キンダンノミチヘトツヅクミチ
朝、何度も聴いた耳障りな目覚まし時計により寝むりから覚めた。
昨日私はどれだけ泣いただろう。そう考えたとき電話が来た。
私はあのあと、事件現場に向かった。
もう警察による捜査が終わっており静かに闇が襲ってくる。私が彼女が死んだ場所で立ち止まっていると暗い闇には眩しすぎる光が迫ってきた。それが車のライトだと気付くときにすぐそこで止まった。
彼女を、優子を踏み潰したトラックの運転手だった。確かあのあとすぐさま逃げて今も捜索中だったはずだ。
「君は、、、あ、あのときここにいた…」
「大丈夫ですよ。あなたが踏み潰したことは誰にも言ってませんよ。ところで…ここに何か用でも?」
「え、まぁね」
顔からもういい歳のおっさんの顔が震えていた。
「君は彼女の友達かい?」
「だめですか?」
二人ともなぜか涙目になっていた。
「そうか。すまなかった。」
彼はそう言い土下座をした。不覚にもハゲを見つけてしまった。
「俺が、、、俺がここに来なきゃこんなことには」
「どういうことですか?」
「実は俺には600万の借金があって…妻と子どもが二人いるんだ。それであの日ついに会社をリストラされて…どうしていいか訳わかんなくて。それでもう死にたいとしか思わなくなって。そしてここから飛び降りようと思ったんだ。そうしてここに来たら、、、。」
「トラックでここに?」
「ああ。トラックで輸送とかしてたからね。ときどきここを通るんだよ。ここはいい近道だからね。仕事場の人はみんなこの場所を知ってるよ。」
「…なぜ逃げているんですか?あれは事故じゃないですか」
泣きながら彼は口を開いた。
「残された妻と子供のことを考えたら怖くなって。自分の家族が人殺して自殺したなんて知ったら生きた心地しないだろう?まあ。理由はどうにせよ俺が殺したんだ。やはりこの命をかけて罪を償うよ。決めたんだ。」
そういうと彼は走って優子が飛び降りたビルの屋上に向かった。
私は後を追いかけた。
「グワァァァァァァァ!!!」
叫び声が聞こえた。急いで彼に近づくと腹にナイフが刺さってた。
「ダメです!!死んじゃダメです!!生きて罪を償ってください!!私は許します!きっと彼女も許しますから!!けど…死ぬことは絶対に許しません!!自分の家族が大事なんでしょう?じゃあ生きろよ!!!死んだって罪は償えないんだよ!!お願いだから!待ってて救急車すぐに呼んであげますから!!絶対に生きて償わせるから!!自分勝手に逃げて…家族のために逃げて…自分の犯した罪から逃げて…ザケンナよ!!!!!」
私は泣きじゃなくりながら叫んだ。
彼は優しく微笑み
「ははっ。かなわ…ないね。絶対に…生きて…罪を…償う…よ。」
なんとか一命を取り留めたらしい。そして全てを話したようだ。
受話器を置いてほっとため息をついた。
昨日の事について疑問が残る。
まずナイフについて。指紋は彼のもので自分から刺したらしいがおかしい。
だったらわざわざビルの中に入る必要も無い。見られてはいけないことが何かあったのか?それとも誰かが?いや考えにくい。彼が倒れていたのは一階の階段前。階段は入り口のすぐそこにあったので誰かが逃げるとこなどなかったはずだ。
それに彼はなぜ昨日来たのか。彼は逃げていたはずだ。なのにわざわざまだ警察がいるかも知れない現場に来たのか。自殺するためなら他にも沢山あるはずだ。
考えるだけで頭が痛い。こういう時は優志に相談しよう。そう思ったとき電話が来た。優志からだった。
「もしもし」
「もしもし琴音ちゃん?今日も家に来てくれないか?伝えたいことがあるんだ」
「えっ?」
妙な胸騒ぎがした。




