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THE TRICK TRAP HUNTERS  作者: 水原翔(みずはら・しょう)
TRICK5 「Suspect」
16/23

TRICK 5-2

「今日はどうしようか」

 水無ミヤビにとって、初めて、何もない放課後。転校してからこれまで、色々な事件がありすぎたため、東京に来て次の行動を考える事は、ひょっとしたら初めてかもしれない。

 なんとなく、渋谷に来てみた。

 若者の街。よく聞くハチ公前に出ると、人の多さに驚く。

 たまには、こういう日も悪くない。

《藍沢、呼ばなくてよかったのか?》

 ハンターフォン。

 静華灯火学園の専用スマートフォン。藍沢エレクトロニクス社製の端末から、未だ実態がよく分かっていないブレイクアバター、火炎流星丸の声が聞こえる。

 ミヤビは久々に晴れた空を見上げ、言う。

「今日は一人の気分だ。それに、彼女も彼女のプライベートがあるだろ」

《おう、そうか》

 最初は火炎の声も煩いし、四六時中相手していると疲れていたが、最近はそんなこともなく、彼の軽口を流す術を身に着けたお陰で、苦を感じない。むしろ、なんだか変な気分だ。

 常に喋り相手が居て、ちょっとした会話をして。

 まるでその端末の中に、一人の人間がいるようで。

 未だに、中に人が居て、その人と話しているのでは。と思ってしまう。

 藍沢は、今日は何か忙しそうだったから、別に声をかける必要はないと思った。

《けど、暇ではあるが、暇ではないよな?》

 ――火炎の言うとおりである。

 特に緊急性が高いわけではないが、しなくてはならないことがある。

 親父を殺した、あの白いガーディアンの正体を探ること。

 ガーディアンを召喚するガーディナイザーに、ガーディアンsimを渡すブローカーの捜索。

 だけれど、何から手を付けてよいのか、よくわからないのが現状だ。

 もどかしいし、悔しい。

「ああ。何か手がかりを探さないと」

 スクランブル交差点の信号待ちをしている最中に、目の前のビルにある巨大スクリーンから、ニュースが流れていた。

 また、事件だ――。

《またか……》

 “藍沢エレクトロニクス社製造工場に勤務の従業員、不審死”と、大きくテロップが出て、知らないコメンテーターがああだこうだと言っている。

「藍沢……エレクトロニクス」

 日本人口の半数が藍沢エレクトロニクス社製の端末を使用していると言っても過言ではない。

 しかも、その会社は藍沢グループの子会社となっている。

 あの後、いろいろ調べたが、藍沢はかなりの勢力を持つ、コングロマリットだ。

 その名前がニュースとして出るだけで、かなりの影響があるはずだ。

 マスコミも面白がって、ワイドショーで取り上げている。

 テレビはあまり、好きじゃない。

《キナ臭えなあ》

「ああ。でもまだ、何も起きていない」

《これから起きるかもしれないぜ?》

 ため息をつきつつ、火炎にミヤビは言う。

「……起きないことがいいけど、そういうわけにもいかないよな」

 渋谷に来たのは、ただふらっと来たのもあるが、目的は情報収集だ。

 色んな人が集まる場所で、会話を聞く。

 何でもない噂話が、手がかりになる気がする。


 ――手がかりになるものは、あったかどうかわからない。

 人の声に焦点を当てるというのは、案外疲れるし、他人の会話を盗み聞きしてあんまり良い気がしない。けれど、“神隠し”だとか、赤い画面がとか、気になる話はあった。キーワードぐらいしか聞こえなかったから、確証は掴めていないが。

 だが、手がかりにつながるような話はなかった。

 白いガーディアンは、あれ以来現れていないのだろうか。

 何か、白いガーディアンに関する情報が、つかめれば良いのだが。

「……帰るか」

 ミヤビは、渋谷駅のハチ公前まで歩き、電車に乗ろうと、電子マネーが入っているハンターフォンを取り出した瞬間、人の流れが止まっていることに気付いた。

「なにか、あったのか?」

《あちゃあ。人身事故だとよ。》

 駅員が、乗降客に向けて呼びかけている。どうやら乗る予定だった路線が、人身事故で止まっているらしい。

 暫く待てば復旧するだろうが、列は進みそうにない。

 探偵事務所のある駅はその路線でしか行く方法を知らないが、さて、どうしようか。

《RRRRRRRR・・・!!》

 ハンターフォンが鳴る。ミヤビは相手先を確認する。

 二ノ宮からだ。

「もしもし」

『水無か? 今大丈夫か?』

「はい。」

『静文が倒れた。病院まで向かうが、お前も来てくれないか?』

「えっ、わかりました。けど実は」

 ミヤビは、渋谷駅から人身事故で動けないことを伝えた。

『分かった。であれば俺が迎えに行こう。待機して欲しい位置情報を後ほど送信する。そこで待っていくれ』

 電話は切れ、すぐにメッセージに位置情報が反映された。

 おそらく、渋谷駅前は交通量が多く、車を停車させる余裕がないからだろう。

 ミヤビはその指定されたポイントまで歩くことにした。

《しかし、あいつ強そうなのにな。倒れたって》

「ああ。何か、良くないことが起きている気がする」

 暫く待つと、二ノ宮の車がミヤビの前に。

 ミヤビは助手席の扉を開け、会釈する。

「あれ、黒崎さんは?」

 助手の黒崎が何故居ないのか、ミヤビは二ノ宮に尋ねる。

「あいつは今日用事で居なくてな。まあ、乗ってくれ」

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