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THE TRICK TRAP HUNTERS  作者: 水原翔(みずはら・しょう)
TRICK5 「Suspect」
14/23

TRICK 5-0

藍沢美月は、家に入ると息をつく。

「お帰りなさいませ。お嬢様」

 使用人がお辞儀をする。

「ええ。ただいま……。お父様は?」

「まだ、戻られていませんが」

「そう。わかったわ」

 ……この家は、自分には広すぎる。

 なにせほとんど、自分一人で住んでいるのと同然なくらい、一人でいる時間が長いからである。

 玄関を入ると中世を意識した広い空間に、シャンデリア。

 大理石で造られた床。

 自分の靴の音が、家の中に響き渡る。

 その音が、なんだか空しく感じるのだ。

「どうされますか?」

「……しばらく部屋にいるわ。夕食になったら声をかけて」

「かしこまりました」

 藍沢はエントランスの階段をゆっくり上り、自分の部屋に入る。

 ハンガーコートにブレザーをかけ、ネクタイを外す。

 息をつき、自分の机に座る。

 ハンターフォンをグレードルに置き、カバンから数学の宿題を取り出す。

 1時間くらいで宿題を終わらせ、背伸びをする。

 そして、考えることを先延ばしにしていた、カバンの中の小包を手に取り、机の上に置いた。

「捨てようか、返そうか迷っていたけれど……」

 そう言いながら、藍沢美月は小包の包装を開いた。

 開いた小包の中には、異様な気配を放つ、一枚のSimカードが入っていた。

 ——ガーディアンSIM。

 何故、これを私に見せたのだろうかと、慎重に確かめる。

 これを、スマートフォンに挿せば、怪物が生まれる。

 自分のスマートフォンが、怪物に変化してしまうのだ。

 そんな危険なものを、なぜあの男は私に託したのだろう。

 考えながら、藍沢は気になる印を目にした。

「これって……」

 間違いない。

 藍沢エレクトロニクス社のロゴだ。

 藍沢は飽きるほどこのロゴを見ているから、見間違えるはずなんてない。

 考えたくもないことが起きている。

 この事件に、少なくとも、”藍沢“が何か絡んでいる。

 海賊品であったとしても。藍沢の名を使うからには、何かあるに違いない。

 そのロゴを見た瞬間、藍沢美月は初めてあの男に渡された意味を理解した。

 これを、私に調べろというのか。

 身内を疑えというのか。

 少し、藍沢は考えて、simカードを包装材で包みなおし、カバンの中にしまった。

 霜村静文。彼は一体、何を考えているのだろうかと。


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