディアンの叫び声が聞こえる。どうやら無事に倒せたようだ。この短時間で倒せたという事は、Version1のガーディアンで、あまり強くない・・・弱いガーディアンだったという事なのだろう。

 近くにあるPCの画面が赤い画面ではなくなっているから、ガーディアンとの戦闘が完全になくなっていることお意味している。

 火炎をハンターフォンに戻し、藍沢を抱え、ベッドに寝かせる。

「苦しくないか?」

「ええ。大丈夫。ちょっとびっくりして動けないだけ。病院に行くほどではないわ」

「よかった」

 沈黙の時間が流れる。ミヤビは何があったか聞こうとも思ったが、一瞬考えてやめておいた。

「家の人は?」

「使用人は時間外だから帰ったわ。お父様はお仕事」

「そうか」

 母のことを言わなかったのは、聞かない方がよいだろう。ミヤビはそのまま座り、ハンターフォンで二ノ宮に電話した。二ノ宮はそうかと一言言い、渋滞でまだ2時間ほど動けそうにないとの事。ミヤビはバイクで帰るから問題ないことを伝え、二ノ宮にはそのまま事務所に戻ってもらうことにした。

「もう、大丈夫なのよね」

 藍沢の声が震えているのを感じた。

 これまで藍沢がガーディアンに襲われた時は、そんな声を出さなかったのに。学校でも凛としていて、怖いものなどないような雰囲気を出していたのに。

 ミヤビはそれが以外で、少し驚いていた。本当に不安だったのだろう。さっきの電話からずっと首をつかまれていて、本当に殺されるかもしれなかったからだ。

 ガーディアンは倒した。赤い画面も現れていない。モスキート音も消えた。だから問題ないだろう。ミヤビはそう説明して、藍沢を納得させる。

「よかった」

 と藍沢は安堵する。

「何も、聞かないのね」

 暫くの沈黙の後、藍沢が話し始める。

「聞いてほしいのか?」

「……聞いて欲しい。ええ、そうなのかも、たぶん私一人じゃ出来ないことだろうし。これ、見て」

 そう言って藍沢がミヤビに見せたのは、ガーディアンSimだった。

「これ、何処で」

「もらったの、霜村静文に」

「え、いつ?」

「今日。これを調べろって一方的に話して。その後もう一度会ったけど、知らない素振りだったから余計にわけが分からなくて」

 ミヤビは一瞬考えて、状況を整理すべきだと判断した。

 まず、藍沢に現状を伝えなければ。

「その、霜村静文だが、現在入院している」

「え、え?どういう事」

「俺が知りたい。なにか良くないことが起きている。藍沢、少し整理したい。このガーディアンSimをもらった経緯を、時系列で話してくれないか」


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